辞めると決めたら、何をいつ出す?公務員の「辞職」の手続きと、辞めた翌日から変わる保険・年金を条文で確かめる

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公開 2026年9月27日

もう、辞めると決めた。
明日の朝、上司に切り出そうと思っている。
それなのに、布団に入ってから次々と分からないことが出てきます。

退職願は何日前に出すものなのか。
出したら、すぐに辞めさせてもらえるのか。
辞めた翌日から、健康保険や年金はどうなるのか。
職場で辞めた人に聞けば早いのですが、それを聞くこと自体が「辞めます」と言っているようで、口に出せません。

先に答えを言うと、国家公務員の辞職は、書面で申し出て、任命権者が承認して成立します。
「何日前」という決まりはありません
。
その代わり、辞めた翌日から、健康保険と年金の切り替えに20日と14日の締め切りが走り出します。
切り出す前に、流れを一度だけ見ておきましょう。

※本サイトでいう「公務員」には、独立行政法人・国立大学法人・日本銀行・日本年金機構等の職員(いわゆる準公務員)も含みます。
副業・兼業規定が国家公務員法・地方公務員法に準拠、または類似している職種を主な対象としています。

⚠️ 先にお断りしておきます

この記事は、辞めると決めた公務員が、手続きの流れと、辞めたあとに変わるものを知るための材料です。
辞めるべきかどうかを勧める記事ではありません。
退職手当の額や任意継続の掛金は、人によって違います。
具体的な金額は、所属の人事担当と共済組合で確かめてください。

この記事の結論

📌 結論を先に

  • 国家公務員の辞職は書面で申し出て、承認されて成立する(人事院規則8―12 51条)
  • 承認は「特に支障のない限り」行われる。何日前に出すかの決まりは無い
  • 地方公務員法には辞職の手続きの条文が無い。自治体の決まりで確かめる
  • 自衛官は、任務に著しい支障があると、一定の期間、退職が承認されないことがある(自衛隊法40条)
  • 共済の任意継続は退職日から20日以内、国民健康保険と国民年金の届出は14日以内
  • 国の常勤職員は雇用保険の対象外。代わりに退職手当で差額を補う仕組みがある
  • 辞めたあとも、秘密を守る義務と、元の職場への働きかけの制限は続く
  • 切り出す前に、ボーナスの基準日・退職手当・保険の行き先の3つを確かめておく

「辞めます」は、書いて出して、認められて成立する

まず、国家公務員の場合です。
規則の言葉では、自分の意思で辞めることを「辞職」と呼びます(人事院規則8―12 4条11号)。
何枚もの書類が要るのかと身構えていると、少し拍子抜けします。
手続きの中身は、たった1行です。

職員から書面で辞職の申し出があったら、任命権者は、特に支障のない限り、これを承認する(同51条)。

段階中身根拠
申し出る口頭ではなく書面で出す人事院規則8―12 51条
承認される任命権者が、特に支障のない限り承認する同51条・国家公務員法61条
通知を受け取る辞職を承認したら、人事異動通知書が交付される人事院規則8―12 53条10号

ここで大事なのは、「出した瞬間に辞められる」わけではないことです。
承認されるまでは職員のままで、承認されてはじめて辞職が成り立ちます。
退職日も、この承認の中で決まっていきます。

正直に言うと、「特に支障のない限り」は幅のある言い方で、ここは条文が不親切だと思います。
何が支障に当たるのかは、どこにも書かれていません。
ただ、裏を返せば、支障が無ければ承認する、という向きの決まりです。
辞めさせないための言葉ではない、と私は読んでいます。

「何日前に言えばいい?」に、法律の答えはない

いちばん知りたいのは、ここではないでしょうか。
人事院規則8―12には、「何日前までに申し出る」という決まりがありません。
だからこそ、退職日は自分の事情から逆算して決めることになります。

