公開 2026年9月9日
退職する日を、1日変えるだけで受け取れる額が変わることがあります。
公務員のボーナスにあたる期末手当と勤勉手当は、「基準日」に籍があるかどうかで支給が決まるからです。
基準日は年に2回、6月1日と12月1日です。
この日に在職していなければ、原則としてその回の支給はありません。
ただし「基準日の前1か月以内に辞めた人」を救う例外もあります。
※本サイトでいう「公務員」には、独立行政法人・国立大学法人・日本銀行・日本年金機構等の職員(いわゆる準公務員)も含みます。
副業・兼業規定が国家公務員法・地方公務員法に準拠、または類似している職種を主な対象としています。
この記事では、期末手当と勤勉手当の支給条件を、一般職の職員の給与に関する法律(以下「給与法」)の条文で確かめます。
国家公務員と地方公務員とで、根拠になる法律が違う点にも触れます。
退職・異動を予定している人はもちろん、これから採用される人にも関係する話です。
⚠️ 先にお断りしておきます
この記事が条文で確かめているのは、主に国家公務員の制度です。
地方公務員には、この基準日ルールを直接保証する法律がありません。
多くの自治体が国と同じ内容を条例に置いていますが、それは慣習であって保証ではありません。
退職や異動を考えているときは、必ず自分の所属先の給与条例と人事担当に確認してください。
この記事の結論
📌 結論を先に
- 期末手当も勤勉手当も、基準日(6月1日・12月1日)に在職している人に払われる(給与法19条の4・19条の7)
- 基準日の前1か月以内に退職・死亡した人にも、同じ扱いで払われる(例外規定)
- それより前に辞めると、その回の支給は原則ゼロ
- 在職期間の長さでも金額の割合が変わる。就職・異動したばかりの人は満額にならないことがある
- 地方公務員にこの基準日ルールを保証する法律は無い。各自治体の給与条例しだいで残る
そもそも、期末手当と勤勉手当は別物です
「ボーナス」とひとくくりに呼ばれますが、公務員の場合は期末手当と勤勉手当という、性格の違う2つの手当を合わせたものです。
期末手当は、在職期間の長さに応じて決まります。
勤勉手当は、直近の人事評価と勤務の状況に応じて決まります。
査定の要素が入るのは、勤勉手当のほうだけです。
| 期末手当 | 勤勉手当 | |
|---|---|---|
| 何で決まるか | 在職期間の長さ | 人事評価・勤務状況 |
| 条文 | 給与法19条の4 | 給与法19条の7 |
| 対象になる基準日 | 6月1日・12月1日 | 6月1日・12月1日(同じ) |
支給の条件は「基準日に在職していること」
条文の書き方は、はっきりしています。
期末手当は「6月1日及び12月1日にそれぞれ在職する職員」に払う、と書かれています(給与法19条の4第1項)。
勤勉手当も同じ書き方です(19条の7第1項)。
つまり、基準日にその職場にいなければ、原則としてその回のボーナスから外れます。
3月31日に定年退職した人が、6月1日の期末手当を受け取れないのはこのためです。
例外:基準日の前1か月以内に辞めた人
ただし、条文には続きがあります。
「これらの基準日前一箇月以内に退職し、又は死亡した職員」にも、同じように払う、と書かれています(19条の4第1項後段・19条の7第1項後段)。
基準日そのものに在職していなくても、その1か月前までの間に辞めていれば、支給の対象になります。
| 退職・異動のタイミング | 期末手当・勤勉手当 |
|---|---|
| 基準日(6/1・12/1)に在職している | 出る |
| 基準日の前1か月以内に退職・死亡した | 出る(例外規定) |
| それより前に退職した | 原則出ない |
退職日を決めるときは、基準日をまたぐかどうかだけでなく、「基準日から1か月以内に収まっているか」まで見ておくと、損をしにくくなります。
目安としては、5月中や11月中に辞めれば当てはまることが多いです。
ただし正確な境界の日は年によって数え方が変わるため、最終的には人事担当に確かめてください。
なお、この例外にも除外があります。
「人事院規則で定める職員」は、対象から外れると条文に書かれています。
具体的にどの職員が当たるかは人事院規則の側に定めがあり、この条文だけでは特定できません。
退職を検討するときは、この点も窓口で確認する必要があります。
具体例で確かめてみる
条文だけだと分かりにくいので、2つの例で確かめてみます。
Aさんの場合:3月末で退職
Aさんは、3月31日付けで退職しました。
直前の基準日は前の年の12月1日、次の基準日は6月1日です。
退職日は、どちらの基準日からも1か月以上離れています。
そのためAさんは、退職する年の6月1日の期末手当・勤勉手当を受け取れません。
Bさんの場合:5月中旬で退職
Bさんは、5月15日付けで退職しました。
次の基準日である6月1日までは、まだ1か月経っていません。
この場合Bさんは、基準日前1か月以内に退職した職員として、6月1日の期末手当・勤勉手当を受け取れる可能性があります。
