公開 2026年9月12日
配偶者の海外赴任が決まった。
そう聞いたとき、頭に浮かぶ選択肢はたいてい2つです。
仕事を辞めてついて行くか、日本に残って離れて暮らすか。
でも、公務員には3つ目の道があります。
籍を残したまま、最長3年まで休んで一緒に行く。
そういう制度が法律で用意されています。
名前を「配偶者同行休業」といいます。
知られていないので、職場でも話題に上りません。
けれど根拠はきちんと法律にあります。
※本サイトでいう「公務員」には、独立行政法人・国立大学法人・日本銀行・日本年金機構等の職員(いわゆる準公務員)も含みます。
副業・兼業規定が国家公務員法・地方公務員法に準拠、または類似している職種を主な対象としています。
⚠️ 先にお断りしておきます
この記事で条文を追うのは、国家公務員の制度です。
地方公務員は自治体の条例が根拠になるので、休める年数も認められる事由も団体ごとに違います。
自分が使えるかどうかは、必ず人事担当に確認してください。
この記事の結論
📌 結論を先に
- 配偶者が外国に住むことになったとき、最長3年まで休める(国家公務員の配偶者同行休業に関する法律3条1項)
- 休んでいる間は無給。ただし身分は残る(5条)
- 届出をしていない事実上の夫婦も対象に含まれる(2条3項)
- 国内の転勤では使えない。相手が外国にいることが条件(2条4項)
- 配偶者の滞在は6か月以上続く見込みであることが要る(人事院規則二六―〇 5条)
- 請求は休み始めたい日の1か月前までに出す(同6条)
- 地方公務員は条例が根拠。年数も事由も自治体しだい(地方公務員法26条の6)
- 退職金の計算では、休んだ月数が勤続期間から引かれる(9条)
辞めさせないための制度です
この法律には、何のために作られたかが最初に書いてあります。
有為な職員に働き続けてもらい、公務が円滑に回るようにするため。
そう定められています(1条)。
つまり、職場に迷惑をかけるから遠慮する、という性質の制度ではありません。
優秀な人に辞められては困るから休めるようにした。
法律の側がそう言っているわけです。
法律が公布されたのは2013年11月です。
公務員の制度としては、まだ新しい部類に入ります。
条件は「相手が外国にいること」
使えるかどうかの分かれ目は、はっきりしています。
配偶者が外国に住所か居所を定めて滞在していること。
そしてその場所で一緒に暮らすために休むこと。
この2つです(2条4項)。
よくある誤解を先に片づけておきます。
配偶者が国内の遠い土地へ転勤する場合、この制度は使えません。
あくまで「外国」が条件です。
相手が外国に行く理由も、まったくの自由ではありません。
人事院規則が4つの型を挙げています。
| 配偶者が外国にいる理由 | 対象になるか |
|---|---|
| 外国での勤務 | 対象 |
| 外国で事業を営むなどの活動 | 対象 |
| 外国の大学などでの修学 | 対象 |
| 上の3つに準ずるもので人事院が定めるもの | 対象 |
| 観光・短期の滞在 | 対象外 |
そしてもう一つ、見落とせない条件がついています。
どの型も「6か月以上続く見込み」であることが要ります。
3か月の短期赴任について行きたい、という場合は使えません。
もう一つ、知っておく価値のある点があります。
この法律でいう「配偶者」には、届出をしていないけれど事実上は夫婦、という関係の人も含まれます(2条3項)。
婚姻届を出していないから無理だ、と最初からあきらめる必要はありません。
| こんな場合 | 使えるか |
|---|---|
| 配偶者が外国の事業所へ転勤する | 対象になりうる |
| 配偶者が外国の大学へ留学する | 対象になりうる |
| 事実婚の相手が外国へ赴任する | 対象になりうる |
| 配偶者が国内の遠方へ転勤する | 対象外 |
| 自分が外国の大学で学びたい | 別制度(自己啓発等休業)の話 |
| 親の介護のために離れて暮らす | 別制度(介護休暇等)の話 |
働き方によっては、そもそも土俵に乗らない場合もあります。
人事院規則が、休めない職員をはっきり挙げているためです。
- 非常勤の職員
- 臨時的に採用された職員や、任期を区切られた常勤の職員
- 条件付採用の期間中にある職員
- 管理監督職で、異動までの期間を延ばしてもらっている職員
- 定年を過ぎて勤務を延長している職員
採用されたばかりの人が外れている点は、知らないと驚くかもしれません。
条件付採用の期間が終わるまでは待つ必要があります。
最長3年。延長は原則1回まで
休める長さの上限は3年です(3条1項)。
ただし、最初から3年で申し込まなければいけないわけではありません。
たとえば、まず1年で請求して、現地の生活が落ち着いてから延ばす、という進め方もできます。
延長の請求は法律に用意されています(4条1項)。
