公務員が予備自衛官を兼ねるには?予備自衛官等兼業特例法を条文で読む

公務員が予備自衛官を兼ねるには?予備自衛官等兼業特例法を条文で読む のアイキャッチ画像 公務員の副業・兼業

公開 2026年9月5日

役所や消防で働きながら、予備自衛官もやっている。
そういう人が、いま少しずつ増えています。

ただ、この掛け持ちには面倒な点がありました。
職場に兼業の許可をもらって、そのうえで訓練のたびに「この日は休みます」とまた別の手続きを踏む。
訓練は年に5日あります。
続けるほど、手間が積み上がっていく形でした。

その手間を減らす法律が、2026年6月17日にできました。
ただし、まだ動き出していません。
いまの手続きは、これまでどおりです。

※本サイトでいう「公務員」には、独立行政法人・国立大学法人・日本銀行・日本年金機構等の職員(いわゆる準公務員)も含みます。
副業・兼業規定が国家公務員法・地方公務員法に準拠、または類似している職種を主な対象としています。

この記事では、何がどう変わるのかを条文で確かめます。
とくに給与の話は、報道の書き方と条文の書き方が食い違っています。
そこは丁寧に見ていきます。

⚠️ 先にお断りしておきます

いつから始まるかは、これから政令で決まります。
その政令は、この記事を書いた時点では見つかりませんでした。
実際に手続きをするときは、必ず職場の人事担当に確かめてください。

この記事の結論

📌 結論を先に

  • 法律はできたが、まだ始まっていない。始まる日は、公布から1年以内に政令が決める
  • 変わるのは3つ。承認を入口で1回取れば済む、訓練で抜ける時間は職場を離れてよくなる、そして兼業の許可がいらなくなる
  • 誰に承認をもらうかは立場で違う。国家公務員なら所轄庁の長、地方公務員なら任命権者、自衛隊の職員なら防衛大臣
  • 給料が減ると書いてあるのは実任務の招集のときだけ。訓練で抜けるときは、減らすとは書かれていない
  • 地方公務員の給料について、この法律は何も決めていない。そこは自治体の条例しだいで残る

そもそも、なぜこんな法律ができたのか

人が足りていないからです。

予備自衛官は、ふだんは別の仕事をしていて、必要なときに招集される人たちです。
その人数が定員に届いていません。
参議院事務局が出している『立法と調査』484号に、防衛省の資料をもとにした数字が載っています。

令和6年度平成27年度
予備自衛官66.3%68.0%
即応予備自衛官48.4%55.9%
予備自衛官補65.6%65.2%

即応予備自衛官は、10年で7ポイント以上も下がりました。
予備自衛官補は前の年から9ポイント上がっていて、同じ資料は「改善の傾向に転じた」と見ています。
それでも、どれも定員には届いていません。

そこで2024年12月に、政府が方針を決めます。
「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針」という長い名前のものです。
その中に、公務員が予備自衛官を兼ねる場合も、訓練に参加しやすくするという一行が入りました。
今回の法律は、その約束を形にしたものです。

予備自衛官って、どういう立場なのか

ひとくちに予備自衛官といっても、3種類あります。
予備自衛官と即応予備自衛官は、自衛官を経験した人が対象です。
予備自衛官補は、経験がない人でもなれます。

そして、なった人の身分は非常勤の特別職国家公務員になります。

ここが、話をややこしくしている原因です。
市役所の職員が予備自衛官になると、地方公務員でありながら、同時に国家公務員でもあるという状態になります。
だから兼業の手続きが必要になるわけです。

3種類のちがい

『立法と調査』484号に載っている数字を並べます。
人数は2025年3月31日時点、手当は2026年4月時点のものです。

予備自衛官即応予備自衛官
現員31,744人3,859人
訓練日数年5日で運用年30日
手当(月額)13,100円19,700円
訓練に出た日の手当1日11,600円1日18,200円〜27,200円
3年勤めた場合の報奨金70,000円215,000円

