公開 2026年9月11日
「退職金は、辞める年の給料に支給率をかけた金額」。
多くの人はそうイメージしています。
でも公務員の退職金には、支給率だけでは説明できないもう一つの部分があります。
「調整額」と呼ばれる部分です。
知らなくても退職金はちゃんと振り込まれます。
ただ、辞める時期を考えるときにこの部分を知っているかどうかで、見える景色がずいぶん変わってきます。
※本サイトでいう「公務員」には、独立行政法人・国立大学法人・日本銀行・日本年金機構等の職員(いわゆる準公務員)も含みます。
副業・兼業規定が国家公務員法・地方公務員法に準拠、または類似している職種を主な対象としています。
この記事では、国家公務員退職手当法の条文にあたりながら、調整額の仕組みを確かめます。
⚠️ 先にお断りしておきます
この記事で確かめるのは国家公務員退職手当法の仕組みです。
地方公務員の退職手当は自治体の条例が根拠になり、金額や運用は団体ごとに違います。
自分の実際の額は、必ず人事担当か共済組合に確認してください。
この記事の結論
📌 結論を先に
- 退職金は基本額に調整額を足した額(国家公務員退職手当法2条の4)
- 基本額は俸給×勤続年数の支給率で決まる。ここは比較的知られている
- 調整額は在職中の役職の高さを月ごとに採点し、上位60か月分だけを合計する仕組み(6条の4)
- 自己都合で辞める場合、勤続9年以下だと調整額はゼロになる。10年を超えると半分、25年以上で全額
- 地方公務員は自治体の条例が根拠。国と同じ仕組みとは限らない
そもそも退職金は何でできているのか
国家公務員の退職金の額は、条文にはっきり書かれています。
「基本額」に「調整額」を足した額、というだけです(国家公務員退職手当法2条の4)。
基本額のほうは、公務員を辞めたい・辞めるべき?でも触れた部分です。
退職の理由と勤続年数で決まる支給率を、退職時の俸給月額にかける計算です(3条)。
勤続年数が長いほど、また定年退職のほうが自己都合より、支給率は高くなります。
ここで見落とされがちな点があります。
自己都合で辞めると、この基本額そのものにも割引がかかるということです(3条2項)。
| 勤続年数(自己都合退職) | 基本額の割合 |
|---|---|
| 1〜10年 | 通常額の60% |
| 11〜15年 | 通常額の80% |
| 16〜19年 | 通常額の90% |
| 20年以上 | 割引なし(通常どおり) |
勤続20年に届く前に自己都合で辞めると、支給率どおりに計算した金額よりさらに割り引かれます。
しかも、この先で見る調整額のほうは、自己都合退職なら勤続9年以下でゼロになります。
短い勤続年数での自己都合退職は、基本額・調整額の両方で軽くなる仕組みになっています。
今回この記事で、じっくり深掘りするのは、この式のもう半分、調整額のほうです。
調整額は「役職の高さ」を毎月採点する仕組み
調整額の考え方を、単純にいうとこうなります。
在職中の役職の高さを月ごとに点数化して、上位60か月分だけを合計する、というものです。
条文は、在職期間の各月に、その月についていた職員の区分に応じた金額を割り当てると定めています(6条の4第1項)。
この金額を「調整月額」と呼びます。
区分は全部で11段階あり、数字が小さいほど役職が重いことを示します。
| 区分 | 調整月額 |
|---|---|
| 第1号区分 | 95,400円 |
| 第2号区分 | 78,750円 |
| 第3号区分 | 70,400円 |
| 第4号区分 | 65,000円 |
| 第5号区分 | 59,550円 |
| 第6号区分 | 54,150円 |
| 第7号区分 | 43,350円 |
| 第8号区分 | 32,500円 |
| 第9号区分 | 27,100円 |
| 第10号区分 | 21,700円 |
| 第11号区分 | 0円 |
区分と金額は、この11段階です。
1号がいちばん重く、11号はゼロです。
どの区分に入るかは、官職の職制上の段階や職務の級などの重みによって政令で決まります(6条の4第3項)。
ここからが本題です。
在職期間の中のすべての月を、この調整月額が高い順に並べます。
そして上位から60か月分だけを合計します(6条の4第1項)。
在職期間が60か月に満たない場合は、ある月数分だけを合計します。
つまり、直近の役職だけが数えられるわけではありません。
キャリアの途中で一時的に重い区分についていた月があれば、それも上位60か月の中に入る可能性があります。
逆に、退職直前がいちばん重い役職だったとしても、それより高い調整月額の月が過去に60か月分以上あれば、直前の月は合計から外れることもあります。
たとえば、勤続35年で定年退職する2人を考えてみます。
Aさんは若いころに一度だけ管理職を経験しましたが、そのあとは元の役職に戻り、最後の10年は平の役職のまま勤め上げました。
