公開 2026年9月10日
大学院で学び直したい。
青年海外協力隊に参加してみたい。
でも公務員は、辞めない限りそんな時間は取れない。
そう思い込んでいませんか。
実は、そうとも限りません。
籍を残したまま何年か休むための制度が用意されています。
「自己啓発等休業」という名前です。
ただし無給で、使える条件も細かく決まっています。
順番に見ていきましょう。
※本サイトでいう「公務員」には、独立行政法人・国立大学法人・日本銀行・日本年金機構等の職員(いわゆる準公務員)も含みます。
副業・兼業規定が国家公務員法・地方公務員法に準拠、または類似している職種を主な対象としています。
この記事では、自己啓発等休業のしくみを、国家公務員の自己啓発等休業に関する法律(以下「自己啓発等休業法」)や地方公務員法の条文で確かめます。
似た名前の別制度(教員の大学院修学休業)との違いにも触れます。
1つずつ、順を追って見ていきます。
⚠️ 先にお断りしておきます
自己啓発等休業は無給の休業です。
休んでいる間、給料は一切出ません。
また地方公務員の場合、実際に何年休めるかは自治体ごとの条例で決まり、法律だけでは分かりません。
利用を考えるときは、資金計画を立てたうえで、必ず自分の任命権者・人事担当に確認してください。
この記事の結論
📌 結論を先に
- 大学院などでの学び直しや、海外でのボランティア活動のために、身分を保ったまま休める制度がある(自己啓発等休業)
- 給料は出ない。ただし懲戒処分ではないので、クビになるわけではない
- 国家公務員は在職2年以上が条件。期間は学びなら原則2年(最長3年)、海外ボランティアは3年以内
- 地方公務員は「3年を超えない範囲で条例が定める期間」。詳しい年数は自治体ごとに違う
- 教員の大学院進学には別の専用制度があり、混同しやすいので注意が必要
自己啓発等休業とは、どんな制度か
この法律は、国家公務員に大学等で学ぶ機会や、海外でのボランティア活動に参加する機会を用意するために作られました(自己啓発等休業法1条)。
「自己啓発」という名前がついていますが、資格試験の勉強のような自由な自己研鑽のための休暇ではありません。
対象になるのは次の2つだけです。
| 対象になる活動 | 内容 |
|---|---|
| 大学等における修学 | 大学(専攻科・大学院を含む)や、これに相当する外国の大学の課程に在学して履修すること |
| 国際貢献活動 | JICA(国際協力機構)が行う派遣業務の対象になる海外での奉仕活動など、条文が指定するもの |
資格の取得や語学学校への通学など、この2つに当てはまらない学びは対象外です。
つまり、なんでも自由に休んで学べるわけではない、というところがポイントです。
誰が使えるか
対象になるのは、一般職の国家公務員です。
非常勤職員や臨時的に任用された職員などは除かれます(自己啓発等休業法2条1項)。
そのうえで、次の条件を満たす必要があります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 在職期間 | 2年以上(自己啓発等休業法3条1項) |
| 申請の形 | 職員からの請求が前提。会社の指示で行くものではない |
| 承認の基準 | 公務の運営に支障がないと任命権者が認めること |
在職1年目からいきなり使える制度ではない、という点は見落としやすいところです。
焦らず、まずは自分の在職期間を数えてみるところから始めてみましょう。
どのくらい休めるか
休める期間は、目的によって上限が違います。
| 目的 | 期間の上限 |
|---|---|
| 大学等での修学 | 原則2年。特に必要な場合は3年 |
| 国際貢献活動 | 3年以内 |
この上限の範囲内なら、期間を延ばすこともできます。
延長は1回限りで、当初の請求で認められた上限を超えることはできません(自己啓発等休業法4条)。
延長のたびに何度も申請し直せる制度ではない、と覚えておくと計画が立てやすくなります。
