「公務員は副業禁止」とよく言われます。
しかし条文を読むと、書かれているのは「禁止」ではなく制限です。
そして制限には、許可や承認を受ければ認められる範囲と、そもそも許可がいらない範囲があります。
※本サイトでいう「公務員」には、独立行政法人・国立大学法人・日本銀行・日本年金機構等の職員(いわゆる準公務員)も含みます。
副業・兼業規定が国家公務員法・地方公務員法に準拠、または類似している職種を主な対象としています。
この記事では、根拠となる条文と公的資料にあたりながら、どこまでが許可不要で、どこからが手続きを要するのかを整理します。
2026年4月に施行された制度の見直しについても扱います。
⚠️ 先にお断りしておきます
この記事は制度の全体像です。
実際に何が認められるかは、どの系統の職員か(国家公務員・地方公務員・特別職)、どの自治体か、どの法人かで変わります。
行動の前に、所属庁・所属法人の人事担当に必ず確認してください。
この記事の結論
📌 結論を先に
- 条文が定めているのは「禁止」ではなく制限と許可制。許可がいらない範囲も存在する
- 出発点は身分で変わる。国家公務員は国公法103条・104条、地方公務員は地公法38条、自衛官は自衛隊法62条・63条
- 2026年4月に自営兼業制度が見直され、承認が必要になる規模の基準が緩和された
- 家族の名義にして実質は自分が営む、という発想は絶対に取らないこと。問題が制度違反から別の次元へ広がる
前提|「副業禁止」という言い方が誤解を生んでいる
まず言葉を整理します。
「副業禁止」という表現は条文には出てきません。
規定されているのは、営利企業の役員を兼ねること、自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業や事務に従事することを許可なしには行えないという制限です。
この違いは実務上大きい。
「禁止」なら考える余地はありませんが、「許可制」なら、①許可を取れば認められる、②そもそも許可が不要な範囲がある、という2つの道があります。
諦める人が多いのは、②を知らないからです。
根拠となる条文を確認する
兼業の根拠は、身分で3つに分かれる
同じ職名でも勤務先で変わる。まず自分がどれかを確かめる
国の府省の職員
国公法103条・104条 → 人事院・所轄庁の長
自治体の一般行政職・消防、警察官、公立学校の教職員
地公法38条 → 任命権者(市町村立学校は市町村教委)
自衛官を含む防衛省の職員
自衛隊法62条・63条 → 防衛大臣
独立行政法人などの職員は、この3つのどれにも当たらない。
国家公務員の場合
国家公務員法の第103条は「私企業からの隔離」を、第104条は「他の事業又は事務の関与制限」を定めています。
103条は営利企業の役員等を兼ねることや自ら営利企業を営むことを、104条は報酬を得て事業や事務に従事することを、それぞれ制限しています。
どの規模から承認が必要かを定めるのが、人事院規則14―8と、その運用の通知です。
地方公務員の場合
地方公務員法の第38条が「営利企業への従事等の制限」を定めており、任命権者の許可を受けなければ、営利企業の役員を兼ねること、自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業や事務に従事することができません。
ここで重要なのは、許可の具体的な基準が、各自治体の規則で定められているという点です。
隣の県では認められることが自分の県では認められない、ということが制度上あり得ます。
国の基準はそのまま当てはまるとは限りません。
自衛官の場合
自衛官を含む防衛省の職員は、国家公務員のうち特別職に当たります(国家公務員法2条3項16号)。
同じ条文が、この法律の規定は特別職には適用しないと定めているため、103条・104条は自衛官には適用されません。
代わりに置かれているのが自衛隊法62条(私企業からの隔離)と63条(他の職又は事業の関与制限)です。
制限と承認という構造は似ていますが、承認を出すのは防衛大臣で、基準は防衛省令で定められます(62条は委任を受けた者による承認も認めています)。
自分がどの系統かを確かめる
どの系統かは職種で決まります。
同じ職名でも、階級や勤務先で系統が変わることがあります。
| 職種 | 身分 | 兼業の根拠 | 許可・承認を出す先 |
|---|---|---|---|
| 国の府省の職員 | 一般職の国家公務員 | 国公法103条・104条 | 人事院・所轄庁の長 |
| 自治体の一般行政職・消防職員 | 地方公務員 | 地公法38条 | 任命権者 |
| 警察官(都道府県警察) | 地方公務員 | 地公法38条 | 任命権者 |
| 市町村立学校の教職員(県費負担教職員) | 地方公務員 | 地公法38条 | 市町村教育委員会 |
| 都道府県立学校の教職員 | 地方公務員 | 地公法38条 | 任命権者(都道府県教育委員会) |
| 自衛官(防衛省の職員) | 国家公務員の特別職 | 自衛隊法62条・63条 | 防衛大臣 |
| 独立行政法人などの職員 | 公務員ではない | 所属法人の規程 | 法人の定めによる |
市町村立学校の教職員は、任命権が都道府県教育委員会にあっても、地公法38条の「任命権者」は市町村教育委員会と読み替えられます(地方教育行政の組織及び運営に関する法律37条1項・47条1項)。
許可を求める先は、任命権者と同じとは限りません。
許可・承認がなくてもできること
一般に、次のものは営利企業を営むことにも、報酬を得て事業に従事することにも当たりません。
ただし所属によって扱いが異なる場合があります。
- 預貯金の利息、株式の配当、投資信託の分配金など、資産運用による収入
- 自分が所有していた不用品を売却して得た収入