逆算の材料になるのは、次の3つです。

確かめることなぜ効くのか詳しくは
ボーナスの基準日期末手当・勤勉手当は、基準日に在職しているかで変わる記事15
退職手当の支給率と調整額自己都合か、勤続年数がどこで区切れるかで額が変わる記事17
引き継ぎに要る期間担当業務の区切り。ここは職場ごとに違う所属の上司・人事担当

上の2つは、退職日が少しずれるだけで額が変わることがあります。
切り出す前に、自分の退職日の候補を2〜3個持っておくと、上司との話がぐっと楽になります。

それでも、切り出す瞬間がいちばん気が重いものです。
上司の顔を思い浮かべて、何度も言い出す言葉を練り直している人もいるはずです。
でも、その言いにくさは、準備でずいぶん小さくできます。
決まっていない部分が多いからこそ、早めに伝えたほうが、職場にとっても自分にとっても選べる幅が広がります。

地方公務員は、自治体の決まりを確かめる

警察官・消防職員・自治体職員・公立学校の先生など、地方公務員には人事院規則は当てはまりません。
そして意外なことに、地方公務員法には「辞職」という言葉そのものが出てきません。

つまり、書面で出すのか、誰が承認するのか、といった流れは、法律ではなく所属の自治体の決まりで確かめることになります。
自治体の例規集で「退職」「辞職」と検索するか、人事担当に「退職の手続きを教えてください」と聞くのが確実です。

人事担当に聞くのは、ためらうかもしれません。
聞いた時点で辞めると伝わってしまいそうだからです。
そんなときは、例規集から先に見てしまうのが気楽です。
例規集をインターネットで公開している自治体なら、誰にも知られずに調べられます。

自衛官だけは「すぐには認められない」ことがある

自衛官を含む自衛隊員は、ここが大きく違います。
退職を申し出ても、すぐに認められるとは限りません。
承認すると自衛隊の任務の遂行に著しい支障が出ると認められるときは、一定の期間、退職が承認されないことがあります(自衛隊法40条)。

対象承認されないことがある期間
任用期間を定めて任用されている士長などその任用期間内で必要な期間
それ以外の隊員任務を遂行するために最少限度必要とされる期間

ただし、政令で定める特別の事由がある場合は除かれます(同40条)。
いつまでも辞められない、という決まりではありません。
自衛官の方は、辞めたい時期が決まったら、できるだけ早く上官や人事の担当へ伝えておくほうが安心です。

辞めた翌日から走り出す、3つの締め切り

ここからは、辞めたあとの話です。
在職中は、共済組合の組合員として医療の給付を受けています。
組合員である間は、国民健康保険の対象外です(国民健康保険法6条3号)。
辞めると組合員ではなくなるので、健康保険の行き先を自分で選ぶことになります。

行き先締め切りポイント根拠
共済の任意継続退職日から20日以内に共済組合へ申し出る1年以上組合員だった人。最長2年。初回の掛金を期日までに納めないと、任意継続にならない国家公務員共済組合法126条の5・地方公務員等共済組合法144条の2
国民健康保険14日以内に市区町村へ届け出る(届け出るのは世帯主)住んでいる市区町村の国保に入る国民健康保険法施行規則3条
家族の健康保険の扶養家族の勤め先を通じて手続きする収入などの条件がある。家族の勤め先で確かめる―

年金も忘れずに。
自営業として独立するなど、次の勤め先の厚生年金にも、配偶者の扶養にも入らない場合を考えます。
20歳以上60歳未満なら、国民年金の第1号被保険者になります(国民年金法7条1項1号)。
その届出は、14日以内に市区町村へ出します(国民年金法施行規則1条の4)。

辞めた翌週に、この3つの手続きが一度に来ます。
退職の日まで引き継ぎに追われて、気づいたら締め切りを過ぎていた、というのがいちばんもったいないパターンです。
任意継続と国保のどちらが安いかは、人によって違います。
在職中に、共済組合と市区町村の両方へ保険料の見込みを聞いておくと安心です。

公務員には「失業手当」がない?

