公開 2026年10月5日
先月、引っ越した。
最寄り駅も変わったし、通勤の経路も変わった。
通勤手当は今までどおり振り込まれているから、たぶん大丈夫。
届出の書類があったような気もするけれど、忙しくて、そのままにしてしまった。
そんな人は、案外多いのではないでしょうか。
もう1人は、4月に半年分の定期券を買って、通勤手当をまとめて受け取った人です。
ところが秋になって、育休に入ることが決まりました。
「半年分もらったのに、途中で通勤しなくなる。あの手当は返すことになるのかな」。
そう思いながら、まだ誰にも聞けていません。
先に答えを言うと、住まいや通勤の方法が変わったら、国の職員は「速やかに」届け出る決まりで、届出が事実から15日を過ぎると、増える手当は届出を受けた月からになります(人事院規則九―二四第3条、第20条)。
休んで通勤しなくなった月は、手当は出ず、すでに出た分は返す場合もあります。
対象になる距離、金額の決まり方、届出の線、返す場面。
この4つを順に確かめます。
※本サイトでいう「公務員」には、独立行政法人・国立大学法人・日本銀行・日本年金機構等の職員(いわゆる準公務員)も含みます。
副業・兼業規定が国家公務員法・地方公務員法に準拠、または類似している職種を主な対象としています。
⚠️ 先にお断りしておきます
この記事は、一般職の国家公務員の通勤手当(給与法12条と人事院規則九―二四)を読んだものです。
地方公務員の通勤手当は、各自治体の条例と規則で決まるので、そのままは当てはまりません。
自衛官は別の法律の対象で、今回は一次情報を取っていないため書きません。
実際の届出の様式や期限は職場ごとに違うので、最後は職場の給与担当に確かめてください。
この記事の結論
📌 結論を先に
- 通勤手当は、片道が2km以上あるのが基本。2km未満でも、離島や障害などで通勤が著しく困難なら対象になる
- 電車やバスは定期券などの運賃、車や自転車は片道の距離ごとの定額。月の合計は15万円が上限
- 住居・経路・通勤方法・運賃が変わったら、速やかに届出(人事院規則九―二四第3条)
- 届出が事実から15日を過ぎると、増える手当は届出を受けた月から(同規則第20条)。減る手当は変わった翌月から
- 休職・育休・停職、月の全日数の出張や休暇で通勤しないときは、手当が出ない、または返す場合がある
- 出すべき届出を出さず、事実と違う内容で受け取り続けるのはいちばん避けたい形
そもそも、通勤手当はいくら出る? まずは「片道2km」の線
通勤手当の支給対象は、通勤のために交通機関や有料道路の運賃を払う職員、車や自転車などを使う職員です(給与法12条1項)。
ただし、歩いて通うとしたときの距離が片道2km未満なら、原則として対象になりません。
近い家は、手当も出ない、ということです。
例外もあります。
離島に住んでいる、勤務先が離島にある、あるいは障害のために歩くことが著しく困難で、交通機関や車を使わないと通えない場合は、2km未満でも対象になります(人事院規則九―二四第5条)。
その場合かどうかは、各庁の長が認めるかどうかで決まります。
ここで測る距離は、「一般に利用できる最短の経路」の長さです(同規則第2条2項)。
遠回りの道を選んだからといって、距離が伸びて手当が増えるわけではありません。
| 通い方 | 2km未満のとき | 2km以上のとき |
|---|---|---|
| 電車・バスなどの交通機関 | 原則出ない | 運賃などの額に応じて出る |
| 車・バイク・自転車 | 原則出ない | 片道の距離ごとの定額が出る |
| 電車と車などの両方を使う | 原則出ない | 決まった組み合わせで出る(併用) |
金額は、通い方で決まり方が変わる
次に、いくら出るのかです。
電車やバスと、車や自転車では、計算の仕方がまったく違います。
電車やバスなどは、運賃の額が基準です。
定期券を使うのがいちばん経済的で合理的なら、その定期券の値段が基になります。
回数券のほうが安いなら、通勤21回分の運賃です(人事院規則九―二四第8条)。
運賃、時間、距離に照らして「最も経済的かつ合理的」な経路と方法で計算する決まりです(同規則第6条)。
しかも、行きと帰りで経路や方法を変えてはいけません。
ただし、勤務が深夜に及ぶ場合など、正当な理由があるときは別です(同規則第7条)。