予備自衛官の訓練は、法律の上では年20日まで認められています(自衛隊法71条3項)。
実際の運用が年5日ということです。

「招集」にも種類がある

ここは覚えておいてください。
あとで給与の話に効いてきます。

呼び方どんなときこの法律での扱い
招集命令災害や有事など、実際の任務のとき職場を離れてよい/給与は減る
訓練招集命令毎年の訓練のとき職場を離れてよい/減らすとは書かれていない
教育訓練招集命令予備自衛官補が受ける教育訓練のとき職場を離れてよい/減らすとは書かれていない

実任務の招集を受けると、予備自衛官はその場で自衛官になります。
駐屯地の警備、後方支援、住民の救護や誘導、災害救助などにあたります。

変わるのは、この3つ

① 承認は、入口で1回でよくなる

これがいちばん大きい変更です。

いまは、兼ねること自体の許可と、訓練で休むときの手続きが別々です。
新しい法律では、予備自衛官になるときに1回承認をもらえば、そのあとの招集に応じることまで含まれます。
承認の対象に「招集に応じること」が入ると、はっきり書かれているからです(新法3条1項)。

承認をもらえる場面は4つあります。

  1. 予備自衛官補になろうとするとき(自衛隊法35条)
  2. 予備自衛官・即応予備自衛官になろうとするとき(自衛隊法67条1項)
  3. 任期が来て、続けて務めようとするとき(自衛隊法68条2項)
  4. そのほか、内閣官房令と防衛省令が決める場面

② 訓練で抜ける時間は、職場を離れてよくなる

公務員には、勤務時間は仕事に専念する義務があります。
国家公務員なら国公法101条1項、地方公務員なら地公法35条です。

承認をもらった人が招集で職場にいない時間は、この義務がかからなくなります(新法3条3項・6条3項)。
自衛隊の職員なら、自衛隊法60条1項が外れます。

ひとつ気をつけたい点があります。
外れるのは招集で抜けている時間だけです。
承認をもらったら勤務時間中は何をしてもいい、という話ではありません。

③ 兼業の許可が、別にいらなくなる

いま兼業の許可を出しているのは、国家公務員なら国公法104条、地方公務員なら地公法38条1項です。

承認をもらった人が予備自衛官として動くことについては、この許可がいらなくなります(新法3条4項・6条4項)。
自衛隊の職員なら、自衛隊法63条の承認がいらなくなります。

承認が許可を吸収する形です。
二重の手続きが1本になります。

ただし、いらなくなるのは予備自衛官についての許可だけです。
ほかに副業をしたいなら、これまでどおり許可が必要になります。

給料はどうなるのか|ここが誤解されやすい

報道や広報では「給与は減らない」という言い方をよく見かけます。
でも、条文の書き方は逆向きです。

条文が書いているのは減らすほうです。

承認をもらった人が実任務の招集で職場を離れた場合、抜けた1時間ごとに、その分の給与を減らして払う、と書かれています(新法3条5項)。

そして訓練で抜けた場合については、減らすという規定が置かれていません。
職場を離れてよいという扱いは3種類とも同じですが、減額の話が出てくるのは実任務の招集だけです。

この読み方でいいのかは、参議院事務局の解説で確かめられます。
『立法と調査』484号は、この部分に注を付けて「訓練招集命令又は教育訓練招集命令に応ずるため勤務しない場合には給与は減額されない」と書いています。

つまり、こういう切り分けです。

抜ける理由本務の給与
実任務の招集抜けた時間分だけ減る
毎年の訓練減らすとは書かれていない
予備自衛官補の教育訓練減らすとは書かれていない

予備自衛官の訓練は年5日、即応予備自衛官なら年30日あります。
そのたびに給料が減るなら、続ける人はいなくなります。
そう考えると、この切り分けは筋が通っています。

