公開 2026年9月15日
金曜の夕方、実家の母から電話がかかってきた。
父が転んで入院したらしい。
退院しても、しばらくは一人で暮らせそうにない。
電話を切ったあと、頭に浮かぶのは仕事のことです。
有休はあと何日残っていたか。
足りなければ、辞めるしかないのか。
公務員には、年次休暇とは別に、家族の介護のための休みが用意されています。
まとめて休む「介護休暇」、毎日少しだけ抜ける「介護時間」、年に数日の短い休暇の3つです。
この記事では、どれを・どれだけ・給料がどうなるかまで、条文で確かめていきます。
※本サイトでいう「公務員」には、独立行政法人・国立大学法人・日本銀行・日本年金機構等の職員(いわゆる準公務員)も含みます。
副業・兼業規定が国家公務員法・地方公務員法に準拠、または類似している職種を主な対象としています。
⚠️ 先にお断りしておきます
ここで紹介する日数や時間は、主に常勤の国家公務員(一般職)のルールです。
地方公務員は条例で決まり、自治体ごとに中身が違うことがあります。
国の非常勤職員や自衛官にも別のルールがあります。
実際に申し出るときは、職場の人事担当や規程で確かめてください。
この記事の結論
📌 結論を先に
- 介護のための休みは年次休暇とは別枠で、3種類ある
- まとめて休むなら介護休暇。国家公務員は家族1人につき通算6か月・3回まで(勤務時間法20条)
- 毎日少し抜けるなら介護時間。1日2時間まで、3年間使える(20条の2)
- 急な通院の付き添いなどは、年5日の短期の休暇(2人以上なら10日)
- 介護休暇と介護時間は、休んだ時間の分給料が減る。短期の休暇は減らない
- 介護休暇で休むと、共済から標準報酬の日額の67%の手当金が出る(66日分まで)
- 地方公務員は条例しだい。ただし法律が最低でも93日の休業を認めている
- 要件に当たれば、職場は原則承認しなければならない
介護のための休みは3つある
まず全体を見ておきます。
国家公務員の場合、介護のために使える休みは次の3つです。
どれも年次休暇(有休)とは別の枠なので、有休を使い切る必要はありません。
| 短期の介護の休暇 | 介護休暇 | 介護時間 | |
|---|---|---|---|
| 使い方 | 通院の付き添いなど、1日単位・時間単位で | まとめて休む | 1日の勤務の一部を抜ける |
| 長さ | 1年に5日(要介護者が2人以上なら10日) | 家族1人につき通算6か月・3回まで | 1日2時間まで、連続3年間 |
| 給料 | 減らない | 休んだ時間の分減る | 抜けた時間の分減る |
| 根拠 | 人事院規則15-14 22条1項12号 | 勤務時間法20条 | 勤務時間法20条の2 |
ざっくり言えば、突発的な用事は短期の休暇、退院直後や施設探しでまとまった時間が要るときは介護休暇、デイサービスの送り迎えのように毎日の決まった時間が要るときは介護時間、という使い分けです。
どの家族が対象になるのか
対象になるのは、けがや病気、年をとったことで、2週間以上にわたって日常生活に支障がある家族です(勤務時間法20条1項、人事院規則15-14 23条2項)。
要介護認定を受けているかどうかは、条文の要件には入っていません。
| 家族 | 対象になるか | 条件 |
|---|---|---|
| 配偶者(事実婚を含む) | なる | なし |
| 父母・子 | なる | なし |
| 配偶者の父母 | なる | なし |
| 祖父母・孫・兄弟姉妹 | なる | なし |
| 事実上、親子と同じ関係にある人 | なる | 同居していること |
祖父母や兄弟姉妹は、別々に暮らしていても対象です(規則23条1項1号)。
同居が条件になるのは、血縁や法律上の親子ではないけれど、実際に親子のように暮らしている人の場合だけです。
逆に、おじ・おばや、配偶者の兄弟姉妹はこの一覧に入っていません。
義理のきょうだいの介護を担っている場合は、使える休みがあるか人事担当に聞いてみてください。
介護休暇|まとめて休む
介護休暇は、家族1人の「介護が必要な状態」ごとに、通算6か月までの期間を、3回までに分けて指定してもらう仕組みです(勤務時間法20条1項)。
