公立小中学校の先生の副業許可は誰が出す?地公法38条と地教行法の読み替えを条文で確かめる

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公開 2026年9月7日

親から古いアパートを相続した。
土日だけオンラインで家庭教師をしたい。
そんな相談を抱えた公立小中学校の先生が、まず迷うのは相談先です。
誰に聞けばいいのか、まわりに聞いても人によって答えがばらばら。
そんな声を、これまで何度も見かけてきました。

辞令を見ると、任命権者は都道府県教育委員会と書いてあります。
だから多くの先生が、まずそこに問い合わせようとします。

ところが、副業の許可を実際に出すのは都道府県ではなく、自分が働く市町村の教育委員会です。
同じ「教育委員会」でも、窓口が違います。

※本サイトでいう「公務員」には、独立行政法人・国立大学法人・日本銀行・日本年金機構等の職員(いわゆる準公務員)も含みます。
副業・兼業規定が国家公務員法・地方公務員法に準拠、または類似している職種を主な対象としています。

こういうねじれは、じつは先生の世界だけの話ではありません。
決める人と、そばで面倒を見る人が分かれている仕事では、どこでも起こりうることです。
ただ、先生の場合はそのねじれが法律の言葉の中に隠れていて、辞令だけを見ても気づけません。

なぜ任命権者と許可権者がずれるのか。
この記事では地方公務員法(以下、地公法)と地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下、地教行法)を突き合わせて、条文から確かめていきます。

⚠️ 先にお断りしておきます

この記事が扱うのは、市町村立の小中学校で働く先生(県費負担教職員)です。
政令指定都市の学校、都道府県立の高校、私立の学校は仕組みが違います。
詳しくは本文で触れますが、自分がどれに当たるかは辞令の任命権者欄で確かめたうえで、最終的には校長を通じて教育委員会に確認してください。

この記事の結論

📌 結論を先に

  • 副業(兼業)の許可を出すのは市町村教育委員会。任命権者である都道府県教育委員会ではない(地方公務員法38条1項、地方教育行政の組織及び運営に関する法律47条1項)
  • 理由は読み替え規定。地教行法47条1項の表が、地公法38条の「任命権者」を「市町村教育委員会」に書き換えている
  • 背景にあるのは日常の服務を市町村教育委員会が見ているという役割分担(地教行法43条1項)
  • 対象となるのは市町村立の小中学校の教職員(県費負担教職員)だけ。政令指定都市・都道府県立高校・私立は別枠
  • 許可の基準を決めるのは都道府県の人事委員会のまま。変わるのは基準を作る側ではなく、当てはめて許可を出す側

そもそも「県費負担教職員」とは、どういう立場か

市町村立の小学校・中学校で働く教職員の多くは、「県費負担教職員」と呼ばれる立場にあります。
身分は市町村の職員なのに、給料を払うのは都道府県、という組み合わせです(市町村立学校職員給与負担法1条・2条)。

対象になるのは、校長・副校長・教頭・主幹教諭・指導教諭・教諭・養護教諭・栄養教諭・事務職員など、学校を動かす主だった職種です。
非常勤の講師も一部含まれます。

県費負担教職員
身分市町村の職員
給料を払うのは都道府県
任命権を持つのは都道府県教育委員会
日常の服務を見るのは市町村教育委員会

表の3行目と4行目がずれているのが、この記事の主題です。
任命権を持つ人と、日々の勤務ぶりを見ている人が別だと、副業の許可という日常的な判断も、どちらが出すのか迷いやすくなります。

どうして、こんなにややこしい形になったのか。
もとをたどれば、お金の出どころと、人の面倒を見る人が別の団体だったからです。
小さな市町村だけでは、先生の給料をまかないきれません。
そこで都道府県が肩代わりする代わりに、採用や異動といった大きな判断も都道府県が持つ形になりました。
でも、毎日の学校の中でその先生を見ているのは、やっぱり地元の市町村です。
この2つの折り合いをつけるために、あちこちで役割が分かれています。
ちょっとややこしいですが、順番に見ていけば、そんなに難しい話ではありません。

