公開 2026年9月13日
夜間の大学院に通いたい。
でも最初の授業が、定時より少し早く始まってしまう。
毎週そこで詰まって、出願をあきらめかけている。
休職してまで学ぶほどではない。
かといって、有給休暇を毎週使い切るわけにもいかない。
そんなときに候補になるのが「修学部分休業」です。
仕事を続けたまま、1週間の勤務時間の一部だけ抜けて学校へ通う。
地方公務員には、そのための仕組みが法律で用意されています。
ただ、中身のほとんどは自治体の条例に任されていて、法律だけ読んでも時間も年数も分かりません。
そこでこの記事では、法律の枠と、実際の条例2本を並べて読んでいきます。
※本サイトでいう「公務員」には、独立行政法人・国立大学法人・日本銀行・日本年金機構等の職員(いわゆる準公務員)も含みます。
副業・兼業規定が国家公務員法・地方公務員法に準拠、または類似している職種を主な対象としています。
⚠️ 先にお断りしておきます
修学部分休業は地方公務員の制度です。
何時間まで抜けられるか、何年使えるかは、自治体の条例で決まります。
この記事で紹介する条例は一例です。
自分の職場で使えるかどうかは、必ず人事担当か例規集で確かめてください。
この記事の結論
📌 結論を先に
- 地方公務員は、週の勤務時間の一部を抜けて大学などに通える(地方公務員法26条の2)
- 使えるのは常勤で任期の定めがない職員。会計年度任用職員や臨時的任用の職員は対象外
- 条件は、仕事に支障がないことと、公務の力を伸ばす学びであること
- 何時間・何年まで使えるか、どの学校が対象かは条例しだい
- 抜けた時間の分だけ給料は減る(同条3項)
- 国家公務員と自衛官には、同じ名前の制度が法令に見当たらない
- 年齢で使える「高齢者部分休業」という兄弟の制度もある(26条の3)
働きながら、勤務時間の一部を抜けて学ぶ制度
まず、この制度が何をしてくれるのかを押さえておきます。
公務員は、勤務時間中は仕事に専念するのが原則です(地方公務員法35条)。
ただしこの原則には、法律か条例に特別の定めがあれば例外を置ける、という余地が残されています。
修学部分休業は、その例外を法律がはっきり作ったものです。
任命権者が承認すれば、週の勤務時間の一部を学ぶために使えます。
大事なのは「一部」という言葉です。
丸ごと休む制度ではありません。
籍も仕事もそのままで、たとえば週に何回か早めに職場を出る、という使い方を想定しています。
| 修学部分休業 | 自己啓発等休業 | |
|---|---|---|
| 仕事 | 続ける | 休む |
| 休む範囲 | 週の勤務時間の一部 | 期間中まるごと |
| 給料 | 抜けた時間の分だけ減る | 出ない |
| 根拠 | 地方公務員法26条の2 | 地方公務員法26条の5 |
ちなみに、地方公務員法が「休業」として数えているのは4つだけです。
自己啓発等休業、配偶者同行休業、育児休業、大学院修学休業。
部分休業はこの一覧に入っておらず、別の条文に置かれています。
名前に「休業」とついていても、丸ごと休む仲間ではないということです。
使える人、使えない人
法律は、最初に対象から外す人をはっきり書いています。
臨時的に採用された職員、法律で任期を決めて採用された職員、そして非常勤の職員です。
会計年度任用職員は、パートタイムでもフルタイムでも、会計年度ごとに任期を区切った職として置かれています(22条の2)。
そのため、この制度の対象には入りません。
逆にいえば、いわゆる正規の常勤職員なら、職種を問わず土俵に乗ります。
| 働き方・職種 | 対象になるか |
|---|---|
| 市役所・県庁などの常勤職員 | 対象になりうる |
| 消防職員 | 対象になりうる(地方公務員) |
| 都道府県警察の警察官 | 対象になりうる(地方公務員) |
| 公立学校の先生 | 対象になりうる(地方公務員) |
| 会計年度任用職員 | 対象外 |
| 臨時的任用・任期付の職員 | 対象外 |
| 国家公務員・自衛官 | この名前の制度は見当たらない |
「対象になりうる」と書いたのには理由があります。
法律は承認「できる」と定めているだけで、中身は各自治体の条例に任されているからです。
条例を置いていない団体では、そもそも申し込めません。