何年休むかは、あとから何度も変えられるものではないと思っておいたほうがよさそうです。
休んでいる間、身分や給料はどうなるか
休業中も、職員としての身分は保有したままです。
退職扱いにはなりません。
ただし、職務には従事しません(自己啓発等休業法5条1項)。
そして給与は一切支給されません(同条2項)。
休職とは名前も条文の位置も違う、独立した制度ですが、「働かず給料も出ない」という性質は休職に近いものです。
復帰したあとの号俸については、他の職員との釣り合いを取るために必要な範囲で調整できる仕組みがあります(同法7条)。
休んでいた分がそのまま丸ごと不利になるとは限りません。
ただし、どの程度調整されるかは個々の事情によって変わるため、復帰後の見込みを事前に人事担当へ聞いておくと、休業中の計画も立てやすくなります。
🔗 あわせて読みたい
退職手当が、支給率だけで決まるわけではないことも知っておくと、休業の影響を読み違えずに済みます。
→「公務員の退職金、支給率だけでは決まらない?「調整額」の仕組みを条文で確かめる」
退職手当の計算にはどう響くか
無給であること以外にも、気になるのが退職手当への影響です。
退職手当には、俸給や勤続年数から決まる基本額のほかに、職務の重さに応じて上乗せされる「調整額」という部分があります。
自己啓発等休業をしていた期間は、原則としてこの調整額の計算対象から外れます(自己啓発等休業法8条・国家公務員退職手当法6条の4)。
働いていない期間として扱われるためです。
ただし、修学や活動の内容が公務の能率的な運営に特に役立つと認められるなど、一定の条件を満たす場合は、その期間の半分の月数を計算に含められる特例もあります。
自分のケースがどちらに当たるかは条文だけでは判断しづらいので、利用を決める前に人事担当や共済組合の窓口へ確認するのが確実です。
細かい数字の話になるほど、自分だけで抱え込まず、早めに聞いてしまうほうが結局は早いものです。
地方公務員はどうなるか
ここまで見てきたのは国家公務員向けの法律です。
地方公務員には別の条文が根拠になります。
地方公務員法26条の5です。
仕組みの骨格は国とよく似ています。
任命権者が承認すれば、大学等での修学や国際貢献活動のために休業でき、無給で身分は保たれ、休職や停職を受けると承認が失効する点も同じです。
違うのは期間の決め方です。
国のように「学びなら2年、ボランティアなら3年」と法律で区分されているわけではありません。
「3年を超えない範囲内で、条例が定める期間」とだけ書かれています。
| 国家公務員 | 地方公務員 | |
|---|---|---|
| 根拠になる法律 | 自己啓発等休業法 | 地方公務員法26条の5 |
| 期間の決め方 | 法律が目的ごとに年数を規定 | 3年以内で条例が定める |
| 実際の年数を確認する方法 | 法律の条文を読む | 自分の自治体の条例・規則を読む |
つまり地方公務員の場合、実際に何年休めるかは自治体ごとに違う可能性があるということです。
正確な年数や手続きは、自分の自治体の条例で確かめる必要があります。
ここは見落としやすいところなので、気をつけておきたいところです。
自分の自治体の条例を確かめる手順は、次のとおりです。
- 自治体名と「職員の自己啓発等休業に関する条例」で検索し、例規集のページを開く
- 条例の中から、休業の期間の上限と対象になる活動を確認する
- 承認の申請先(人事課・職員課など)と、必要な書類を確認する
- 条文だけで判断がつかない場合は、担当窓口へ直接問い合わせる
具体例で確かめてみる
条文だけでは分かりにくいので、2つの例で確かめてみます。
Dさんの場合:国家公務員、在職5年で大学院へ
Dさんは在職5年の国家公務員です。
専門性を高めたいと考え、大学院の修士課程(2年)への進学を希望しています。
在職期間は条件(2年以上)を満たしているため、公務の運営に支障がないと任命権者が認めれば、自己啓発等休業の対象になります。