なお、行政執行法人で働く人の給与は、法人が自分で基準を決めます。
決めたら主務大臣に届け出て、公表することになっています(新法3条6項・7項)。
自衛隊の職員については、政令で決まります(新法5条2項)。

そして地方公務員の給料について、この法律は何も書いていません。
地方公務員の給料は条例で決めるものだからです。
自分の自治体がどう決めるのかは、始まるまでに確かめておく必要があります。

🔗 あわせて読みたい

予備自衛官ではなく、いま現役の自衛官として副業を考えている方は、使う条文も、承認する人も違います。
→「自衛官の副業・兼業は誰が認める?自衛隊法62条・63条の承認手続きを条文で確かめる」

自分がどれに当たるかを見る

立場によって、根拠になる条文も、承認をもらう相手も変わります。
まず自分がどこかを確かめてください。

立場根拠(新法)承認をもらう相手
国の府省の職員3条1項所轄庁の長
行政執行法人の職員3条2項勤務先の法人の長
裁判所の職員4条所轄庁の長(最高裁判所規則による)
自衛隊の職員5条防衛大臣
自治体・消防の職員6条1項任命権者(委任を受けた人を含む)
特定地方独立行政法人の職員6条2項理事長またはその委任を受けた人

地方公務員には、国家公務員にない枠がひとつあります。
上の4つの場面に加えて、任命権者が決めた場面でも承認をもらえる、という枠です(新法6条1項2号)。

裏を返すと、自治体ごとに運用が分かれます。
隣の市では認められることが、自分の市では違う。
そういうことが起こり得ます。

対象にならない人もいる

非常勤の働き方だと、対象から外れる場合があります。

働き方(地方公務員)この法律の対象か
常勤の職員対象
短時間勤務の職を占める職員対象
会計年度任用職員(フルタイム)対象
会計年度任用職員(パートタイム)対象外

そもそも兼業の許可がいらない人は、この法律の承認もいらない。
そういう整理です(地公法38条1項の但し書きに当たる非常勤職員が外れます)。

国家公務員の場合は、臨時的に採用された職員が外れます。
短時間勤務の職員は対象に入ります。
自分がどれに当たるかは、辞令と任用の根拠で確かめてください。

いま何ができて、何ができないか

この記事を書いている2026年9月5日の時点で、この法律はまだ始まっていません。
手続きはこれまでどおりです。

いま始まったあと
兼ねるための手続き国公法104条か地公法38条1項の許可がいる新法の承認1本になる
訓練で休むときそのつど職務専念義務の免除がいる承認の効果で、その時間は義務が外れる
訓練で抜けた分の給与それぞれの制度によるこの法律に減らすという定めはない

始まる日を、自分で確かめる方法

この記事が古くなっていないかは、読んだ人が自分で確かめられます。
手順を書いておきます。

  1. e-Gov 法令検索でこの法律のページを開く(下の出典にリンクがあります)
  2. ページの上に出ている「未施行」の表示が消えているかを見る
  3. 消えていれば施行日が入っているので、その日付を確かめる
  4. そのうえで、職場の内部規程が整っているかを人事担当に聞く

ひとつ注意です。
法律が始まっても、申請の書き方や運用は、内閣官房令・防衛省令や自治体の規則が決めます。
法律が始まる日と、実際に手続きができる日は、同じとは限りません。

確かめることリスト

始まる前のいまのうちに埋めておくと、あとで動きやすくなります。どれも職場の人事担当に聞けば分かるものです。

自分の働き方はどれか(常勤/短時間勤務/会計年度任用のフルタイム・パートタイム)

上の表でいうと、自分はどの行に当たるか

承認をもらう相手は誰か(所轄庁の長/任命権者/理事長/防衛大臣)