会計年度任用職員の副業の扱いは、会計年度任用職員の副業はどこまでOK?で詳しく見ています。
承認されるための2つの条件
申し込めば必ず通る制度ではありません。
法律は、承認の条件を2つ置いています。
- 公務の運営に支障がないこと
- その学びが、公務員としての能力を伸ばすものであること
1つ目は、職場の人の手当てがつくかどうかです。
繁忙期の部署や、少人数で回している係では、同じ学びでも結論が変わることがあります。
2つ目のほうが、申し込む側としては準備のしどころです。
「趣味で学びたい」だけでは、条文の条件に届きません。
法律、会計、福祉、情報、語学など、いまの仕事やこれからの仕事にどうつながるかを説明できるようにしておきたいところです。
どんな学びが仕事で効くのかを考えたいなら、これからの公務員に必要なスキルも参考になるはずです。
何時間、何年まで?条例2本で見てみる
ここからが本題です。
法律には時間も年数も書かれていないので、実際の条例を見ます。
例規集で本文を確認できた2つの団体を並べました。
| 項目 | 新潟県 | 猪苗代町(福島県) |
|---|---|---|
| 抜けられる時間 | 1週間で19時間20分まで | 週の勤務時間の2分の1まで |
| 時間の単位 | 条例に定めなし | 5分単位 |
| 使える期間 | 2年 | 2年 |
| 対象の学校 | 大学・高専、専修学校、各種学校 | 大学・高専、専修学校、各種学校、任命権者が認めた施設 |
| 給料 | 抜けた1時間ごとに差し引く | 抜けた1時間ごとに減らす |
まず目を引くのは、抜けられる時間の大きさです。
猪苗代町は、週の勤務時間の半分までと書いています。
新潟県の19時間20分も、毎日1時間ずつ早く出て週5時間、という使い方なら余裕のある枠です。
期間はどちらも2年でした。
学ぶ課程が2年を超えるなら、残りの期間をどうするかも考えておく必要があります。
対象の学校にも違いがあります。
猪苗代町は、学校教育法の学校に加えて、「任命権者が認めた施設」まで広げています。
新潟県の条例には、この一文がありません。
同じ制度でも、通える先の広さが団体で変わるわけです。
ここで紹介したのは、たまたま本文を読めた2つにすぎません。
自分の自治体がこれと同じとは限らないので、必ず自分のところの条例を開いてください。
抜けた時間の分だけ、給料は減る
法律は、勤務しなかった時間について、条例の定めに従って給与を減らして払う、と定めています(26条の2第3項)。
減らすこと自体は法律が決めていて、減らし方を条例に任せている形です。
猪苗代町の条例は、1時間あたりの額の出し方まで書いています。
給料の月額と管理職手当を足して12倍し、それを週の勤務時間の52倍で割る、という計算です。
かみくだくと、1年分の給料を1年の勤務時間で割って、1時間あたりの値段を出しているわけです。
抜けた時間 × その値段が、給料から引かれます。
新潟県の条例も、抜けた1時間ごとに差し引く点は同じです。
ただし計算に入れる手当の種類がもっと多く、割る数からも人事委員会規則で決める数を引く形になっています。
同じ「1時間いくら」でも、団体によって式は違います。
週に数時間を2年続ければ、減る額は小さくありません。
学費と合わせて、事前に人事担当へ試算を頼んでおくと安心です。
| 確かめたいこと | 法律に書いてあるか | どこで分かるか |
|---|---|---|
| 給料が減るかどうか | 書いてある(減る) | 地方公務員法26条の2第3項 |
| 1時間あたりいくら減るか | 書いていない | 自治体の条例 |
| ボーナスへの影響 | 書いていない | 給与条例・人事担当 |
| 退職金への影響 | 書いていない | 退職手当条例・人事担当 |
| 共済の掛金への影響 | 書いていない | 共済組合 |
承認が消える・取り消されるとき
法律が決めているのは1つだけです。
休職か停職の処分を受けたら、承認は効力を失います(26条の2第2項)。
それ以外の取消の理由は、条例に置かれています。
新潟県と猪苗代町の条例は、ここがほぼ同じ文言でした。
- 通っている学校の課程を退学したとき
- 正当な理由がないのに休学したり、授業を頻繁に休んだりしているとき
- 職場で業務の手当てがどうしてもつかなくなり、本人が同意したとき