Bさんはキャリアの終盤に昇任し、退職までの数年間だけ管理職についていました。
基本額は勤続年数と退職時の俸給で決まるので、2人の差は、それほど大きくなりません。
でも調整額は、在職期間全体を通じて「調整月額が高い月」を60か月分探して合計する仕組みです。
Aさんのように若い時期に重い区分だった月がある人は、その月も候補になります。
逆にBさんのように直近だけ重い役職でも、その期間が60か月に満たなければ、合計に反映されるのはその月数分だけです。
役職についた時期がいつであっても、在職中にどれだけの月数、どの区分にいたかが問われる仕組みだと覚えておくと分かりやすくなります。
自己都合で辞めると、ゼロになることがある
ここが、辞めるタイミングを考えるときにいちばん効いてくる部分です。
| 辞め方 | 勤続期間 | 調整額 |
|---|---|---|
| 定年・整理退職など(自己都合以外) | 0年 | ゼロ |
| 同上 | 1〜4年 | 通常額の半分 |
| 同上 | 5年以上 | 通常どおり全額 |
| 自己都合で退職 | 9年以下 | ゼロ |
| 自己都合で退職 | 10〜24年 | 通常額の半分 |
| 自己都合で退職 | 25年以上 | 通常どおり全額 |
自己都合で辞める場合、勤続9年以下なら調整額はまるごとゼロです(6条の4第4項4号)。
基本額のほうは支給率どおりに出ますが、調整額はゼロのまま、退職金の総額には加わりません。
10年を超えると半分は出るようになり(同項3号)、25年を超えると全額です。
この節目は、辞める時期を考えるときに知っておく価値があります。
「自己都合」に入る人、入らない人
条文がいう「自己都合等退職者」は、自分の意思で退職を願い出た人だけを指すわけではありません。
心身の不調や適性を理由に免職された人の一部も、この区分に含まれると条文は定めています。
どちらに当たるかで調整額の扱いが変わってくるので、自分の退職の形がどちらなのか迷ったら、断定する前に人事担当へ確認するのが確実です。
早期退職の募集に応じるとどうなるか
職場によっては、定年より前に辞める意思のある職員を募る制度があります(8条の2)。
職員の年齢構成を整える目的や、組織の改廃・官署の移転を円滑にする目的で行われる募集です。
この募集に応じて、決められた期日までに退職すると、認定を受けられる場合があります(8条の2第5項)。
認定を受けて辞めた人は、自己都合退職の割引(3条2項の60〜90%)を受けず、定年退職に近い優遇された支給率で基本額が計算されます(4条1項3号)。
つまり、勤続20年に届いていなくても、早期退職の募集という形に乗って辞めれば、自己都合退職の割引を避けられる可能性があるということです。
対象になる募集がいつ、どんな条件で行われるかは省庁・自治体ごとの運用によるので、気になる場合は人事担当に募集の有無を確認しておくと安心です。
一部の高位者は、また別の計算になる
指定職俸給表の上位号俸を超える俸給を受けていた人など、ごく一部の高位の職員には、別のルールがあります。
調整額の代わりに、基本額の8%に相当する額を使うというものです(6条の4第4項5号)。
対象になるのは限られた層です。
多くの人にとっては、ここまで見てきた「上位60か月の合計」を基準に考えて差し支えありません。
自分がこの別ルールに当たるかどうかも、俸給の水準を見ればおおよそ見当がつきます。
懲戒免職になると、退職金はどうなるか
「懲戒免職になったら退職金はゼロ」という話を、耳にしたことがある人も多いはずです。
条文を確かめると、少し違う書き方がされています。
懲戒免職等の処分を受けて辞めた場合、退職手当を出す側の機関は、本人が就いていた職の重さや、問題行動の内容・程度などを踏まえて、退職金の全部または一部を支給しないという処分ができると定められています(12条1項)。
ここで注意したいのは、「自動的に一律ゼロになる」という規定ではないということです。
退職手当を出す側が個別の事情を考えて判断する、裁量の仕組みになっています。
処分をするときは、理由を書いた書面で本人に知らせることも義務づけられています(12条2項)。
地方公務員はどうなるか
ここまでは国家公務員退職手当法の話です。
地方公務員には、この法律はそのまま当てはまりません。
地方自治体が退職手当を支給できる根拠は、地方自治法204条2項です。
支給するかどうか、支給する場合の額と方法は、自治体ごとに条例で定めます(同条3項)。
多くの自治体は、国の仕組みに近い形の条例を持っています。
ただしそれは義務ではありません。
号区分の金額も、合計する月数の上限も、団体ごとの条例しだいです。
自分の自治体がどんな条例を持っているかは、例規集で調べるか、人事課・共済組合に聞くのが確実です。
なお、市町村の中には、退職手当の事務だけをまとめて扱う一部事務組合に加入しているところもあります。