職場で、始まったときの内部規程の検討は動いているか。担当はどこか

地方公務員の場合、招集で抜けた時間の給与を条例のどこで決めるか

いま予備自衛官の人は、いまの許可・承認がいつまで有効か

このページを印刷すると、この1枚だけが出ます。ブラウザの印刷からPDFとして保存することもできます。

「国民の関心を深める」という条文もある

この法律には、国がやることも書かれています。
広報や啓発を通じて、予備自衛官の仕事の大切さを国民に知ってもらうよう努める、という内容です(新法7条)。

なぜこんな条文が入ったのか。
数字を見ると見当がつきます。

『立法と調査』484号によると、予備自衛官のうち公務員が占める割合は4.3%です(2024年度末)。
即応予備自衛官なら1.2%、予備自衛官補なら2.9%にとどまります。

同じ資料は、公務員の兼業が倍になっても充足率は大きく変わらない、民間企業にどこまで広がるかが鍵になる、という見方を示しています。

つまり、この法律が直接ねらっているのは公務員です。
でも本当に見ているのは、民間企業のほうだということです。

❓ よくある質問

Q. この法律で、公務員の副業が広く認められるようになったのですか。

A. いいえ。
この法律が扱っているのは予備自衛官の仕事だけです。
兼業の許可がいらなくなるのも、その範囲に限られます。
ほかの副業の扱いは、何も変わりません。

Q. いま予備自衛官をしています。
手続きをやり直す必要がありますか。

A. いまの時点では、新しくすることはありません。
始まったあとの扱いは、内閣官房令・防衛省令や自治体の規則で決まります。
職場の人事担当に確かめてください。

Q. 訓練で休んだ分の給料は、本当に減らないのですか。

A. 条文には、訓練で抜けた場合の減額規定が置かれていません。
減らすと書いてあるのは実任務の招集についてだけで、参議院事務局の解説も同じ読み方をしています。
ただし地方公務員は、この法律に給与の定めがなく、自治体の条例によります。
そこは言い切れません。

Q. 会計年度任用職員でも対象になりますか。

A. フルタイムなら対象、パートタイムなら対象外です。
国家公務員の場合は、臨時的に採用された職員が外れ、短時間勤務の職員は入ります。

Q. 予備自衛官になると、職場の給料とは別に手当がもらえるのですか。

A. もらえます。
予備自衛官なら手当が月13,100円、訓練に出た日は1日11,600円、3年勤めれば報奨金が70,000円です(2026年4月時点。即応予備自衛官は別の額)。
職場の給料との関係は、上の「給料はどうなるのか」で書いたとおりです。

Q. この記事は、いつの時点の情報ですか。

A. 2026年9月5日に、e-Gov 法令検索と衆議院の議案本文で確かめた内容です。
公布は2026年6月17日、令和8年法律第40号です。

まとめ

  1. 法律はできたが、2026年9月5日の時点でまだ始まっていない
  2. 変わるのは承認が1本になる・訓練で職場を離れてよくなる・兼業の許可がいらなくなるの3つ
  3. 承認をもらう相手は立場で違う。所轄庁の長/任命権者/防衛大臣
  4. 給料が減ると書いてあるのは実任務の招集のときだけ
  5. 地方公務員の給料は、この法律ではなく自治体の条例しだいで残る
  6. パートタイムの会計年度任用職員は対象外

✏️ 筆者から一言

制度が変わるとき、いちばん危ないのは「変わったらしい」で動くことです。
この法律も、広報を読むと「給与は減らない」と書いてあります。
でも条文を開くと、減らさないと書いてあるのではありません。
減らす場合が、限って書いてあるだけでした。
結論は同じでも、向きが違えば当てはまらない場面が出てきます。
条文を1回開くだけで、この差は自分で確かめられます。

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最終確認 2026年9月5日。
法令・制度の記述は、年に1度と制度改正のときに見直しています。

この記事を書いた人

公務員UPDATE 運営者。元公務員(警察官)。交番勤務・自動車警ら係・刑事・生活安全を経験し、現在は独立して事業を営んでいます。記事では、在職中の経験か退職後の経験かを必ず区別して書いています。

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