残業代、ちゃんと全部出ている?公務員の「超過勤務手当」の計算と上限を条文で確かめる

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公開 2026年9月28日

月末、給与明細を開いて手が止まる。
先月は何度も夜まで残ったはずなのに、超過勤務手当の欄が思ったより少ない。

申請しなかった日の分は、どこへ消えたのか。
そもそも1時間いくらで計算されているのか。
残業に上限はあるのか。
気になるのに、職場で「残業代が少ないんですが」と口にするのは、なんとなく気が引けます。

先に答えを言うと、国家公務員は、命じられて正規の勤務時間を超えて働いたら、その全時間に手当が出ます。
割合は1時間あたりの給与額の125%から。
月45時間・年360時間という上限もあります。
明細の数字を、自分の手で確かめられるところまで一緒に見ていきましょう。

※本サイトでいう「公務員」には、独立行政法人・国立大学法人・日本銀行・日本年金機構等の職員(いわゆる準公務員)も含みます。
副業・兼業規定が国家公務員法・地方公務員法に準拠、または類似している職種を主な対象としています。

⚠️ 先にお断りしておきます

この記事は、自分の超過勤務手当がどう決まっているかを知るための材料です。
職場の扱いが正しいかどうかを判定するものではありません。
地方公務員の割合や上限は、自治体の条例と規則で決まります。
自分の数字は、所属の給与担当や人事担当で確かめてください。

この記事の結論

📌 結論を先に

  • 国家公務員は、命じられた超過勤務の全時間に手当が出る(給与法16条)
  • 1時間あたりの額は(俸給+地域手当など)×12÷(週の勤務時間×52)で出せる
  • 割合は勤務日125%、週休日など135%。夜10時〜朝5時は25%上乗せ
  • 月60時間を超えた分は150%。代わりに休みを指定されることもある
  • 上限は原則月45時間・年360時間。忙しい部署は月100時間未満・年720時間
  • 管理職・公立学校の先生・自衛官には、超過勤務手当が出ない決まりがある
  • 地方公務員は自治体の条例で決まる。労働基準法の割増賃金の決まりも当てはまる

命じられた残業は「全時間」に手当が出る

まず、国家公務員の場合です。
決まりの中心は、給与法の16条です。
書いてあることを普通の言葉にすると、こうなります。

正規の勤務時間を超えて働くよう命じられた職員には、超えて働いた全時間に対して、超過勤務手当を支給する(一般職の職員の給与に関する法律16条1項)。

ポイントは2つあります。
1つは「命じられた」こと。
残業は、公務のために臨時や緊急の必要があるときに命じられるものです(勤務時間法13条2項)。
もう1つは「全時間」という言葉です。

条文は、予算の範囲で一部だけ払う、という書き方をしていません。
命じられて働いた時間は、1時間残らず手当の対象です。
この「全時間」という言葉は、現場で思われているよりずっと強い言葉だ、と私は考えています。

だからこそ、気をつけたいのが「命じられた」のほうです。
誰にも言わずに自分の判断で残った時間は、記録に残りにくくなります。
残る必要があるときは、上司に一声かけて、超過勤務として命じてもらう。
言い出しにくい一言ですが、それが自分の時間を守るいちばん確かな方法です。

1時間いくら?明細を見ながら自分で計算してみる

超過勤務手当は、まず「勤務1時間当たりの給与額」を出し、そこに割合を掛けて計算します。
1時間当たりの給与額の出し方は、こうです(給与法19条)。

段階計算中身
1. 月の土台俸給+地域手当+広域異動手当+研究員調整手当扶養手当・住居手当・通勤手当は入らない
2. 1年分にする1.の額×1212か月分
3. 1年の勤務時間で割る2.の額÷(週の勤務時間×52)週の勤務時間はふつう38時間45分(勤務時間法5条)

割合は、いつ働いたかで変わります。

いつ働いたか割合根拠
勤務日に、勤務時間を超えて125%給与法16条1項・人事院規則9―97 2条
週休日など、勤務が割り振られていない日135%同上
上の2つが夜10時〜朝5時にかかった分それぞれ25%を上乗せ(150%・160%)給与法16条1項
祝日や年末年始の休日に、勤務時間中に働いた休日給として125〜150%の範囲給与法17条
勤務時間そのものが夜10時〜朝5時夜勤手当として25%給与法18条

たとえば、俸給と地域手当を合わせて月30万円の人がいたとします(数字は計算のための仮のものです)。
30万円×12÷(38.75時間×52)で、1時間当たりは約1,787円。
勤務日の残業なら125%なので、1時間あたり約2,230円になります。
月に10時間残れば、2万2千円ほどです。

計算の途中で出る円未満の端数は、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げます(給与法18条の2)。
明細と数十円ずれるのは、たいていこの端数です。

ここまで読んで、「計算が面倒だ」と感じたかもしれません。
でも、一度自分の数字で出してみると、明細の見え方がまるで変わります。
月の残業時間を手帳に控えておけば、次の明細で答え合わせができます。