車や自転車は、運賃がありません。
そのかわり、片道の距離で区切った定額表があります(同規則第8条の2)。
表の一部を抜き出すと、次のようになっています。
| 片道の使用距離 | 手当の額(1か月) |
|---|---|
| 5km未満 | 2,000円 |
| 5km以上10km未満 | 4,200円 |
| 10km以上15km未満 | 7,300円 |
| 15km以上20km未満 | 10,400円 |
| 100km以上 | 66,400円(上限) |
車だけでなく、自転車も対象です(同規則第9条)。
自転車で片道3kmなら2,000円、というふうに、同じ表を使います。
自分の通勤が表のどの行に当たるのか、一度、見ておくといいと思います。
車の人には、もう1つあります。
駐車場の料金を払っている場合は、最大5,000円まで上乗せが出ます(給与法12条5項)。
ただし、自転車を停める施設の料金は、この上乗せの対象になりません(人事院規則九―二四第16条1項2号)。
ここは、うっかり勘違いしやすいところです。
さらに、いくつかを足した合計が月15万円を超える場合は、15万円が上限になります(給与法12条6項)。
合計がそれを超える人は、15万円に抑えられるということです。
支給のしかたは、定期券なら、使う定期券の期間に合わせてまとめて出るのが基本です。
その期間を「支給単位期間」と呼び、最長6か月です。
車や自転車の分は1か月ごとです(給与法12条9項)。
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引っ越したときは、通勤手当のほかに、住居手当の届出も要ります。
家賃の補助がどう決まるのか、先に読んでおくと安心です。
→「家賃補助はいくら?単身赴任手当は?公務員の「住居手当」と「単身赴任手当」を条文で確かめる」
引っ越したら、まず届出。ここが15日の線
ここからが、この記事でいちばん大事な部分です。
手当を受ける職員は、次のどれかが起きたら、通勤届を職場に出します。
「住居、通勤経路、通勤方法、駐車場等のどれかを変えたとき」「運賃や駐車場の料金が変わったとき」、そして「省庁をまたいで異動したとき」です。
出す相手は、各庁の長(その委任を受けた人を含む)で、「速やかに」出す決まりです(人事院規則九―二四第3条)。
届出を受けた職場は、定期券を見せてもらうなどして、事実を確かめます。
そのうえで、手当の額を決め直します(同規則第4条)。
では、出し忘れるとどうなるのか。
ここで出てくるのが「15日」です。
新しく手当を受けるようになった場合、また、手当が増える場合は、届出が事実の生じた日から15日を過ぎてからだったとき、届出を受けた月から手当が始まる、増える、という決まりです(同規則第20条1項ただし書、2項1号)。
つまり、15日以内に出せば、事実が起きた月から。
過ぎると、届出を受けた月からです。
| 場面 | 手当が変わる月 |
|---|---|
| 手当が増える、届出が15日以内 | 変更の事実が起きた月から |
| 手当が増える、届出が15日を過ぎた | 届出を受けた月から |
| 手当が減る、または同額 | 事実が起きた月の翌月から(月の初日なら、その月) |
具体例で見てみます。
3月20日に引っ越して、通勤の経路が長くなり、手当が増えるとします。
届出を4月10日に出したとします。
事実が起きた日から21日たっているので、15日を過ぎています。
この場合、増える分は4月分からです。
3月に増えるはずだった分は、出ません。
ここまで読んで、「そんなにシビアなのか」と驚いた人もいるでしょう。
私も、15日はなかなか短いと思っています。
引っ越しの前後は、役所の手続きも、荷ほどきもあって、他のことを考える余裕が無いのが普通です。
だからこそ、引っ越しが決まった時点で、届出の日付を手帳に書いておくのをお勧めします。
減るほうは、少し事情が違います。
手当が減る場合は、届出の日にかかわらず、事実が起きた月の翌月から減ります(同規則第20条2項2号)。
出し忘れて得をすることはありません。
減る分の差額を、すでに受け取った手当からどう調整するかは、規則に細かくは書かれていません。
職場の給与担当の取り扱いに従うことになります。
定期券が余った、休んだ——返すのはどんなとき?