2つ目は、読んでおく価値があります。
早く帰っているのに授業に出ていない、は取消の理由になります。
勤務時間を削ってまで学ぶことを認めた制度なので、当然といえば当然です。
3つ目には「本人の同意」が入っています。
職場の都合だけで一方的に打ち切る形にはなっていない点も、覚えておくとよいでしょう。
国家公務員・自衛官には見当たらない
e-Gov法令検索で「修学部分休業」を引いてみました。
出てくる法令は、地方公務員法だけです。
国家公務員法にも自衛隊法にも、同じ名前の制度は置かれていません。
国の職員が働きながら学ぶ場合は、勤務時間の外で通うか、休暇や休業の制度を組み合わせて考えることになります。
仕事を休んで学ぶ制度なら、国家公務員にも自己啓発等休業があります。
こちらは公務員が大学院で学び直すには?で条文を追いました。
学び直しの制度を3つ並べる
地方公務員が学ぶために使える仕組みは、ほかにもあります。
目的も対象も違うので、並べておくと選びやすくなります。
| 修学部分休業 | 自己啓発等休業 | 大学院修学休業 | |
|---|---|---|---|
| 対象 | 常勤の地方公務員 | 常勤の地方公務員 | 公立学校の教諭・養護教諭・講師など |
| 働き方 | 働きながら一部を抜ける | 休む | 休む |
| 目的 | 大学などでの修学 | 大学などでの修学・国際貢献 | 専修免許状を取るための大学院 |
| 期間 | 条例で定める期間 | 3年以内で条例が定める | 3年以内・年単位 |
| 給料 | 抜けた時間分を減額 | 出ない | 出ない |
| 根拠 | 地方公務員法26条の2 | 地方公務員法26条の5 | 教育公務員特例法26条 |
選び方の目安は単純です。
昼間に通う必要があって、仕事を続けられないなら休業の2つ。
夕方以降の授業に間に合いさえすればよいなら、修学部分休業が合います。
そもそも授業が勤務時間の外だけで完結するなら、どの制度も使わずに通えます。
制度が必要になるのは、勤務時間と授業が重なるときだけです。
もう一つの部分休業「高齢者部分休業」
修学部分休業のすぐ隣の条文には、よく似た制度がもう一つあります。
高齢者部分休業です(26条の3)。
こちらは学ぶ目的を問いません。
条例で決めた年齢に達した職員が申請すれば、申請した日から定年退職日まで、週の勤務時間の一部を抜けられます。
条件は、公務の運営に支障がないことだけです。
給料が減ること、休職や停職で承認が消えること、細かいことを条例に任せていることは、修学部分休業と共通です。
猪苗代町の条例では、年齢を55歳と決めていました。
抜けられる時間は、修学部分休業と同じく週の勤務時間の2分の1まで。
あとから時間を延ばしたいと申し出る手順も置かれています。
親の介護が始まった、体力に合わせて働く時間を減らしたい。
そうした定年前の働き方を考えるときに、選択肢に入れておきたい制度です。
なお、子育てのための部分休業は、また別の法律にあります(地方公務員の育児休業等に関する法律19条)。
名前は似ていても、根拠も条件も別物です。
自分の自治体の条例を探す手順
ここまで読むと、結局は条例を見ないと始まらないことが分かります。
探し方は難しくありません。
- 検索で「(自治体名) 例規集」と打ち、例規集のトップを開く
- 例規集の検索窓に「修学部分休業」と入れる
- 条例が出てきたら、時間の上限・期間・対象の学校・取消の理由を読む
- 給料の減り方は、同じ条例の給与の条か、給与条例を見る
- 例規集で出てこないときは、人事担当に「条例や規則はありますか」と聞く
公立学校の先生は、どの団体の例規集を開けばよいか迷うかもしれません。
そのときは、まず学校の事務室に聞くのが近道です。
人事担当に相談するときの聞き方
相談に行くときは、次の順で聞くと話が早く進みます。
- うちの自治体に修学部分休業の条例はあるか
- 通いたい学校(大学院・専門学校など)は対象になるか
- 週に何時間まで、何年まで使えるか
- 承認までにどれくらいかかり、いつまでに申し込めばよいか
- 給料は月にいくら減る見込みか。ボーナスや退職金に影響はあるか
- 学びの内容を、どういう形で説明すればよいか
最後の問いは、遠慮せずに聞いてかまいません。