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明細を見ていて、家賃補助や単身赴任の手当の額も気になったら、決まり方を先に確かめておくと安心です。
→「家賃補助はいくら?単身赴任手当は?公務員の「住居手当」と「単身赴任手当」を条文で確かめる」

月60時間を超えたら、割合が上がる

繁忙期や災害対応で、気づけば毎晩残っていた月。
そんな月は、決まりが1段変わります。
1か月の超過勤務が60時間を超えると、超えた分は150%になります。
夜10時〜朝5時にかかる分は175%です(給与法16条3項)。
なお、60時間の数え方には細かい決まりがあり、週休日の勤務の一部は外れます。

もう1つ、知っておきたい仕組みがあります。
60時間を超えた分の手当の一部に代えて、勤務日の勤務時間を「超勤代休時間」として指定されることがあります(勤務時間法13条の2)。
指定された時間は、特に命じられない限り、勤務しなくてかまいません。
手当が減ったように見えて、実は休みに置き換わっている、という形です。

月60時間を超える月が続いているなら、手当の額より先に、自分の体のことを心配してください。
次の節の上限は、そのためにあります。

残業には上限がある。月45時間・年360時間

「公務員の残業に上限なんてない」と思っていた人もいるかもしれません。
国家公務員には、人事院規則で上限が決められています(人事院規則15―14 16条の2の2)。

どこで働いているか上限
ふつうの部署月45時間・年360時間
他律的な業務の多い部署として指定された部署月100時間未満・年720時間・2〜6か月の平均80時間・月45時間を超えるのは年6か月まで
大規模災害への対処など「特例業務」上限を超えて命じられる。ただし必要最小限にし、健康に最大限配慮し、6か月以内に原因を整理・分析・検証する

「他律的な業務」とは、仕事の量や時期を自分で決めにくい業務のことです。
相手の都合で急に仕事が降ってきて、自分では締め切りを動かせない。
そんな毎日を送っている人なら、思い当たる部署があるはずです。
どの部署がこれに当たるかは、各省各庁の長が指定します。

自分の部署がどちらの上限なのかは、職場で聞けば教えてもらえるはずの情報です。
聞くのをためらう必要はありません。
上限を知っていれば、「今月はもう40時間を超えている」と自分で気づけます。

超過勤務手当が出ない人もいる

ここは、知らずにいると驚くところです。
同じ公務員でも、超過勤務手当そのものが出ない決まりの人がいます。

誰かどうなっているか根拠
国の管理職(管理監督職員など)超過勤務手当・休日給・夜勤手当は出ない。週休日などに臨時に勤務したときの管理職員特別勤務手当がある給与法19条の8第2項・19条の3
公立学校の先生(校長・副校長・教頭を除く)時間外勤務手当・休日勤務手当は出ない。代わりに教職調整額がある給特法3条1項・2項
自衛官法律の手当の一覧に、超過勤務手当が入っていない(事務官などには出る)防衛省の職員の給与等に関する法律14条1項

公立学校の先生の教職調整額は、給料月額の10%を基準に、条例で決めて支給します(幼稚園は4%)。
ただし、段階的に引き上げている途中です。
2026年は5%、2027年は6%と1年に1ポイントずつ上がり、2031年から10%になります(給特法附則2項)。

先生の場合、そもそも勤務時間を超えて働かせてよい場面も、政令の基準に沿って条例で決めた場合に限られています(給特法6条1項)。
先生の残業代が「出ない」のは、個々の学校の扱いではなく、法律の仕組みです。
そう知っておくだけでも、ほかの職種の人と比べて落ち込まずに済むはずです。

地方公務員は、条例と労働基準法の両方を見る

警察官・消防職員・自治体職員など、地方公務員は給与法の対象ではありません。
自治体は、条例で時間外勤務手当を支給できます(地方自治法204条2項)。
額と支給の方法は、条例で決める決まりです(同3項)。

「うちの自治体の条例なんて、読んだこともない」という人も多いはずです。
でも、条例だけが頼りというわけではありません。
もう1つの支えが、民間の会社員と同じ労働基準法です。
地方公務員法58条3項は、労働基準法のうち職員に当てはめない条文を並べています。
その中に、割増賃金を定めた37条は入っていません。
つまり、割増の最低ラインは、民間と同じ物差しで守られているということです。

労働基準法37条1項の決まり割増の割合
時間外の労働25%以上
1か月60時間を超えた時間外の労働50%以上

公務のために臨時の必要があるときは、官公署の事業に従事する地方公務員にも時間外の勤務を命じられる、という決まりもあります(労働基準法33条3項)。
命じられた時間外の勤務には、割増の決まりがついてくる、と覚えておけば十分です。