修学の期間が2年なら、法律が定める上限(原則2年)の範囲内に収まります。
在学中は無給になるため、Dさんは休業を申請する前に、2年分の生活費と学費をどう用意するかを検討しました。
Eさんの場合:地方公務員、海外ボランティアを希望
Eさんは地方公務員で、国際協力機構が行う海外でのボランティア活動への参加を希望しています。
地方公務員法26条の5には、国のような「国際貢献活動は3年以内」という具体的な年数の定めがありません。
そこでEさんは、自分の自治体の「職員の自己啓発等休業に関する条例」を確認しました。
その結果、条例上の上限年数と、承認までに必要な書類の種類が分かり、余裕を持って準備を進められました。
条文だけを読んで諦めず、自分の自治体の条例までたどり着くことが大切だと分かる例です。
自衛官はどうか
自衛官(防衛省の職員)にも、この法律がそのまま当てはめられます(自己啓発等休業法10条)。
ただし、いくつかの言葉が読み替えられます。
「人事院規則」は「政令」に変わり、承認する「任命権者」は、自衛隊法31条1項にもとづいて隊員の任免を行う権限を持つ人になります。
条文の作りが複雑なので、対象かどうかや手続きの詳細は、所属する部隊・機関の人事担当に確認するのが確実です。
自分で条文を読み解こうとして時間をかけすぎるより、先に聞いてしまうほうが早く済みます。
教員の「大学院修学休業」と混同しないこと
公立小中学校などの先生には、よく似た名前の別の制度があります。
大学院修学休業です。
根拠になる法律も違います(教育公務員特例法26条)。
大学院修学休業は、専修免許状の取得を目的とする場合にしか使えません。
自己啓発等休業のように、海外でのボランティアのために使うことはできません。
だれでも申請できるわけではなく、対象になる人も限られています(教育公務員特例法26条1項)。
| 自己啓発等休業 | 大学院修学休業 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 自己啓発等休業法・地公法26条の5 | 教育公務員特例法26条 |
| 対象の学び | 大学等での修学・国際貢献活動 | 専修免許状取得を目的とする大学院等の課程のみ |
| 対象になる人 | 在職2年以上の一般職の国家公務員(国の場合) | 教諭・養護教諭・講師など。条件付採用期間中の人や初任者研修を受けている人などは対象外 |
| 期間の上限 | 国は目的別に2〜3年。地方は条例次第 | 3年以内(年単位) |
| 給与 | 無給 | 無給 |
先生が国際貢献活動のために休みたい場合は、大学院修学休業ではなく地方公務員法26条の5のほうが候補になると考えられます。
どちらの制度に当てはまるかは、最終的に任命権者の判断になるため、早めに相談しておくと安心です。
使うときの手順
実際に検討するときは、次の順番で進めると整理しやすくなります。
- 取得したい免許や学びたい内容、参加したい活動の中身を固める
- 在職期間や対象になる活動かどうかなど、条件を満たすか確認する
- 休業したい期間の初日・末日と内容を明らかにして、任命権者へ請求する(自己啓発等休業法3条2項)
- 承認を受けたら休業を開始する。無給になるため、先に資金計画を立てておく
- 期間を延ばしたい場合は、末日を明らかにして延長を申請する(1回のみ)
- 復帰したら、号俸の調整があるかどうかを人事担当に確認する
自己啓発等休業を検討する前に確かめるリスト
申請の前に埋めておくと、あとから条件を満たしていないと気づくことを防げます。
やりたいのは「大学等での修学」か「国際貢献活動」か
在職期間は条件(国は2年以上)を満たしているか
休みたい期間は、上限(国は2〜3年、地方は条例次第)に収まっているか
無給になる期間の生活費・学費をどう用意するか
自分の自治体・機関では条例や訓令でどう定められているか
相談した日と、答えてくれた窓口