能力を伸ばす学びかどうかは承認の条件そのものなので、説明の仕方を先に知っておくほうが、お互いに手間が省けます。
働きながら学ぶ前のチェックシート
学校に出願する前に埋めておくと、制度を使えるかどうかの見通しが立ちます。分からない欄は、例規集か人事担当で埋まります。
通いたい学校と課程、授業の曜日と時間帯
授業のうち、勤務時間と重なるのは週に何時間か
自分の自治体に修学部分休業の条例はあるか(条例名)
条例の上限時間・期間・対象の学校
その学びが、いまや将来の仕事にどうつながるか
給料が月にいくら減る見込みか
学費と減る給料を合わせた、2年間の総額
このページを印刷すると、この1枚だけが出ます。ブラウザの印刷からPDFとして保存することもできます。
❓ よくある質問
Q. 会計年度任用職員でも使えますか。
A. 使えません。
法律が非常勤の職員と任期を定めて採用された職員を対象から外しているためです。
会計年度任用職員は、そのどちらにも当たります。
Q. 国家公務員にも同じ制度はありますか。
A. e-Gov法令検索で調べた限り、同じ名前の制度は地方公務員法にしかありません。
国家公務員が仕事を休んで学ぶなら、自己啓発等休業が候補になります。
Q. 通信制の大学でも対象になりますか。
A. 条例が対象にする教育施設に当たるかどうかで決まります。
スクーリングが勤務時間と重なる場合に、使えるかを人事担当に確かめてください。
Q. 資格の予備校や英会話スクールは対象ですか。
A. 条例しだいです。
新潟県の条例は大学・高専・専修学校・各種学校に限っています。
猪苗代町の条例は、任命権者が認めた施設も加えています。
Q. 何年まで使えますか。
A. 法律には年数がなく、条例が決めます。
この記事で見た2つの条例は、どちらも2年でした。
Q. 給料はどれくらい減りますか。
A. 抜けた時間の分だけ減ります。
1時間あたりの額の出し方は条例に書いてあり、団体によって違います。
自分の場合の額は、人事担当に試算してもらうのが確実です。
Q. 申し込めば必ず認められますか。
A. 必ずではありません。
仕事に支障がないこと、公務員としての能力を伸ばす学びであること。
この2つを任命権者が認めたときに承認されます。
Q. 授業をさぼったらどうなりますか。
A. 条例によっては、正当な理由のない休学や頻繁な欠席が取消の理由になります。
この記事で見た2つの条例は、どちらもそう定めていました。
Q. この記事は、いつの時点の情報ですか。
A. 2026年9月13日に、e-Gov法令検索と各団体の例規集で確認した内容です。
地方公務員法に未施行の改正はありませんでした。
まとめ
- 地方公務員は、週の勤務時間の一部を抜けて学校へ通える(地方公務員法26条の2)
- 常勤で任期の定めがない職員が対象。会計年度任用職員は外れる
- 承認の条件は仕事に支障がないことと公務の力を伸ばす学びであること
- 時間・期間・対象の学校は条例しだい。例に挙げた2団体はどちらも期間2年
- 抜けた時間の分だけ給料は減る。式は条例にある
- 国家公務員・自衛官には同じ名前の制度が見当たらない
- 年齢で使える高齢者部分休業もある(26条の3)
✏️ 筆者から一言
条例を読み比べていて意外だったのは、抜けられる時間の大きさでした。
週の勤務時間の半分まで認める条例もあり、思っていたよりずっと広い枠です。
一方で、授業に出ていなければ取り消す、という一文もきちんと入っています。
広く認めるかわりに、学ぶことには本気で向き合ってほしい。
条文からは、そんな姿勢が伝わってきます。
学びたいけれど辞めるほどではない、という人にこそ知ってほしい制度です。
📖 次に読みたい記事
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- 全体像から確かめたいなら →「公務員のキャリア形成完全ガイド」
📚 この記事で参照した一次情報
- e-Gov 法令検索|地方公務員法
- e-Gov 法令検索|教育公務員特例法
- e-Gov 法令検索|地方公務員の育児休業等に関する法律
- 新潟県例規集|職員の修学部分休業に関する条例
- 猪苗代町例規集|職員の修学部分休業及び高齢者部分休業に関する条例
最終確認 2026年9月13日。
法令・制度の記述は、年に1度と制度改正のときに見直しています。