2人目の読者が気にしていた点です。
手当をもらったあとで、通勤しなくなったり、経路が変わったりしたら、返すことになるのか。
給与法は、離職などの事由が生じたら、支給単位期間のうち、その後の期間を考えて決めた額を返させる、と書いています(12条8項)。
人事院規則は、その事由を具体的に並べています(人事院規則九―二四第21条1項)。
ポイントになるのは、次の4つです。
- 離職したとき、または手当をもらう資格を失ったとき
- 通勤経路、通勤方法、駐車場、運賃などの変更で、手当の額が変わるとき
- 月の途中で、休職・育児休業・停職・自己啓発等休業・配偶者同行休業などになったとき(その月かその翌月に復帰する場合は除く)
- 出張、休暇、欠勤などで、月の初日から末日まで1日も通勤しないとき
返す額は、定期券を払い戻したら戻ってくる額、を基準に決めます。
事由が生じた月の末日に払い戻したものとして計算した額、というのが、規則の書き方です(同規則第21条2項1号)。
返納は、職場がその後に支払う給与から差し引けるとも決められています(同条3項)。
なお、1か月ごとに出る手当のうち「返納させるものとして取り扱うことが適当でない場合」は、人事院が別に定めています。
この例外の中身までは、確かめきれていません。
それとは別に、月の初日から末日まで1日も通勤しない月は、そもそもその月の分の手当が支給できません(同規則第24条)。
育休に入る人も、病気で長く休む人も、該当する月が出てきます。
病気で長く休むときの給料全体は、別の記事にまとめてあります。
🔗 あわせて読みたい
病気や休職で通勤しなくなる月は、給料そのものの扱いも変わります。
通勤手当と合わせて確かめておくと、見通しが立ちます。
→「病気で長く休んだら、公務員の給料はどうなる?「病気休暇」と「休職」の給与を条文で確かめる」
電車から自転車へ。通い方を変えるときの考え方
通勤手当は、「住まいと職場のあいだを、勤務のために往復すること」が前提です(人事院規則九―二四第2条1項)。
そのため、通う方法を変えたら、届出が要ります。
たとえば、電車通勤だった人が、健康のために自転車に変えたとします。
この場合、通勤方法が変わったので、届出が必要です。
電車の定期券がなくなるかわりに、距離に応じた定額になります。
距離が10km以上なら、定額は7,300円から、といった具合です。
ここで1つ、気をつけたいことがあります。
通勤方法を変えたのに、届出を出さず、電車の定期券の分を受け取り続けるのは、事実と違う内容で手当を受けている状態です。
そうなると、手当を返すだけでは済まない可能性があります。
国家公務員法は、法律に違反したとき、職務上の義務に違反したとき、国民全体の奉仕者にふさわしくない非行があったときに、懲戒処分ができると書いています(82条1項)。
実際にどう扱われるかは個別の事情次第で、ここでは確かめきれていません。
怖がらせるつもりはありません。
言いたいのは、出さずに悩むより、出してしまうほうが、ずっと気が楽だということです。
遅れた分の手当を失うことはあっても、それ以上の面倒を抱え込まずに済みます。
地方公務員・自衛官は、同じなの?
地方公務員の給与は、条例で決めます。
地方自治法は、通勤手当を条例で支給できる手当に挙げています(204条2項)。
手当の額と支給の方法も、条例で定める決まりです(同条3項)。
地方公務員法も、給与は条例に基づいて支給するもので、条例に基づかずに金銭を支給してはならないと書いています(24条5項、25条1項)。
つまり、片道の距離の線、金額の表、届出の期限、遅れたときの扱いは、自治体ごとに違いうるということです。
この記事の数字は、一般職の国家公務員のものだと考えてください。
自分の自治体の条例・規則を、人事課の資料やイントラの例規集で確かめてみてください。
自衛官は、国家公務員法が適用されない特別職です。
給与は防衛省の職員の給与に関する法令で決まります。
この記事の内容は、そのまま当てはまりません。
次にやること
引っ越しや通い方の変更がある人も、ない人も、順番に確かめられるよう並べておきます。
- 自分が国の職員か、地方の職員か、自衛官かを確かめる
- いま届け出ている通勤の内容(住所、経路、通い方、運賃)を、通勤届か手当の認定簿で見る
- 実際の通勤と、届け出ている内容が合っているかを確かめる
- ずれていれば、すぐに通勤届を出す。出す相手と様式は職場の給与担当に聞く
- 引っ越しが決まったら、届出の期限(国では事実から15日)を手帳に書く