民間の会社員なら、辞めたあとに雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)を受け取れます。
ところが、国の常勤職員は雇用保険の対象外です。
自治体の職員も、自治体が承認を受けていれば対象外になります。

区分雇用保険根拠
国の常勤職員対象外雇用保険法6条6号・同法施行規則4条1項1号
都道府県・市町村の職員自治体の長が申請して承認を受けると対象外同法施行規則4条1項2号・3号

その代わり、国家公務員には「失業者の退職手当」という仕組みがあります(国家公務員退職手当法10条)。
雇用保険に入っていたら受け取れたはずの基本手当の額と、実際にもらった退職手当を比べます。
退職手当のほうが少なければ、その差額を退職手当として受け取れます。
窓口はハローワークで、基本手当と同じ条件で支給されます。

勤続年数や退職手当の額によっては、差額が出ないこともあります。
地方公務員は、自治体の退職手当の条例で同じような決まりがあるかを確かめてください。

「辞めたら、収入が一気にゼロになる」。
この不安が、いちばん足を重くしているのかもしれません。
だからこそ、手当が出るかどうかを先に確かめておくと、次の一歩を落ち着いて選べます。

辞めても続く約束が、2つある

辞職が承認されたら、これで全部おしまい、とはいきません。
公務員でなくなったあとも、消えない決まりが2つあります。

続く約束中身根拠
秘密を守る仕事で知った秘密は、辞めたあとも漏らしてはいけない国家公務員法100条1項・地方公務員法34条1項
元の職場へ働きかけない民間の会社などに再就職した元職員は、辞める前5年間の仕事に関わる契約や処分について、辞めてから2年間、元の職場の職員に頼みごとをしてはいけない国家公務員法106条の4・地方公務員法38条の2

2つ目は、たとえば役所と取引のある会社に入った人が、元の部署に「この契約をうちに」と頼むような場面です。
とはいえ、元の職場と一切関われなくなるわけではありません。
申請や届出を出すこと、一般競争入札に参加することは、この制限の外です(国家公務員法106条の4第5項)。

独立して何かを始める人も、元の職場の話をネタにした発信には気をつけてください。
秘密を守る義務は、期限なく続きます。

🔗 あわせて読みたい

次の職場をまだ探している途中なら、在職中に応募してよい先と、控えるべき先の線引きを先に確かめておくと安心です。
→「公務員の在職中の転職活動、どこまでOK?「利害関係企業」への求職規制を条文で確かめる」

上司に切り出す前に、やっておきたいこと

ここまでの話を、切り出す前の準備に並べ直します。
全部そろわなくても大丈夫です。
上から順に、分かるところだけ埋めていけば十分です。

  1. 退職日の候補を2〜3個考える(ボーナスの基準日と、退職手当の区切りを見て)
  2. 国家公務員なら、辞職の申し出は書面で出すと知っておく。地方公務員なら、例規集で退職の手続きを確かめる
  3. 自衛官なら、退職の承認に時間がかかることがあると見込んでおく
  4. 健康保険の行き先(任意継続・国保・家族の扶養)を決める材料をそろえる
  5. 独立するなら、国民年金の第1号の届出が14日以内だと控えておく
  6. 雇用保険の代わりの「失業者の退職手当」が自分に当たるか、人事担当に確かめる
  7. 引き継ぎに要る期間を、自分の担当業務から見積もる

準備ができていると、上司との話は「辞めさせてください」ではなく「この日で相談させてください」に変わります。
頼むのではなく、相談する。
その違いだけで、切り出す夜の気の重さがずいぶん軽くなるはずです。

切り出す前のメモ

分かるところだけで十分です。空いた欄は、人事担当や共済組合に聞くことのリストになります。

退職日の候補(2〜3個)

ボーナスの基準日との関係(在職している/していない)

退職手当の区切り(自己都合・勤続年数)で確かめること

辞職の手続き(国家公務員は書面/地方公務員は自治体の決まり)

健康保険の行き先(任意継続20日以内/国保14日以内/家族の扶養)

年金の届出(次の勤め先がないなら、国民年金14日以内)

