公開 2026年9月6日
図書館のカウンター、学童保育、給食の調理。
こうした仕事の多くは、いま「会計年度任用職員」という肩書きで募集されています。
週に数日、決まった時間だけ働く、パートタイムの形が多い職です。
この働き方をしていると、こんな疑問が浮かびます。
「空いている日に、別の仕事もしたい。でも公務員って副業できないんじゃなかったっけ」。
結論から言うと、パートタイムなら、多くの場合は許可すら要りません。
ただし条件があります。
フルタイムだと扱いが変わりますし、名前が似ている別の職員と混同しやすい落とし穴もあります。
※本サイトでいう「公務員」には、独立行政法人・国立大学法人・日本銀行・日本年金機構等の職員(いわゆる準公務員)も含みます。
副業・兼業規定が国家公務員法・地方公務員法に準拠、または類似している職種を主な対象としています。
この記事では、どこまでが許可不要で、どこからが許可必要なのかを、条文と総務省の通知で確かめます。
⚠️ 先にお断りしておきます
この記事が扱うのは、地方公務員法上の会計年度任用職員です。
国の非常勤職員や、特別職として任用されている非常勤の委員・嘱託は根拠になる条文が違います。
自分の任用がどちらかは、辞令か任用通知書の書き方で確かめてください。
この記事の結論
📌 結論を先に
- パートタイムの会計年度任用職員は営利企業への従事等の制限(兼業許可)の対象外。許可なしで副業できる(地方公務員法38条1項ただし書き、22条の2第1項1号)
- フルタイムの会計年度任用職員は対象。許可が必要(22条の2第1項2号)
- 名前が紛らわしい「短時間勤務の職を占める職員」(定年前再任用短時間勤務職員)は、勤務時間が短くても許可が必要。パートの会計年度任用職員とは別枠
- 許可が要らなくても、職務専念義務と信用失墜行為の禁止は適用されたまま。求められれば副業の内容を報告することもある
- 掛け持ち先との勤務時間は通算される(労働基準法38条1項)。合計が法定労働時間を超えると、割増賃金の話が出てくる
全国に66万人。9割がパートタイム
この話が関係する人は、実は少なくありません。
総務省が毎年公表している調査によると、令和6年4月時点の会計年度任用職員は全国で66万1,368人。
そのうち89.1%にあたる58万9,338人がパートタイムで、フルタイムは10.9%にとどまります。
職種の内訳を見ると、冒頭で挙げた仕事がそのまま並びます。
| 職種 | 人数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 一般事務職員 | 215,422人 | 32.6% |
| 技能労務職員(給食調理員など) | 90,999人 | 13.8% |
| 保育所保育士 | 56,347人 | 8.5% |
| 図書館職員 | 18,430人 | 2.8% |
| 放課後児童支援員(学童保育など) | 18,038人 | 2.7% |
会計年度任用職員のうち女性が占める割合は75.8%です。
パートタイムで、生活費の一部を自分の仕事で賄っている人が多い働き方だと分かります。
だからこそ、副業を一律に禁止しない制度設計になっているとも言えます。
団体区分で見ると、市区が38.3万人(57.9%)でいちばん多く、次いで都道府県が11.3万人(17.0%)、町村が8.4万人(12.7%)と続きます。
多くの人にとって、これは遠い制度の話ではなく、自分か、同じ職場の同僚が当てはまる話です。
そもそも会計年度任用職員とは、どういう区分か
2020年度に地方公務員法が変わり、それまで自治体ごとにばらばらだった非常勤の職員の任用が「会計年度任用職員」という1つの区分に整理されました。
名前のとおり、1会計年度を超えない範囲で置かれる非常勤の職です(地方公務員法22条の2第1項)。
この区分の中は、さらに2つに分かれます。
分かれ目は1週間あたりの勤務時間です。
| パートタイム | フルタイム | |
|---|---|---|
| 根拠 | 22条の2第1項1号 | 22条の2第1項2号 |
| 1週間の勤務時間 | 常勤職員より短い | 常勤職員と同じ |
| 身分 | 一般職の地方公務員 | 一般職の地方公務員 |
| 採用の方法 | 競争試験または選考 | 競争試験または選考 |
| 任期 | 採用の日から年度末まで(更新あり) | 同左 |
身分も採用の方法も同じです。
違うのは勤務時間の長さだけですが、この違いが副業の扱いを分けます。
副業の許可がいるかどうかは、ここで分かれる
公務員の副業を縛っているのは、地方公務員法38条1項です。
本文はこう書かれています。
「任命権者の許可を受けなければ、営利企業を営む会社の役員を兼ね、自ら営利企業を営み、または報酬を得ていかなる事業や事務にも従事してはならない」(要約)。
これだけ読むと、全職員が対象に見えます。
ところが同じ38条1項にただし書きがあり、そこにこう書かれています。
「ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び22条の2第1項2号に掲げる職員を除く)については、この限りでない」。