自治体ごとの割合や上限は、例規集で「給与条例」「時間外勤務」と検索すると見つかります。
人事担当に聞くのが気まずいときは、例規集から見てしまうのが気楽です。

明細の数字を確かめる手順

ここまでの話を、明細と見比べる順番に並べ直します。
全部を一度にやる必要はありません。
今月の明細で、上から1つずつ試してみてください。

  1. 自分が手当の出る側か(管理職・先生・自衛官ではないか)を確かめる
  2. 明細から俸給と地域手当を拾い、1時間当たりの給与額を出す
  3. 先月、勤務日・週休日・夜10時以降に残った時間を分けて数える
  4. 割合(125%・135%・深夜の上乗せ)を掛けて、明細の超過勤務手当と比べる
  5. 月60時間を超えた月は、150%の分と超勤代休時間の指定があったかを見る
  6. 自分の部署の上限(月45時間か、月100時間未満か)を上司か人事担当に聞く
  7. 地方公務員なら、例規集で給与条例の時間外勤務手当の条文を探す

数字が合わなかったときも、すぐに誰かを疑う必要はありません。
申請の漏れや、締め日のずれで説明がつくこともあります。
まずは給与担当に「計算の内訳を教えてください」と聞いてみる。
責める言い方ではなく、確かめる言い方なら、ずっと切り出しやすくなります。

明細と見比べるメモ

分かるところだけで十分です。空いた欄は、給与担当や人事担当に聞くことのリストになります。

手当が出る側か(管理職・先生・自衛官ではないか)

俸給+地域手当など(月額)と、1時間当たりの給与額

先月の超過勤務(勤務日/週休日など/夜10時以降)の時間

計算した手当と、明細の超過勤務手当の差

月60時間を超えたか・超勤代休時間の指定があったか

自分の部署の上限(月45時間/月100時間未満)

給与担当に聞くこと

このページを印刷すると、この1枚だけが出ます。ブラウザの印刷からPDFとして保存することもできます。

❓ よくある質問

Q. 申請しなかった残業にも、手当は出ますか。

A. 給与法16条は、命じられて正規の勤務時間を超えて働いた全時間に手当を出すと定めています。
大切なのは「命じられた」ことです。
残る必要があるときは、上司に伝えて超過勤務として命じてもらい、記録に残してもらうのが確実です。

Q. 残業代は1時間いくらですか。

A. (俸給+地域手当など)×12÷(週の勤務時間×52)で1時間当たりの給与額を出し、勤務日なら125%を掛けます(給与法16条・19条、人事院規則9―97 2条)。
週休日などは135%、夜10時〜朝5時は25%を上乗せします。

Q. 月60時間を超えると、何が変わりますか。

A. 超えた分は150%(夜10時〜朝5時は175%)になります(給与法16条3項)。
手当の一部に代えて、超勤代休時間を指定されることもあります(勤務時間法13条の2)。

Q. 公務員の残業に上限はありますか。

A. 国家公務員は、原則として月45時間・年360時間です。
他律的な業務の多い部署として指定された部署は、月100時間未満・年720時間などです(人事院規則15―14 16条の2の2)。
地方公務員は、自治体の決まりで確かめてください。

Q. 管理職になると、残業代はどうなりますか。

A. 国の管理職(管理監督職員など)には、超過勤務手当・休日給・夜勤手当は出ません(給与法19条の8第2項)。
週休日などに臨時に勤務したときは、管理職員特別勤務手当があります(同19条の3)。

Q. 公立学校の先生に残業代が出ないのは本当ですか。

A. 本当です。
時間外勤務手当と休日勤務手当は支給しない、と法律に書かれています(給特法3条2項)。
代わりに教職調整額があり、2026年は給料月額の5%を基準に、2031年に10%まで段階的に上がります。

Q. 自衛官に超過勤務手当は出ますか。

A. 防衛省の職員の給与等に関する法律14条1項の、自衛官に支給する手当の一覧に超過勤務手当は入っていません。
事務官などの一覧には入っています。

Q. この記事は、いつの時点の情報ですか。

A. 2026年9月28日に、e-Gov 法令検索で法律と人事院規則の条文を確かめた内容です。
改正が決まっているものは、使った条文の中身が変わらないことまで確かめています。

まとめ

  1. 命じられた超過勤務は、全時間が手当の対象
  2. 1時間当たりの給与額に、125%・135%・深夜の上乗せを掛けて計算する
  3. 月60時間を超えた分は150%。超勤代休時間に置き換わることもある
  4. 上限は原則月45時間・年360時間
  5. 管理職・公立学校の先生・自衛官には、超過勤務手当が出ない決まりがある
  6. 地方公務員は条例で確かめる。労働基準法の割増の決まりも当てはまる

✏️ 筆者から一言

私には、勤務の過酷さに給与が見合っていない、と感じていた時期があります。
家族がいて、生活の水準を落とす選択もできませんでした。
給与への不満は、ためこむほど、仕事そのものへの気持ちまで削っていきます。
だからこそ、働いた時間がきちんと給与に換わっているかは、感覚ではなく明細と条文で確かめてほしいのです。
今月の明細が届いたら、まず1時間当たりの額だけ、電卓で出してみてください。

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この記事を書いた人

公務員UPDATE 運営者。元公務員(警察官)。交番勤務・自動車警ら係・刑事・生活安全を経験し、現在は独立して事業を営んでいます。記事では、在職中の経験か退職後の経験かを必ず区別して書いています。

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