通算して3年を超えなければ構いません。
気をつけたいのは回数です。
延長できるのは、原則として1回だけとされています(4条2項)。
特別な事情があるときは例外もありますが、細かく刻んで何度も延ばす、という使い方は想定されていません。
| 進め方 | できるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 最初から3年で請求する | できる | 3条1項 |
| 1年で請求し、あとから2年延ばす | できる | 4条1項 |
| 1年ずつ3回に分けて延ばす | 原則できない | 4条2項 |
| 通算で3年を超えて休む | できない | 4条1項 |
「特別な事情」の中身も、人事院規則が決めています。
延ばした期間が終わる日より後も、配偶者の外国勤務が続くことになった場合。
しかも、それが延長を頼んだ時点では決まっていなかった場合です。
つまり、あとから赴任が延びたケースを救うための例外だと分かります。
請求するときは、休みたい期間の初日と末日、そして配偶者が外国に滞在する理由を示します(3条2項)。
配偶者の赴任辞令など、事情が分かる資料を求められることもあります。
期限も決まっています。
休み始めたい日の1か月前までに、請求書を出すことになっています。
赴任の話が出たら、早めに動くほうが安全です。
承認するかどうかを決めるのは任命権者です。
公務の運営に支障がないか、勤務成績その他の事情はどうか。
そうした点を見たうえで判断します(3条1項)。
請求すれば自動的に通る、という仕組みではありません。
休んでいる間、給料と身分はどうなるか
ここは条文が短くはっきりしています。
身分は残るけれど、職務にはつかない。
そして給料は出ない(5条)。
無給という一点は、覚悟が要る部分です。
生活費は配偶者の収入か、貯えでまかなうことになります。
海外で暮らす費用も含めて、事前に計算しておきたいところです。
| 項目 | 休業中の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 職員としての身分 | 残る | 5条1項 |
| 職務 | 従事しない | 5条1項 |
| 給与 | 支給されない | 5条2項 |
| 復帰後の号俸 | 調整できる | 8条 |
| 退職手当の勤続期間 | 休んだ月数が引かれる | 9条 |
| 共済組合の掛金 | 条文に定めなし。共済組合に確認 | — |
表の最後の行が、意外と大事です。
無給の期間に共済の掛金がどうなるかは、この法律には書かれていません。
組合の規程によるので、休む前に共済組合へ聞いておくと安心できます。
承認が消えてしまうとき
いったん認められた休業でも、途中で効力を失うことがあります。
条文は3つの場合を挙げています(6条1項)。
- 休職または停職の処分を受けたとき
- 一緒に暮らすはずだった配偶者が亡くなったとき
- 離婚などで、その人が配偶者でなくなったとき
さらに、任命権者が承認を取り消す場合もあります。
生活を共にしなくなったときが、その代表です(6条2項)。
人事院規則は、配偶者が外国にいなくなったときも取消の理由に挙げています。
言い換えると、こういうことです。
この休業は「一緒に暮らすこと」を前提に認められています。
前提が崩れれば、休む理由もなくなります。
現地で先に自分だけ帰国することになった、というような変化が起きたら、早めに職場へ知らせるのが筋です。
配偶者が亡くなったとき、配偶者でなくなったとき、一緒に暮らさなくなったときは、届け出る義務があります。
取消の理由には、少し毛色の違うものも並んでいます。
出産にともなう特別休暇を取ることになったときと、育児休業が認められることになったときです。
現地で子どもを授かった場合、制度がそちらへ移る、という意味になります。
育児休業へ移る場合は、いったん職務に戻る手順を踏みません。
人事院規則が、その場合だけを復帰の対象から外しているためです。
休みが打ち切られて呼び戻される、という話ではないわけです。
抜けた穴は、法律が埋め方まで決めている
3年も抜けたら職場が回らないのではないか。
そう心配する人は多いはずです。
その点も、条文が手当てしています。
配置換えなどでは業務を処理しきれないと認めるとき、任命権者は代わりの人を採ることができます(7条1項)。
方法は2つあり、任期を決めた採用か、臨時的な任用かを選べます。
臨時的な任用のほうには上限があります。
請求された期間について1年まで、と決められています(同項)。
長く休む場合は、任期を決めた採用のほうが使われることになります。
穴の埋め方まで法律が書いている、という事実そのものが、この制度が「例外的なわがまま」ではないことを示しています。
戻ってきたあとの給料と、復帰の支え