読み解くと、こうなります。
非常勤職員は原則、許可が要りません。
ただし2種類だけ、この「原則不要」から外され、許可が必要な側に戻されます。
1つはフルタイムの会計年度任用職員(22条の2第1項2号)。
もう1つは、次の節で説明する「短時間勤務の職を占める職員」です。
| 立場 | 許可は必要か | 根拠 |
|---|---|---|
| パートタイムの会計年度任用職員 | 不要 | 38条1項ただし書き |
| フルタイムの会計年度任用職員 | 必要 | 38条1項本文(ただし書きの除外) |
| 短時間勤務の職を占める職員 | 必要 | 38条1項本文(ただし書きの除外) |
| 常勤の一般職員 | 必要 | 38条1項本文 |
紛らわしい「短時間勤務の職を占める職員」
表の3行目、「短時間勤務の職を占める職員」という言葉に気をつけてください。
言葉だけ見ると、パートタイムの会計年度任用職員のことのように読めます。
しかし地方公務員法での定義は違います。
これは60歳の定年後に短い時間で再び任用される職員、いわゆる定年前再任用短時間勤務職員のことです(22条の4第1項)。
つまり、勤務時間が短いという共通点はあっても、パートの会計年度任用職員とは別の制度です。
定年前再任用短時間勤務職員は、勤務時間が短くても許可が必要な側に入ります。
「短時間だから許可はいらない」という思い込みで進めると、ここで外れます。
なぜパートタイムだけ、許可がいらないのか
理由は条文には書かれていません。
総務省が自治体向けに出している「会計年度任用職員制度の運用に係る事務処理マニュアル」に説明があります。
マニュアルの服務・懲戒の章にある問7-1は、まさにこの質問を扱っています。
「パートタイムの会計年度任用職員について、営利企業への従事等の制限の対象外とした理由は何か」。
答えはこうです。
「勤務時間が限られており、極めて短い時間のみ公務に従事する場合があり得ること、また、これらの職員の生計の安定、多様な働く機会の確保のためにも、柔軟な対応が必要であること等から、一律に制限はしないこととしたものである」。
短い勤務時間だけでは生活が成り立ちにくいから、ほかの仕事と組み合わせる自由を制度として認めている、という考え方です。
許可がいらなくても、消えない3つの決まりごと
ここが見落とされがちなところです。
許可が不要になっても、副業が無条件で自由になるわけではありません。
① 職務専念義務と信用失墜行為の禁止は残る
会計年度任用職員には、地方公務員法33条(信用失墜行為の禁止)と35条(職務専念義務)が、パートかフルタイムかを問わずそのまま適用されます。
マニュアルも「職務専念義務や信用失墜行為の禁止等の服務規律が適用となることに留意」と念を押したうえで、自治体が副業を一律に禁止することは適切でないとしつつ、職務に支障が出るほどの長時間労働をしないよう指導することは考えられる、としています。
許可制でなくても、野放しではないということです。
たとえば、勤務先の自治体が発注する仕事を、副業として個人的に請け負うようなケースを考えてみてください。
許可がいらないとしても、これは職務の公正さを疑われる典型的な場面です。
信用失墜行為の禁止は、こうした利益相反そのものを止める役割を持っています。
「許可はいらないが、何でも通る」わけではないと考えたほうが安全です。
② 勤務時間は掛け持ち先と通算される
労働基準法38条1項は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めています。
会計年度任用職員として働く時間と、副業先で働く時間は、合算して数えられます。
合計が法定労働時間を超えると、後から労働契約を結んだ側の使用者が、労働基準法37条の割増賃金を支払う扱いになります。
自治体の仕事を先に始めていた人が新しく副業を始めるなら、超えた分の割増賃金を副業先が負うのが一般的な整理です。
逆に、すでにほかの仕事をしている人を会計年度任用職員として採用する場合は、自治体の側が時間外勤務手当に相当する報酬を払う必要が出てきます。
たとえば、自治体の仕事が週30時間、あとから始めた副業が週15時間なら、合計は週45時間になります。
法定労働時間の週40時間を5時間超えるので、その5時間分は、あとから契約した副業先が割増賃金を払う計算になります。
掛け持ちを始める前に、双方の勤務時間を合計しておくと、後になって職場と揉めずに済みます。
③ 報告を求められることがある
許可制でなくても、職務の公正を保つ目的で、副業の内容を任命権者へ報告するよう求められる場合があります。
これは自治体ごとの運用によるので、パートで働き始める段階で人事担当に確認しておくと安心です。
🔗 あわせて読みたい
フルタイムで公立の小中学校に勤めている方は、許可を出す相手が少し入り組んでいます。
→「公立小中学校の先生の副業許可は誰が出す?地公法38条と地教行法の読み替えを条文で確かめる」
自分の自治体で確かめる手順
ここまでは制度の一般論です。