Cさんの場合:4月1日に採用
Cさんは、4月1日付けで採用されました。
6月1日の基準日までの在職期間は、ちょうど2か月です。
在職期間の区分でいうと「3か月未満」に当たるため、初回の期末手当は満額の30%にとどまります。
「働き始めたのにボーナスが少ない」と感じても、制度としては織り込み済みの扱いです。
同じ「年度末に近い時期の退職」でも、基準日から1か月以内かどうかで結果が分かれます。
3月末での退職を考えている人は、あえて5月に入ってから辞める、という選択肢も検討する価値があります。
退職を急に決めた人がボーナスを丸ごと失わないための緩衝として置かれた規定だと考えられます。
逆に、就職・異動したばかりでも満額とは限りません
基準日のルールは、辞める人だけの話ではありません。
就職や異動をしたばかりの人にも関係します。
期末手当の額は、基準日以前6か月以内の在職期間の長さに応じて、支給される割合が変わる仕組みになっています(19条の4第2項)。
| 在職期間(基準日前6か月以内) | 支給される割合 |
|---|---|
| 6か月 | 100% |
| 5か月以上6か月未満 | 83% |
| 3か月以上5か月未満 | 64% |
| 3か月未満 | 30% |
たとえば4月に採用された職員は、6月1日の基準日までの在職期間が2か月程度なので、初回の期末手当は満額の30%にとどまります。
転職や異動のタイミングを考えるときは、この割合表も頭に入れておくとよいでしょう。
手当の金額のもとになるもの
何%出るかが分かっても、そもそも「何に対しての%」なのかが気になります。
期末手当のもとになる金額は、基準日に受け取るべき俸給と扶養手当の月額がもとになります。
そこに、地域手当や広域異動手当などいくつかの手当を足し合わせたものです(19条の4第4項)。
通勤手当や住居手当、残業代にあたる超過勤務手当は含まれません。
| 含まれるもの | 含まれないもの |
|---|---|
| 俸給・扶養手当・地域手当・広域異動手当など | 通勤手当・住居手当・超過勤務手当など |
勤勉手当のもとになる金額も、扶養手当を除いたほぼ同じ考え方で計算されます(19条の7第3項)。
給与明細のどの項目が対象になっているかは、自分の明細と照らし合わせて確かめてみてください。
具体的に何円になるかは、俸給表の等級や地域手当の有無によって大きく変わるため、この記事では一般化できません。
自分の場合の金額を知りたいときは、給与明細に記載されている俸給月額と扶養手当の欄を確認してみてください。
そのうえで、人事担当や共済組合の窓口に相談するのが確実です。
地方公務員はどうなるのか
ここまで見てきた条文は、給与法です。
この法律が対象にしているのは国家公務員です。
地方公務員の期末手当・勤勉手当は、この法律の対象ではありません。
根拠になるのは地方自治法と地方公務員法です。
地方自治法204条2項は、自治体が条例を作れば期末手当・勤勉手当を払える、と書いています。
義務ではなく「支給することができる」という書き方です。
額や支給方法は、条例で定めなければならない、とも書かれています(同条3項)。
地方公務員法にも手がかりがあります。
給与は職務と責任に応じ、国や他の自治体の職員の給与を考えて決める、という原則があります(地公法24条2項)。
そして給与に関する事項は、すべて条例で定めます(同条5項・25条3項5号)。
つまり、基準日ルールを国と同じ形で守る義務は、法律のどこにもありません。
実務では、多くの自治体が国の給与法を手本に、同じ基準日・同じ例外を自分の条例に書き写しています。
けれど、それは慣習であって保証ではありません。
| 国家公務員 | 地方公務員 | |
|---|---|---|
| 根拠になる法律 | 一般職の職員の給与に関する法律 | 各自治体の給与条例 |
| 基準日ルールを定めるのは | 法律そのもの | 自治体ごとの条例 |
| 確かめる方法 | e-Govで条文を読む | 自分の自治体の例規集を読む |
自分の自治体の条例を確かめる方法
地方公務員の場合、基準日ルールの詳細は自分の自治体の条例で確認するしかありません。
手順はこうです。
- 自治体名と「職員の給与に関する条例」で検索し、例規集のページを開く
- 条例の中から「期末手当」「勤勉手当」の章を探す
- 基準日の定めと、退職者・新規採用者に対する例外規定があるかを確認する
- 条文だけで判断がつかない場合は、人事課・職員課に直接問い合わせる
条例は自治体ごとに条文の番号も文言も違います。
国の給与法をそのまま引き写している自治体もあれば、独自の言い回しにしている自治体もあります。
自分の目で確かめることが、結局いちばん確実です。
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辞める日を決める前に、退職願をいつ・誰に出すのか、辞めた翌日から保険や年金がどう変わるのかも一緒に見ておくと、日付を決めやすくなります。
→「辞めると決めたら、何をいつ出す?公務員の「辞職」の手続きと、辞めた翌日から変わる保険・年金を条文で確かめる」