その期間の中で、実際に必要な日や時間を休みます。
流れは「期間を決める」→「休む」の2段階
- 休みたい期間の初日と末日を休暇簿に書いて申し出る。これが「指定期間」になる(規則23条3項・4項)
- その期間の中で、休む日や時間を休暇簿で請求する(規則28条1項)
- あとで延ばしたり縮めたりしたくなったら、末日を書き直して申し出る(規則23条5項)
注意したいのは、1回の指定期間で最初に休むときの請求です。
2週間以上の期間をまとめて請求する決まりになっています(規則28条2項)。
指定期間そのものが2週間より短いときなどは、人事院が別に期間を決めています。
1日単位でも、1時間単位でも休める
介護休暇は、丸1日だけでなく1時間単位でも取れます(規則23条の2)。
1時間単位で使えるのは、1日4時間までです。
午前だけ病院に付き添い、午後から出勤する、といった使い方ができます。
職場は原則として断れない
要件に当たる請求なら、職場は承認しなければならないと書かれています(規則26条)。
断れるのは、公務の運営に支障がある日や時間だけです。
それも「期間まるごと不可」ではなく、支障がある日を除いて認める形になっています。
6か月の数え方は暦どおりで、1か月に満たない端数は30日を1か月として数えます(規則23条8項)。
3回に分けたときも、合わせて6か月が上限です。
介護時間|毎日少しだけ抜ける
介護時間は、1日の勤務のうち最大2時間を抜けられる休みです(勤務時間法20条の2)。
使える期間は、家族1人の介護が必要な状態ごとに、連続する3年間です。
単位は30分です(規則23条の3)。
朝30分遅く出る、夕方1時間早く帰る、といった細かい使い方ができます。
介護休暇の指定期間と重なる日は、この3年の中に入りません。
小さな子の育児時間も取っている人は、育児時間と合わせて1日2時間までになります。
子育てと親の介護が重なる時期は、この上限に気をつけてください。
| 介護休暇 | 介護時間 | |
|---|---|---|
| 向いている場面 | 退院直後、施設探し、在宅介護の立ち上げ | デイサービスの送り迎え、毎日の通院 |
| 上限 | 通算6か月・3回 | 1日2時間・連続3年 |
| 単位 | 1日または1時間(1日4時間まで) | 30分 |
| 請求の決まり | 最初は2週間以上をまとめて | あらかじめ休暇簿で |
給料はどうなる?
ここがいちばん気になるところだと思います。
結論から言うと、休みの種類で扱いが分かれます。
| 休み | 給料 | 根拠 |
|---|---|---|
| 短期の介護の休暇(年5日) | 減らない | 給与法15条 |
| 介護休暇 | 休んだ1時間ごとに減る | 勤務時間法20条3項 |
| 介護時間 | 抜けた1時間ごとに減る | 勤務時間法20条の2第3項 |
減る額は「勤務1時間当たりの給与額」です。
俸給の月額に地域手当などを足し、12を掛け、週の勤務時間に52を掛けた数で割って出します(給与法19条)。
つまり、月給を1年分の勤務時間でならした時給のようなものです。
共済から手当金が出る
まるごと無給になるわけではありません。
介護休暇で休んだ期間は、共済組合から1日ごとに介護休業手当金が出ます(国家公務員共済組合法68条の4)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 額 | 1日につき標準報酬の日額の67%(当分の間の扱い。本則は40%) |
| 支給される日数 | 家族1人の介護が必要な状態ごとに、通算66日まで |
| 上限 | 雇用保険の基準にもとづく上限額がある |
| 給料が一部出た日 | その分、手当金が調整される(69条2項) |
67%という数字は、法律の本体ではなく附則に書かれています(附則11条の2)。
本体の40%を、当分のあいだ67%として扱うという形です。
6か月休めても手当金は66日分までなので、長く休むほど無給の日が増えます。
1時間単位で休んだ日の扱いなど細かい点は、所属の共済組合に確かめてください。
地方公務員は?