- 原稿料や講演料のうち、職務との関係がなく継続的でないもの(要確認)
- 一定規模を下回る不動産・駐車場の賃貸(下記参照)
資産形成が兼業規制の対象外である点は押さえておく価値があります。
詳しくは公務員の資産形成は何から始める?で扱っています。
2026年4月に何が変わったか
人事院は自営兼業制度を見直し、令和8年(2026年)4月1日から新しい取り扱いを施行しました。
ポイントは2つです。
- 承認が必要になる規模の基準が見直された。不動産等の賃貸について、承認を要する水準が引き上げられ、承認事務が合理化された
- 新たに承認できる兼業の種類が加わった。「職員の有する知識・技能をいかした事業」と「社会貢献に資する事業」が承認の対象として位置づけられた
2つ目は方向性として大きな変化です。
相続した不動産の管理のような受動的な事情だけでなく、職員の知識や技能を外で活かすことが、制度として想定されるようになりました。
不動産・駐車場の賃貸で「自営」に当たる規模
人事院規則14―8の運用に関する通知には、不動産や駐車場の賃貸が「自営」に当たる(=承認が必要になる)規模の基準が示されています。
| 区分 | 「自営」に当たるとされる水準 |
|---|---|
| 独立家屋 | 5棟以上 |
| 独立家屋以外の建物 | 貸与できる独立的に区画された部分が10室以上 |
| 土地 | 賃貸契約の件数が10件以上 |
| 駐車場 | 駐車台数が10台以上 |
| 賃貸料収入 | 年額1,000万円以上 |
床面積の合計が600平方メートル未満の場合の扱いなど、細かな条件もあります。
正確な文言は下記の一次情報でご確認ください。
この賃貸料収入の水準は2026年4月の見直しで変わりました。
過去に読んだ解説記事の数字が、現在の基準とは違っている可能性があります。
いつ時点の数字かを必ず確認してください。
📚 この記事で参照した一次情報
- 国家公務員法(e-Gov法令検索)
- 地方公務員法(e-Gov法令検索)
- 人事院規則一四―八(営利企業の役員等との兼業)(e-Gov法令検索)
- 自衛隊法(e-Gov法令検索)
- 警察法(e-Gov法令検索)
- 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(e-Gov法令検索)
- 「人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」(人事院)
- 自営兼業制度の見直しについて(人事院)
最終確認 2026年8月25日。
法令・制度の記述は、年に1度と制度改正のときに見直しています。
【重要】家族の名義にする、という発想が危険な理由
副業について調べていると、「配偶者の名義にすればいい」という趣旨の情報に行き当たることがあります。
当ブログは、この方法を一切すすめません。
やり方も書きません。
理由を説明します。
- 問題が制度違反だけで収まらなくなる。名義上の事業主と実際の運営者が違う状態は、税務上の所得の帰属や、契約の相手方に対する説明との整合など、複数の領域に同時に影響します
- 実態は隠しきれないことが多い。資金の出所、契約の交渉相手、日々の意思決定を誰が行っているかは記録に残ります
- 発覚したときに、説明する材料が自分の側に何もない。許可を取って行っていれば「制度の範囲内でやっていた」と言えますが、他人の名義で行っていた場合、最初から意図的に隠していたという評価になります
配偶者が実際に事業主体で、自分は一切関与していない、というケースはあり得ます。
しかしそれは「配偶者の事業」であって、自分の副業ではありません。
実質を伴わない名義だけの切り分けは、対策ではなくリスクの上乗せです。
✏️ 筆者から一言
在職中に行っていたのは、承認が不要とされる規模の範囲内での不動産の賃貸です。
特別なことをしたわけではなく、始める前に規定を読み、自分の場合はどこまでが手続きなしでできるのかを確認しただけでした。
逆に言えば、その確認をしていなかったら手を出せなかったと思います。
なお、ここで書けるのは制度の枠の話までで、個別の物件や収支の数字については触れません。
迷ったときに、どこへ確認すればいいか
実務上の確認先は次のとおりです。
順番に当たるのが確実です。
- 自分の所属の人事担当部署。最終的にはここの回答が基準になります
- 国家公務員なら人事院規則とその運用通知、地方公務員なら自分の自治体の規則(多くは例規集としてウェブで公開されています)
- 独立行政法人等の場合は、法人ごとの服務規程
「聞いたら怪しまれるのではないか」と心配になるかもしれませんが、制度の確認は職員の権利です。
むしろ確認した記録が残っていることは、後から問題になったときに自分を守る材料になります。
まとめ|調べる順番を間違えない
行動の順番として並べ直します。
- 自分に適用される法令を特定する(国公法か、地公法か、自衛隊法か、法人の規程か)
- その下にある規則・通知で、承認が必要になる水準を確認する
- 自分がやろうとしていることが、その水準の内側か外側かを判断する
- 外側なら、承認の手続きを踏む。内側でも、念のため人事担当に確認しておく
この順番を守れば、少なくとも「知らずに違反していた」という事態は避けられます。
そして繰り返しになりますが、名義を他人に借りるという選択肢は、この順番のどこにもありません。
📖 次に読みたい記事
- 収入を増やす経路を整理したいなら →「公務員が収入を増やす方法」
- 兼業規制の外側にある資産形成から始めるなら →「公務員の資産形成は何から始める?」
- そもそもの考え方から知りたいなら →「公務員として、どう生きるか。」
- 全体像から確かめたいなら →「公務員のキャリア形成完全ガイド」