このページを印刷すると、この1枚だけが出ます。ブラウザの印刷からPDFとして保存することもできます。
❓ よくある質問
Q. 資格試験の勉強のためにも使えますか。
A. 使えません。
対象は大学等での修学と、国際貢献活動に限られています(自己啓発等休業法2条3項・4項)。
資格試験の勉強そのものは、この制度の対象外です。
Q. 休業中は本当に給料がゼロになりますか。
A. はい、支給されません(自己啓発等休業法5条2項)。
健康保険や年金などの扱いは別に定めがあるため、共済組合の窓口で確認しておくと安心です。
Q. 地方公務員も国と同じ2年・3年で休めますか。
A. 法律で年数が区分されているのは国家公務員だけです。
地方公務員法26条の5は「3年を超えない範囲内で条例が定める期間」としか定めていません。
実際の年数は自分の自治体の条例で確認してください。
Q. 休業の途中でやめたくなったらどうすればよいですか。
A. 修学や活動を取りやめたことなどが任命権者に伝われば、承認が取り消されます(自己啓発等休業法6条2項)。
早めに人事担当へ相談してください。
Q. 先生が大学院に行きたい場合も同じ制度ですか。
A. 別の制度です。
専修免許状の取得が目的なら、教育公務員特例法26条の大学院修学休業が対象になります。
国際貢献活動が目的なら、地方公務員法26条の5のほうが候補になると考えられます。
Q. 自衛官も使えますか。
A. 使えます。
自己啓発等休業法10条により、防衛省の職員にも読み替えつきで当てはめられます。
承認する側は自衛隊法31条1項にもとづく任免権者で、細かい取り扱いは所属する部隊・機関ごとに違いうるため、早めに人事担当へ相談しておくとよいでしょう。
Q. 休業中に転職活動をしてはいけませんか。
A. この法律には、転職活動そのものを禁じる規定はありません。
ただし身分を保有したまま休んでいる以上、服務や兼業に関する別のルールは引き続き及びます。
気になる場合は、事前に人事担当へ確認しておくと確実です。
Q. 育児休業と同じ制度ですか。
A. 違います。
育児休業は子の養育を理由にする休業で、根拠になる法律も期間中の手当の扱いも別です。
自己啓発等休業は大学等での修学と国際貢献活動に限られた、目的の狭い休業制度です。
Q. 休業から復帰したら、前と同じ職に戻れますか。
A. 地方公務員の場合、休業中も「開始したときに就いていた職、または休業中に異動した職」を保有したまま休むと条文に書かれています(地方公務員法26条の5第2項)。
ただし実際にどの職に配置するかは任命権者の判断によるため、復帰前に人事担当へ確認しておくと安心です。
まとめ
- 自己啓発等休業は、大学院などでの学びや海外ボランティアのために身分を残したまま休める制度
- 無給。国は在職2年以上が条件で、期間は学びなら原則2年(最長3年)、国際貢献活動は3年以内
- 地方公務員は条例が定める期間(3年以内)。詳しい年数は自治体ごとに確認する
- 教員には大学院修学休業という別制度があり、専修免許状取得が目的の場合に限られる
- 利用を考えるときは、資金計画と任命権者への相談を先に済ませておくのが確実
✏️ 筆者から一言
この記事を調べていて印象に残ったのは、「自己啓発等休業」という名前から受ける印象と、実際の中身のギャップです。
名前だけ聞くと資格取得のための休暇のようですが、条文を読むと対象は大学院や海外ボランティアに絞られていて、むしろ狭く作られた制度でした。
名前の印象で「使えなさそう」「よく分からない」と検討すらしない人も多いのではないかと思います。
条文まで確かめると、意外と現実的な選択肢が見えてくることがあります。
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📚 この記事で参照した一次情報
最終確認 2026年9月10日。
法令・制度の記述は、年に1度と制度改正のときに見直しています。