対象になる学校と職種

県費負担教職員という言葉に当てはまるのは、小学校・中学校・義務教育学校・特別支援学校、それに中等教育学校の前期課程(中高一貫校の中学部分)で働く教職員です(市町村立学校職員給与負担法1条)。
高等学校は、原則としてこの枠に入りません。

職種対象か
校長・副校長・教頭対象
主幹教諭・指導教諭・教諭対象
養護教諭・栄養教諭対象
事務職員対象
講師(常勤)対象
講師(非常勤)一部のみ対象(後述)

学校を実際に動かしている主だった職種は、ほぼすべて入っていると考えてよい範囲です。
自分の職種がここに載っているなら、この記事の話がそのまま当てはまります。
逆に、載っていない働き方をしているなら、焦らずいったん立ち止まって、自分の任用がどれに近いかを確かめてみてください。
あわてて動くより、いったん確かめてからのほうが、結局は早く済みます。

「任命権者」なのに、都道府県教委に聞いてはいけない理由

副業の許可を定めているのは地公法38条1項です。
「任命権者の許可を受けなければ、営利企業を営むことを目的とする会社の役員を兼ねたり、自ら営利企業を営んだり、報酬を得て事業や事務に従事してはならない」と定めています(要約)。

そして地教行法37条1項は、こう書いています。

「県費負担教職員の任命権は、都道府県委員会に属する」。

この2つだけを読むと、副業の許可は都道府県教委が出す、という結論になりそうです。
実際、辞令の任命権者欄にもそう書かれています。

ところが同じ法律の47条1項に、地公法の言葉を教職員向けに読み替える表があります。
その表の1行に、こうあります。

地公法「第三十八条」の中の「任命権者」は、「市町村教育委員会」と読み替える(要約)。

つまり地公法38条を県費負担教職員に当てはめるときだけ、「任命権者」という言葉を「市町村教育委員会」に置き換えて読む、というルールです。
任命権そのものは都道府県教委に残ったまま、副業の許可という1つの場面だけ、市町村教委が代わりに判断します。

「第三十八条」が2つあるので、法律名で区別する

ここで気をつけたいのは、地公法にも地教行法にも、どちらも「第三十八条」があることです。
中身はまったく別です。

地方公務員法38条地教行法38条
見出し営利企業への従事等の制限市町村委員会の内申
内容副業(兼業)の許可人事異動を都道府県委員会が行うときの、市町村委員会からの内申
この記事との関係読み替えの対象そのもの別の話。混同注意

検索すると両方が同じ「38条」という数字で出てくるので、資料を読むときは必ずどちらの法律の38条か、法律名まで確かめてください。

なぜ市町村教委が窓口になるのか

読み替えのルールだけを見ると、唐突に感じるかもしれません。
背景には、もう1つの条文があります。

地教行法43条1項は、こう定めています。

「市町村委員会は、県費負担教職員の服務を監督する」。

服務を監督するというのは、日々の勤務ぶりを見る役割のことです。
遅刻や欠勤の扱い、勤務時間中の行動、そして副業の許可も、広い意味では服務の一部です。

任命権(採用・異動・免職の権限)は都道府県教委に残しつつ、現場に近い日常の判断は市町村教委に任せる。
この役割分担が、副業の許可という場面にも一貫して当てはまっている、と読むことができます。

基準を作るのは都道府県、当てはめるのは市町村

もう1つ、見落としやすい点があります。
地公法38条2項は、こう定めています。

「人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる」(要約)。

47条1項の読み替え表が置き換えるのは「任命権者」という言葉だけです。
「人事委員会」という言葉は読み替えの対象に入っていません。
つまり許可の基準を作るのは、いまも都道府県の人事委員会のままです。
市町村教委が変わるのは、基準を作る側ではなく、その基準にあてはめて実際に許可を出す側だけということになります。