辞めたあとも守る約束(秘密・元の職場への働きかけ)で気をつけること

このページを印刷すると、この1枚だけが出ます。ブラウザの印刷からPDFとして保存することもできます。

❓ よくある質問

Q. 退職願は、何日前に出せばいいですか。

A. 国家公務員の辞職を定めた人事院規則8―12には、何日前という決まりはありません。
書面で申し出て、任命権者が特に支障のない限り承認する、という流れです(51条)。
ボーナスの基準日や退職手当の区切り、引き継ぎの期間から逆算して決めるのが現実的です。

Q. 口頭で「辞めます」と言えば足りますか。

A. 国家公務員は、書面での申し出が前提です(人事院規則8―12 51条)。
上司への相談は口頭で始めてかまいませんが、申し出そのものは書面で出すことになります。
地方公務員は、自治体の決まりで確かめてください。

Q. 申し出たら、必ず辞めさせてもらえますか。

A. 国家公務員は、特に支障のない限り承認されます。
自衛官は、任務の遂行に著しい支障があると、一定の期間、退職が承認されないことがあります(自衛隊法40条)。

Q. 辞めたら、健康保険はどうなりますか。

A. 共済組合の組合員ではなくなります。
1年以上組合員だった人は、退職日から20日以内に申し出れば、最長2年、共済の任意継続を使えます。
国民健康保険に入るなら、14日以内に市区町村へ届け出ます。

Q. 公務員でも失業手当はもらえますか。

A. 国の常勤職員は雇用保険の対象外です。
代わりに「失業者の退職手当」があります(国家公務員退職手当法10条)。
退職手当が基本手当に当たる額より少ないとき、その差額を受け取れる仕組みです。
地方公務員は、自治体の雇用保険の扱いと退職手当の条例で確かめてください。

Q. 辞めたあと、元の職場のことをブログに書いてもいいですか。

A. 仕事で知った秘密は、辞めたあとも漏らしてはいけません(国家公務員法100条1項・地方公務員法34条1項)。
制度の説明や、自分の気持ちを書くことと、職務で知った秘密を書くことは、分けて考えてください。

Q. 独立して、元の職場と取引してもいいですか。

A. 取引そのものが禁じられているわけではありません。
ただ、民間の会社などに再就職した元職員には、決まりが1つあります。
辞める前5年間の仕事に関わる契約や処分について、辞めてから2年間は、元の職場の職員に頼みごとをしてはいけません(国家公務員法106条の4・地方公務員法38条の2)。

Q. この記事は、いつの時点の情報ですか。

A. 2026年9月27日に、e-Gov 法令検索で法律・人事院規則・省令の条文を確かめた内容です。
改正が決まっているものは、使った条文の中身が変わらないことまで確かめています。

まとめ

  1. 国家公務員の辞職は書面で申し出て、承認されて成立する
  2. 「何日前」の決まりは無い。ボーナスの基準日・退職手当・引き継ぎから逆算する
  3. 地方公務員は自治体の決まりで、自衛官は承認に時間がかかることを見込む
  4. 健康保険は任意継続20日以内・国保14日以内、国民年金も14日以内
  5. 雇用保険の代わりに、国家公務員には失業者の退職手当がある
  6. 辞めても、秘密を守る義務と元の職場への働きかけの制限は続く

✏️ 筆者から一言

私は、同じ給与の水準で雇ってくれる転職先を探しても見つけられませんでした。
家族がいて、生活の水準を落とす決断もできずにいました。
最後に辞められたのは、その壁を越えたからではなく、雇ってくれる誰かを探す道を降りて、自分で作る側に回ったからです。
どんな道を選ぶにしても、辞めると決めたあとの手続きで足をすくわれるのは、もったいないことです。
上司に切り出す前の晩に、この記事の締め切りだけ、手帳に書き写しておいてください。

この記事を書いた人

公務員UPDATE 運営者。元公務員(警察官)。交番勤務・自動車警ら係・刑事・生活安全を経験し、現在は独立して事業を営んでいます。記事では、在職中の経験か退職後の経験かを必ず区別して書いています。

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