その場合、根拠になる条例やルールは、自分が勤める市町村ではなく組合の側にあることになります。
自前の条例か、組合のルールか。
そこも合わせて確認しておくと、話が早くなります。
自分の額を確かめるときの聞き方
人事担当や共済組合に聞くときは、漠然と「退職金はいくらですか」ではなく、具体的に聞くほうが答えが返ってきやすくなります。
- 自分の勤続年数だと、基本額の支給率はいくつか
- 自己都合で辞めた場合と、定年まで勤めた場合で支給率がどれだけ違うか
- 調整額の対象になる期間で、自分が経験した区分は何号にあたるか
- 自分の場合、調整額はゼロ・半分・全額のどれにあたるか
- 職場に早期退職の募集や、それに類する優遇の制度があるか
この4つが分かれば、退職金の全体像がだいたい見えてきます。
一度にすべて聞き出そうとせず、分からない点から順に、1つずつ確かめていくくらいの気持ちで臨むほうが、かえって話がまとまりやすくなります。
退職金を確かめるチェックリスト
退職を考えはじめたら、早いうちに埋めておくと判断がしやすくなります。どれも人事担当・共済組合に聞けば分かるものです。
自分の勤続年数は何年か
自己都合で辞めた場合の基本額の支給率はいくつか
定年まで勤めた場合の支給率はいくつか
調整額の対象期間で、自分はどの区分にあたっていたか
自分の場合、調整額はゼロ・半分・全額のどれにあたるか
職場に早期退職の募集・優遇制度があるか、条件はどうか
自分の自治体(または省庁)の退職手当条例・規程はどこで確認できるか
このページを印刷すると、この1枚だけが出ます。ブラウザの印刷からPDFとして保存することもできます。
❓ よくある質問
Q. 調整額を知らなくても、退職金はちゃんと振り込まれますか。
A. 振り込まれます。
調整額は自動で計算される部分で、自分で申請する手続きはありません。
ただ、金額の中身を知っておくと、辞める時期を考えるときの判断材料になります。
Q. 自己都合で辞めても、勤続10年を超えていれば調整額はもらえますか。
A. もらえます。
10年から24年までは通常額の半分、25年以上なら通常どおり全額です。
ゼロになるのは9年以下のときだけです。
Q. 一度重い役職に就いたら、その後平の役職に戻っても調整額は減りませんか。
A. その月だけを見れば、上位60か月に入っていれば合計に数えられます。
ただし在職期間全体でランキングするため、もっと重い役職の月が60か月分以上あれば、後から入った月が合計から外れることもあります。
Q. 地方公務員にも同じ「上位60か月」のルールがありますか。
A. そのまま当てはまるとは限りません。
地方公務員の退職手当は自治体の条例が根拠なので、条例の中身しだいです。
国の仕組みを参考にしている団体は多いですが、確認が必要です。
Q. 調整額の対象になる「区分」は、どこで確認できますか。
A. 区分は職務の級や職制上の段階などから政令で決まります。
自分がどの区分にあたっていたかは、人事担当や共済組合に聞くのが確実です。
Q. 基本額の支給率と、調整額はどちらが大きい金額になりますか。
A. 勤続年数や経験した役職によって変わるため、一律にはいえません。
人事担当に自分の数字を聞いて、両方を合計した見込み額で比べるのが確実です。
Q. 早期退職の募集に応じれば、必ず優遇された支給率になりますか。
A. 認定を受けることが条件です。
募集に応じただけで自動的に優遇されるわけではありません。
認定の要件や、募集がいつ行われるかは省庁・自治体ごとに違うので、応募を考えるときは人事担当に確認してください。
Q. この記事は、いつの時点の情報ですか。
A. 2026年9月11日にe-Gov法令検索で確認した内容です。
国家公務員退職手当法に、この記事が扱う条文の未施行の改正はありませんでした。
まとめ
- 退職金は基本額+調整額の2階建て(2条の4)
- 調整額は役職の高さを毎月採点し、上位60か月分だけを合計する仕組み(6条の4)
- 自己都合退職で勤続9年以下なら調整額はゼロ。10年を超えると半分、25年以上で全額
- ごく一部の高位者は基本額の8%という別ルールがある
- 地方公務員は自治体の条例が根拠。国と同じとは限らない
✏️ 筆者から一言
退職金の話は、支給率の数字だけで語られがちです。
でも条文を開くと、支給率で決まるのは半分だけでした。
もう半分の調整額は、勤続年数だけでなく「どの月に、どんな役職についていたか」まで見ています。
自分が重い区分にいた月がどれだけあるかなんて、普段はまず意識しません。
だからこそ、辞める前に一度くらいは、人事担当に数字を聞いてみる価値があると思います。
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📚 この記事で参照した一次情報
最終確認 2026年9月11日。
法令・制度の記述は、年に1度と制度改正のときに見直しています。