実際に動く前に、自分の自治体ではどうなっているかを確かめる手順を書きます。
- 任用通知書か辞令を確認し、パートタイムかフルタイムかを見る(勤務時間が常勤職員と同じなら、それはフルタイムの会計年度任用職員)
- パートタイムなら、まず地方公務員法38条1項のただし書きが適用されることを確認する
- そのうえで、副業について報告を求める運用がないか、人事課か服務担当に確認する
- 掛け持ち先が決まっている場合は、両方の勤務時間の合計を出し、法定労働時間を超えないか確かめる
- フルタイムで採用されていて副業をしたい場合は、常勤職員と同じ手順で任命権者の許可を申請する
- 確認した内容は、口頭だけで終わらせず、メールなど後で見返せる形で残しておく
確かめることリスト
自分の働き方と、いま考えている副業の組み合わせを、順番に書き出してみてください。
自分はパートタイムか、フルタイムか(任用通知書のどこで確認したか)
パートタイムの場合、報告を求める運用が自治体にあるか
副業先の勤務時間は1週間あたり何時間か
自治体の勤務時間と副業先の勤務時間を合計すると、何時間になるか
法定労働時間(週40時間が原則)を超えていないか
フルタイムで許可が必要な場合、申請先と提出書類は何か
このページを印刷すると、この1枚だけが出ます。ブラウザの印刷からPDFとして保存することもできます。
❓ よくある質問
Q. パートタイムの会計年度任用職員なら、どんな副業でも自由にできますか。
A. 許可は不要ですが、無条件ではありません。
職務専念義務と信用失墜行為の禁止は適用されたままです。
自治体の仕事に支障が出るような働き方は、指導の対象になり得ます。
Q. フルタイムの会計年度任用職員です。
副業の許可は誰に申請しますか。
A. 常勤の一般職員と同じ扱いで、任命権者に申請します。
許可の基準は人事委員会規則か、人事委員会を置かない自治体では地方公共団体の規則で定められています(38条2項)。
窓口は人事課か服務担当課になるのが一般的です。
Q. 定年前再任用短時間勤務職員です。
勤務時間は短いのに、なぜ許可が必要なのですか。
A. 短時間勤務の職を占める職員は、地方公務員法38条1項ただし書きの除外対象に名指しで入っているためです。
勤務時間の長さではなく、この職員区分に当たるかどうかで決まります。
Q. 副業の勤務時間が合計で週40時間を超えたら、何が変わりますか。
A. 超えた分について、時間的に後から労働契約を結んだ側が割増賃金を支払う扱いになります(労働基準法37条・38条1項)。
どちらが後からの契約かは、実際の勤務開始日で決まります。
Q. 会計年度任用職員は、いつからある制度ですか。
A. 2020年度(令和2年度)からです。
平成29年の地方公務員法・地方自治法の改正で新しく設けられ、それまで自治体ごとにばらばらだった非常勤職員の任用が、この区分に整理されました。
まだ歴史の浅い制度なので、運用が自治体によって固まりきっていない部分もあります。
Q. 会計年度任用職員でも、特別職の非常勤なら話は変わりますか。
A. 変わります。
この記事が扱っているのは一般職の会計年度任用職員です。
特別職として任用されている非常勤の委員や嘱託には、地方公務員法の服務規定そのものが適用されない場合があります。
自分の任用区分は、辞令の記載で確かめてください。
まとめ
- パートタイムの会計年度任用職員は副業の許可が不要(地方公務員法38条1項ただし書き)
- フルタイムの会計年度任用職員は許可が必要
- 「短時間勤務の職を占める職員」(定年前再任用短時間勤務職員)は、短時間でも許可が必要な別の職員区分
- 許可が不要でも職務専念義務と信用失墜行為の禁止は残る
- 掛け持ち先との勤務時間は通算され、割増賃金の対象になり得る
✏️ 筆者から一言
「非常勤だから副業は自由」という説明を、これまで何度か見かけました。
半分は合っていますが、半分は足りません。
同じ非常勤でも、勤務時間の長さと職員区分の名前によって、許可の要不要がきれいに分かれています。
そして許可がいらないことと、何をしてもいいことは別問題です。
職務専念義務は、パートで週2日働く人にも同じ重さでのしかかります。
制度を有利に使うためにこそ、境界線を正確に知っておく必要があります。
働き方が多様になった分だけ、確かめる手間も少しだけ増えたということです。
📖 次に読みたい記事
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📚 この記事で参照した一次情報
- e-Gov 法令検索|地方公務員法
- e-Gov 法令検索|労働基準法
- 総務省|会計年度任用職員制度の運用に係る事務処理マニュアル(令和8年3月版)
- 総務省|令和6年度 会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査結果(任用件数等)
- 厚生労働省|副業・兼業の促進に関するガイドライン
最終確認 2026年9月6日。
法令・制度の記述は、年に1度と制度改正のときに見直しています。