退職や異動を考えているなら、ここを確認する
条件を満たしていても、支給前に取り消される場合が1つだけあります。
退職してから支給日までの間に、在職中の行為をめぐって起訴されたり、犯罪の疑いが持たれたりすることがあります。
そうした場合、期末手当の支給を一時的に差し止められることがあります(19条の6第1項)。
通常の退職ではまず起こらない話ですが、条文にはこういう規定も置かれています。
病気やけがで休職している場合も、扱いが用意されています。
公務災害や通勤災害による休職者が、基準日前1か月以内に退職・死亡したときを考えます。
この場合、休職中の支給割合に応じた期末手当を受け取れることがあります(23条7項)。
以上を踏まえて、自分の状況を書き出してみましょう。
退職・異動の前に確かめるリスト
退職や異動を決める前に埋めておくと、ボーナスで損をしにくくなります。どれも人事担当に聞けば分かるものです。
次のボーナスの基準日はいつか(6月1日か12月1日か)
自分の退職・異動の予定日は、基準日からどれだけ離れているか
基準日の前1か月以内に当たるかどうか
在職期間の長さから見て、今回はどの支給割合に当たりそうか(100%・83%・64%・30%)
自分の所属先の給与条例に、国と同じ「前1か月以内」の例外があるか(地方公務員のみ)
確認した日と、答えてくれた窓口
このページを印刷すると、この1枚だけが出ます。ブラウザの印刷からPDFとして保存することもできます。
❓ よくある質問
Q. 自己都合退職でも期末手当はもらえますか。
A. もらえます。
退職の理由が自己都合か勧奨かによる差は、この条文にはありません。
基準日に在職しているか、基準日の前1か月以内の退職かどうかで決まります(給与法19条の4)。
ただし在職期間の長さによって、支給される割合は変わります。
Q. 定年退職の場合はどうなりますか。
A. 定年退職日は3月31日になることが多く、基準日(6月1日・12月1日)からは離れているため、その回のボーナスの対象外になるのが通常です。
定年前再任用短時間勤務職員として続けて働く場合は、在職として扱われます(19条の4第3項)。
Q. 地方公務員も「前1か月以内」の例外がありますか。
A. 法律で保証されているのは国家公務員だけです。
地方公務員は各自治体の給与条例しだいです(地方自治法204条2項・3項)。
多くの自治体が国と同じ規定を置いていますが、確認が必要です。
Q. 退職後に犯罪の疑いが出たら、もらったボーナスは取り消されますか。
A. 支給日より前なら、支給を一時的に差し止められることがあります(19条の6第1項)。
この条文が扱っているのは支給前の差止めで、すでに振り込まれた手当を取り消す規定ではありません。
Q. 病気で休職中に辞める場合はどうなりますか。
A. 公務災害や通勤災害による休職で、基準日前1か月以内に退職・死亡した場合を考えます。
この場合、休職中の支給割合に応じた期末手当が出ることがあります(給与法23条7項)。
Q. 民間企業のボーナスと何が違いますか。
A. 民間企業のボーナスは、多くの場合その会社の就業規則や労使協定で支給条件が決まり、会社ごとにばらつきがあります。
公務員の場合は、国家公務員なら法律、地方公務員なら条例という形で、基準日と例外がはっきり定められている点が違います。
Q. この記事は誰に当てはまりますか。
A. 国家公務員には条文どおりに当てはまります。
地方公務員は、この記事の考え方が実務のモデルになっている自治体が多いものの、最終的には自分の自治体の給与条例で確認してください。
独立行政法人などの職員は、それぞれの法人の規程によります。
まとめ
- 期末手当・勤勉手当は基準日(6月1日・12月1日)に在職している人に払われる
- 基準日の前1か月以内に辞めた人にも、同じ扱いで払われる(例外規定。人事院規則で定める職員は除く)
- 在職期間の長さで支給される割合も変わる。就職・異動したばかりの人は満額にならないことがある
- 地方公務員にこの基準日ルールを保証する法律は無い。自分の自治体の給与条例を確認すること
- 退職を決める前に、基準日との距離と、所属先の条例の内容を人事担当に確かめるのが確実
✏️ 筆者から一言
この記事を書いていていちばん驚いたのは、「基準日の前1か月以内に辞めた人にも払う」という一文が、条文の中にさりげなく置かれていたことです。
退職を控えた人がボーナスをあきらめて職場を去るのを防ぐための規定なのだろうと思います。
けれど、この一文を知らずに退職日を早めてしまえば、本来もらえたはずの手当を取りこぼします。
条文は、知っている人だけが得をする形で存在しています。
退職や異動を決める前に、一度条文を開く価値はあると思います。
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📚 この記事で参照した一次情報
最終確認 2026年9月9日。
法令・制度の記述は、年に1度と制度改正のときに見直しています。