市役所や県庁、消防、都道府県警察、公立学校の職員は、勤務時間や休暇を条例で決めることになっています(地方公務員法24条5項)。
なので、日数や時間は自治体ごとに確かめる必要があります。
ただし、条例が何を決めてもよいわけではありません。
育児・介護休業法が、地方公務員に最低限の枠を直接認めています(61条の2)。
| 法律が認める最低ライン(地方公務員) | 国家公務員 | |
|---|---|---|
| まとめて休む | 3回まで・合わせて93日まで | 3回まで・通算6か月まで |
| 短期の休暇 | 1年に5日(2人以上なら10日) | 1年に5日(2人以上なら10日) |
| 1日の一部を抜ける | 1日2時間まで・連続3年 | 1日2時間まで・連続3年 |
| 承認 | 公務に支障がある日・時間を除き、承認しなければならない | 同じ |
実際の条例を1つ見てみます。
新潟県の条例は、介護休暇を通算6か月・3回までとし、介護時間を1日2時間・連続3年としています(一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する条例16条・16条の2)。
国と同じ枠です。
休んだ時間の給与を差し引く点も同じでした。
これはあくまで一例です。
自分の自治体の例規集で「勤務時間、休暇等に関する条例」を開き、「介護休暇」の条を探してみてください。
新潟県には「市町村立学校職員」向けの勤務時間の条例も別にあります。
公立小中学校の先生は、別の条例になっていないかも見てください。
共済の手当金は地方も同じ形で、標準報酬の日額の67%、通算66日までです(地方公務員等共済組合法70条の4、附則17条の2)。
自衛官は?
ここまでの勤務時間法は、一般職の国家公務員の法律です(1条)。
自衛官を含む防衛省の職員は特別職なので(国家公務員法2条3項16号)、この法律は当てはまりません。
自衛官の介護のための休暇がどう決められているかは、今回e-Govの法令の中では確かめきれませんでした。
書いていないことを推測で埋めるのはやめておきます。
日数や手続き、手当金の扱いは、部隊の人事担当に確かめてください。
休みのほかに使えるもの
休むほどではないけれど、働き方を少し変えたい。
そんなときのために、休暇とは別の仕組みもあります。
- 始業と終業の時刻を前後にずらす「早出遅出勤務」
- 深夜の勤務をしないようにしてもらう
- 残業を制限してもらう
国家公務員では、子育て中の職員向けのこれらの仕組みを、家族を介護する職員にも使えるようにしています(人事院規則10-11 13条)。
地方公務員でも、残業や深夜の勤務をしないことを承認する定めが法律にあります(育児・介護休業法61条の2第15項・17項・19項)。
もう一つ知っておきたいのは、「家族の介護が必要になった」と申し出ると、職場が制度を説明し、意向を聞く決まりになっていることです(人事院規則10-11 15条)。
何から聞けばいいか分からなくても、まず申し出れば話が始まります。
申し出る前にやっておきたいこと
- 家族の状態が、2週間以上続きそうかを医師やケアマネジャーに聞く
- 当面いちばん時間が要る場面(退院直後・施設探し・毎日の送迎など)を書き出す
- まとめて休むか、毎日少し抜けるか、短期の休暇で足りるかを考える
- 地方公務員なら、例規集で自分の自治体の条例を確かめる
- 人事担当に「家族の介護が必要になった」と申し出て、使える制度を聞く
- 介護休暇を使うなら、最初の2週間以上の期間と、全体の指定期間を決める
- 共済組合に、介護休業手当金の手続きと、給料との調整を聞く
配偶者の転勤など、家族の事情で働き方を変える制度はほかにもあります。
配偶者の海外赴任、辞めずについて行ける?では、最長3年休める配偶者同行休業を扱っています。
介護が始まったときの整理シート
人事担当に相談する前に、分かるところだけ埋めてみてください。空いた欄が、そのまま相談で聞くことになります。
介護が必要な家族と、自分との関係
家族の状態と、それが続きそうな期間
いちばん時間が要る場面(退院直後・通院・送迎など)
使いたい休み(短期の休暇・介護休暇・介護時間)と、その理由
自分に当てはまるルール(国の規則か、自治体の条例か)
介護休暇の指定期間の初日と末日の案
共済組合に確かめること(手当金の手続き・給料との調整)
このページを印刷すると、この1枚だけが出ます。ブラウザの印刷からPDFとして保存することもできます。
❓ よくある質問
Q. 有休を使い切ってからでないと、介護休暇は取れませんか。
A. 取れます。
介護休暇・介護時間・短期の介護の休暇は、年次休暇とは別の休みとして法律と規則に並んでいます。