復帰したときの号俸は、調整できると定められています(8条)。
同じ職場の他の職員との釣り合いを見て、必要な範囲で直す仕組みです。
休んだ分がそのまま昇給の遅れになるとは限らない、ということでもあります。
ただし「必ず戻る」とまでは書かれていません。
実際にどう扱われるかは人事担当に確認してください。
見逃されがちですが、人事院規則には職場側の努力義務も置かれています。
休んでいる職員が力を保ち、伸ばそうとする取り組みを支えること。
そして円滑に戻れるよう必要な手当てをすること。
任命権者はそう努める、と書かれています。
休んでいた人が元いた官職を持ち続ける点も、規則が明記しています。
もっとも、その席を他の人で埋めることは妨げられていません。
戻る場所が完全に空けて待っている、という保証まではないわけです。
退職金では、休んだ月数が引かれる
見落とされやすいのが、退職金への影響です。
配偶者同行休業をした期間は、退職手当の計算で「実際に職務をとらなかった期間」として扱われます(9条1項)。
そのうえで、勤続期間の数え方について特別な読み方が置かれています(9条2項)。
結果としてどうなるか。
休んだ月数が、まるごと勤続期間から差し引かれます。
3年休めば36か月分です。
退職金は勤続年数の区分で支給率が変わります。
節目のすぐ手前にいる人にとっては、休んだ期間の長さが金額に響いてくる可能性があります。
退職金の仕組みそのものは公務員の退職金、支給率だけでは決まらない?で詳しく見ています。
自分の場合にどれくらい効くかは、人事担当に試算を頼むのが確実です。
地方公務員の場合
地方公務員にも同じ趣旨の制度があります。
根拠は地方公務員法26条の6です。
ただし、国とは書きぶりが違います。
国は法律が細かく決めているのに対し、地方は「条例で定めるところにより」と各自治体へ委ねています。
年数の上限は3年を超えない範囲と法律が枠をはめていますが、その枠の中で実際に何年にするかは条例が決めます。
外国に滞在する事由も条例の定めによります。
| 項目 | 国家公務員 | 地方公務員 |
|---|---|---|
| 根拠 | 配偶者同行休業法 | 地方公務員法26条の6 |
| 期間の上限 | 3年 | 3年の枠内で条例が定める期間 |
| 対象になる事由 | 人事院規則が定める | 条例が定める |
| 延長の回数 | 原則1回 | 原則1回(条例の特別の事情を除く) |
| 身分 | 残る | 残る |
| 給与 | 支給されない | 支給されない |
| 細目 | 人事院規則 | 条例 |
身分が残ることと無給であることは、地方でも変わりません。
自己啓発等休業について書かれた条文を引く形で、同じ扱いが決まっています。
自分の自治体がどんな条例を持っているかは、例規集で調べられます。
「配偶者同行休業に関する条例」といった名前で置かれていることが多いはずです。
自衛官・防衛省の職員はどうなるか
防衛省の職員にも、この制度は届いています(11条)。
ただし言葉の置き換えが入ります。
人事院規則にあたる部分は政令が受け持ちます。
承認を出す人も、自衛隊法が定める任免の権限を持つ人に置き換わります。
制度の中身、つまり最長3年・無給・身分は残るという骨格は同じです。
手続きの窓口が違うだけだと考えて差し支えありません。
自己啓発等休業との違い
このブログでは、もう一つの無給の休業も条文で確かめています。
大学院で学び直すための自己啓発等休業です。
形はよく似ています。
無給で、身分は残り、上限は3年。
ただし目的も条件も別物なので、混ぜて考えると判断を誤ります。
| 配偶者同行休業 | 自己啓発等休業 | |
|---|---|---|
| 何のために休むか | 外国の配偶者と暮らすため | 学ぶため・国際貢献のため |
| 在職年数の要件 | 法律に定めなし | 国は在職2年以上 |
| 期間の上限 | 3年 | 学びは2年(特に必要なら3年) |
| 終わる原因 | 配偶者との同居がなくなったとき | 学業や活動をやめたとき |
| 給与 | 出ない | 出ない |
配偶者の赴任先で自分も学校に通いたい、という場合もあるはずです。
どちらの制度で申し込むのが自然かは、休む目的がどちらに近いかで変わります。
迷ったら人事担当に相談してください。
人事担当に確かめるときの聞き方
制度があると分かっても、聞き方が漠然としていると話が進みません。
順番に確かめると、必要な情報がそろいます。
- 自分の職場に配偶者同行休業の規程(国は人事院規則、自治体は条例)はあるか、どこで読めるか
- 配偶者の赴任の形が、認められる事由に当てはまるか
- 何年まで休めるか。延長は何回できるか
- 請求はいつまでに出す必要があるか。添える書類は何か
- 休業中の共済の掛金と健康保険はどうなるか
- 退職金の勤続期間から何か月引かれるか