- 長く休む予定があるなら、手当がどうなるか、事前に給与担当へ聞く
通勤手当の確認メモ
分かるところだけで十分です。空いた欄は、給与担当に聞くことのリストになります。
自分の区分(国/地方/自衛官)
いま届け出ている住所と、通勤経路(駅名・バス停など)
通い方(電車・バス・車・自転車・徒歩)と、片道の距離
手当の額と、支給単位期間(何か月分か)
引っ越し・通い方の変更の予定日と、届出を出す日
休み(育休・病気など)に入る予定と、手当がどうなるか
給与担当に聞きたいこと
このページを印刷すると、この1枚だけが出ます。ブラウザの印刷からPDFとして保存することもできます。
❓ よくある質問
Q. 通勤手当は、片道何kmから出ますか。
A. 一般職の国家公務員は、歩いて通うとしたときの距離が片道2km以上あるのが基本です。
離島や障害などで通勤が著しく困難な場合は、2km未満でも対象になります。
Q. 自転車通勤でも通勤手当は出ますか。
A. 出ます。
自転車も、自動車などと同じ扱いで、片道の距離に応じた定額が出ます。
ただし、自転車を停める施設の料金は、駐車場等の上乗せの対象になりません。
Q. 引っ越しの届出を忘れていました。
どうなりますか。
A. 国の職員は、住居などが変わったら速やかに届出する決まりです。
手当が増える場合は、事実から15日を過ぎた届出だと、届出を受けた月から増えます(同規則第20条)。
気づいた時点で、すぐ出してください。
Q. 手当が減る場合も、届出が遅れると損をしますか。
A. 減る場合は、事実が起きた月の翌月から減ります。
届出が遅れても、減る月は変わりません。
すでに受け取った差額の扱いは、職場の給与担当に確かめてください。
Q. 育休に入ったら、通勤手当は返しますか。
A. 月の途中で育児休業に入った場合など、返納の対象になる事由があります(同規則第21条1項3号)。
その月かその翌月に復帰する場合は除かれます。
月の全日数にわたって通勤しない月は、手当が支給できません(同規則第24条)。
細かい例外は人事院が定めているので、給与担当に確かめてください。
Q. 定期券を6か月分で買った場合、途中で経路が変わったら?
A. 額が変わる事由が生じた場合は、定期券を払い戻したものとして計算した額を返す決まりです(同規則第21条2項1号)。
返す額は、給与から差し引くことができます。
Q. 地方公務員も同じ決まりですか。
A. 地方公務員の通勤手当は、各自治体の条例で決まります(地方自治法204条2項・3項)。
距離の線や届出の期限は、自治体ごとに違いうるので、自分の自治体の条例・規則で確かめてください。
Q. この記事は、いつの時点の情報ですか。
A. 2026年10月5日に、e-Gov 法令検索で給与法と人事院規則の条文を確かめた内容です。
国家公務員法には2026年11月2日施行の改正がありますが、この記事で引いた82条は同じ文です。
まとめ
- 国の通勤手当は、片道2km以上が基本。距離は最短の経路で測る
- 電車・バスは定期券などの運賃、車・自転車は距離ごとの定額(自転車も対象)。月15万円が上限
- 住居・経路・通い方・運賃が変わったら、速やかに届出。増える手当は、届出が事実から15日を過ぎると届出を受けた月から
- 休職・育休・月の全日数の欠勤などで通勤しないときは、手当が出ない、または返す場合がある
- 地方公務員は条例、自衛官は別の法令。自分の区分で確かめる
- 迷ったら、事実に合わせて先に届け出るのがいちばん安全
✏️ 筆者から一言
私は、行動しながら修正していくほうだと考えています。
ただ、手当の届出に関しては、勢いよく動くより、いま届け出ている内容が実態と合っているかを一度見直すことが、最初の行動だと思います。
合っていなければ、その場で修正すればいい。
失敗といっても、出し忘れは、気づいた時点から取り戻せることがほとんどです。
届出の書類を1枚出すだけで、あとの心配が1つ減ります。
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📚 この記事で参照した一次情報
- e-Gov 法令検索|一般職の職員の給与に関する法律
- e-Gov 法令検索|人事院規則九―二四(通勤手当)
- e-Gov 法令検索|国家公務員法
- e-Gov 法令検索|地方自治法
- e-Gov 法令検索|地方公務員法
最終確認 2026年10月5日。
法令・制度の記述は、年に1度と制度改正のときに見直しています。