有休を残したまま使えます。
Q. 要介護認定を受けていないと対象になりませんか。
A. 国家公務員の条文の要件は、けがや病気、老齢で2週間以上日常生活に支障があることです。
要介護認定は要件に書かれていません。
ただし、事情を確かめるために証明書類を求められることはあります(規則29条2項)。
Q. 離れて暮らす祖母の介護でも使えますか。
A. 国家公務員なら使えます。
祖父母・孫・兄弟姉妹は、同居していなくても対象です。
Q. 介護休暇を6か月続けて取ることはできますか。
A. 指定期間を通算6か月の範囲で決め、その中で必要な期間を休む仕組みなので、続けて取ることもできます。
ただし給料はその分減り、共済の手当金も66日分までです。
Q. 介護時間を使うと、ボーナスや昇給に影響しますか。
A. この記事で扱った条文には、ボーナスや昇給への影響は書かれていません。
気になる場合は、使う前に人事担当に確かめてください。
Q. 上司に「今は忙しいから」と断られました。
A. 規則は、要件に当たる請求なら承認しなければならないとしています。
断れるのは公務の運営に支障がある日や時間だけです。
忙しさを理由に期間まるごと認めない、という形にはなっていません。
まずは人事担当に相談してみてください。
Q. 介護する家族が2人になったら、介護休暇も倍になりますか。
A. 介護休暇と介護時間は、家族1人ごと・介護が必要な状態ごとに数えます。
短期の介護の休暇は、2人以上なら1年に10日です。
Q. 市役所の職員です。
国と同じ6か月休めますか。
A. 条例しだいです。
法律は最低でも93日の休業を認めていて、新潟県のように国と同じ6か月としている例もあります。
自分の自治体の条例を例規集で確かめてください。
Q. この記事は、いつの時点の情報ですか。
A. 2026年9月15日に、e-Gov法令検索と新潟県の例規集で確認した内容です。
育児・介護休業法と共済組合法には未施行の改正がありますが、この記事で引いた条文の中身は変わらないことを確かめています。
まとめ
- 介護のための休みは有休とは別枠で3種類
- まとめて休む介護休暇は、国家公務員なら通算6か月・3回まで
- 毎日抜ける介護時間は1日2時間・3年間
- 急な付き添いには年5日の短期の休暇(給料は減らない)
- 介護休暇と介護時間は休んだ時間の分、給料が減る
- 日単位の介護休暇には、共済から67%の手当金が66日分まで
- 地方公務員は条例を確認。法律の最低ラインは93日
- 迷ったら、まず人事担当に申し出る。説明と意向確認が決まっている
✏️ 筆者から一言
介護は、子育てと違って始まりの日が選べません。
たいていは一本の電話から、準備のないまま始まります。
そのとき「辞めるか、無理をするか」の二択しか見えていないと、どちらを選んでも苦しくなります。
条文を読むと、半日だけ休む、毎日1時間だけ抜ける、といった中間の選択肢がきちんと用意されていました。
今は必要なくても、自分の職場の条例の場所だけは、一度確かめておいて損はありません。
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- 家族の事情で長く休む制度をもう一つ知りたいなら →「配偶者の海外赴任、辞めずについて行ける?」
- 公務員を続けることの「安定」を分解したいなら →「公務員を続けるメリット・デメリット」
- 休む期間とお金の関係を知りたいなら →「公務員の退職金、支給率だけでは決まらない?」
- 全体像から確かめたいなら →「公務員のキャリア形成完全ガイド」
📚 この記事で参照した一次情報
- e-Gov 法令検索|一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律
- e-Gov 法令検索|人事院規則一五―一四(職員の勤務時間、休日及び休暇)
- e-Gov 法令検索|人事院規則一〇―一一(育児又は介護を行う職員の早出遅出勤務並びに深夜勤務及び超過勤務の制限並びに意向確認等)
- e-Gov 法令検索|一般職の職員の給与に関する法律
- e-Gov 法令検索|国家公務員共済組合法
- e-Gov 法令検索|地方公務員等共済組合法
- e-Gov 法令検索|育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
- e-Gov 法令検索|地方公務員法
- 新潟県例規集|一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する条例
最終確認 2026年9月15日。
法令・制度の記述は、年に1度と制度改正のときに見直しています。