- 復帰したときの号俸は、どんな考え方で決まるか
最初の2つが通れば、あとは事務の話です。
まずは使えるかどうかを先に確かめると、判断が早くなります。
配偶者の海外赴任が決まったときのチェックシート
赴任の話が出た段階で埋めておくと、辞めるかどうかの判断材料になります。分からない欄は、人事担当や共済組合に聞けば埋まります。
配偶者の赴任先(国・都市)と、滞在する理由は何か
赴任の期間はどれくらいの見込みか
自分の職場の規程では、何年まで休めることになっているか
請求の期限と、添える書類は何か
無給で暮らす場合、毎月いくら必要になりそうか
休業中の共済の掛金・健康保険はどうなるか
退職金の勤続期間から引かれる月数はどれくらいか
このページを印刷すると、この1枚だけが出ます。ブラウザの印刷からPDFとして保存することもできます。
❓ よくある質問
Q. 配偶者の赴任が3か月だけの場合も使えますか。
A. 使えません。
人事院規則は、配偶者が外国に滞在する事由について6か月以上続く見込みであることを条件にしています。
短期の滞在は対象から外れます。
Q. いつまでに請求すればよいですか。
A. 休み始めたい日の1か月前までです。
配偶者の赴任が分かった時点で、人事担当に一報を入れておくと手続きが間に合いやすくなります。
Q. 採用されたばかりでも請求できますか。
A. 条件付採用の期間中は対象外です。
非常勤の職員、任期を区切られた職員も外れます。
自分がどの区分に入るかは人事担当に確認してください。
Q. 配偶者が国内の遠方に転勤する場合も使えますか。
A. 使えません。
この休業は、配偶者が外国に住所や居所を定めて滞在する場合を対象にしています。
国内の異動は対象外です。
Q. 婚姻届を出していない相手でも対象になりますか。
A. 対象になりえます。
法律は、届出をしていないけれど事実上は夫婦と同じ事情にある人も「配偶者」に含めています。
実際の手続きで何を求められるかは、職場に確認してください。
Q. 休んでいる間、給料は本当に1円も出ないのですか。
A. 条文では、休業の期間について給与は支給しないと定められています。
生活費をどうまかなうかは、休む前に計算しておく必要があります。
Q. 3年より長く休むことはできますか。
A. できません。
通算で3年を超えない範囲、というのが法律の上限です。
配偶者の赴任がそれより長くなる場合は、復帰するか別の道を考えるかの判断になります。
Q. 現地で自分も働いてよいのですか。
A. 休業中も職員としての身分は残っています。
そのため副業・兼業のルールは引き続き当てはまります。
働くことを考えているなら、休む前に職場へ確認してください。
Q. 請求すれば必ず認められますか。
A. 必ずではありません。
公務の運営に支障がないと認められること、勤務成績その他の事情を考慮したうえで承認されることが条件です。
Q. 途中で日本に帰りたくなったらどうなりますか。
A. 一緒に暮らさなくなったと認められると、承認は取り消されます。
状況が変わったときは、早めに職場へ相談するのが安全です。
Q. この記事は、いつの時点の情報ですか。
A. 2026年9月12日にe-Gov法令検索で確認した内容です。
配偶者同行休業法にも人事院規則二六―〇にも、未施行の改正はありませんでした。
まとめ
- 配偶者が外国に住むとき、最長3年まで籍を残して休める(3条1項)
- 無給。ただし身分は残り、復帰後の号俸は調整できる(5条・8条)
- 事実上の夫婦も対象。国内転勤では使えない(2条)
- 滞在が6か月以上続く見込みであること。請求は1か月前まで(人事院規則二六―〇)
- 一緒に暮らさなくなれば承認は消える(6条)
- 地方公務員は条例しだい。年数も事由も自治体ごとに確かめる(地方公務員法26条の6)
- 退職金の勤続期間からは休んだ月数が引かれる(9条)
✏️ 筆者から一言
この制度を調べていて、いちばん印象に残ったのは第1条でした。
有為な職員に働き続けてもらうため、と書いてあります。
つまり、休ませてあげる制度ではなく、辞めさせないための制度なんですね。
配偶者の海外赴任を、辞める理由にしてしまう人は少なくないはずです。
3年という時間があれば、選べる形はずいぶん増えます。
知らないまま辞表を書くのは、もったいない話です。
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📚 この記事で参照した一次情報
- e-Gov 法令検索|国家公務員の配偶者同行休業に関する法律
- e-Gov 法令検索|人事院規則二六―〇(職員の配偶者同行休業)
- e-Gov 法令検索|地方公務員法
- e-Gov 法令検索|国家公務員退職手当法
最終確認 2026年9月12日。
法令・制度の記述は、年に1度と制度改正のときに見直しています。