実務では、都道府県が示す基準に沿って、市町村教委が申請を受け付け、判断する形が一般的です。
自分のまちがどちらの基準を使っているかは、市町村教委の学校教育を担当する課に聞くのが確実です。

たとえば、相続した不動産の賃貸を続けたい場合を考えてみます。
許可がいるかどうかの目安(何室まで、何棟までなら「事業」と扱わないか)は、都道府県の人事委員会規則が決めています。
その基準に照らして実際に申請を審査し、許可を出すかどうかを判断するのは市町村教委です。
基準を決める人と、当てはめて判断する人が違うので、都道府県のホームページで基準だけ確認して終わりにせず、最終的な申請先は市町村教委だと覚えておいてください。

政令指定都市の学校は、この仕組みの外にある

ここまでの話は、政令指定都市を除く市町村立の学校が前提です。
指定都市の学校は、そもそも県費負担教職員の枠に入りません。

市町村立学校職員給与負担法1条は、対象になる学校を「市(指定都市を除き、特別区を含む)町村立」と限定しています(要約)。
指定都市はかっこ書きで最初から外れています。

横浜市や大阪市のような指定都市では、学校の教職員の任命権も給料の負担も、指定都市自身が持っています(地方自治法252条の19第1項に基づく指定都市の権能。2017年度からの扱い)。
任命権者と許可権者が最初から一致しているので、この記事で説明した読み替えは働きません。

指定都市の学校に勤めている場合、都道府県教委でも周りの市町村教委でもなく、自分が住む指定都市の教育委員会が窓口です。

都道府県立高校の先生とは、ここが違う

同じ公立学校の先生でも、都道府県立高校の教職員は話がシンプルです。
県費負担教職員のような読み替えが入りません。

市町村立小中学校の教職員都道府県立高校の教職員
任命権者都道府県教育委員会都道府県教育委員会
副業の許可を出す先市町村教育委員会(読み替え後)都道府県教育委員会(そのまま)
根拠地公法38条+地教行法47条1項地公法38条のみ

都道府県立高校の先生は、任命権者と許可を出す先が最初から一致しています。
読み替えという1段階が入るのは、市町村立の小中学校だけの特徴です。

非常勤の講師も、同じ手続きが必要か

県費負担教職員には、常勤の教諭だけでなく、非常勤の講師も一部含まれます。
非常勤なら、話はまた変わってきます。

地公法38条1項には、こんなただし書きがあります。

「非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第22条の2第1項第2号に掲げる職員を除く)については、この限りでない」。

要するに、非常勤職員は原則として許可がいりません。
この扱いは市町村立の学校でも変わりません。
ただし例外が2つあり、そこに当てはまると許可が必要な側に戻ります。
会計年度任用職員のフルタイム勤務や、定年前再任用短時間勤務職員がその例外です。
パートタイムかフルタイムかの見分け方は記事12で詳しく扱っています。

🔗 あわせて読みたい

非常勤の講師として働いていて、自分に許可が要るのかどうかから確かめたい方は、パートタイムかフルタイムかで答えが分かれます。
→「会計年度任用職員の副業はどこまでOK?パートタイムなら許可はいらない理由を条文で確かめる」

実際に動くときの手順

ここまでで、誰に聞けばいいかは分かりました。
とはいえ、いきなり書類を出しに行くのは早すぎます。
まずは身近な人に話すところから始めるのが、遠回りに見えて確実です。
制度の理屈が分かったところで、実際の申請の流れを整理します。
自治体ごとに細部は違うので、大枠として見てください。

  1. 辞令や任用の書類で、自分が県費負担教職員か(市町村立の小中学校の常勤教職員か)を確かめる
  2. 校長・教頭に副業をしたい内容を相談する。学校を経由して教育委員会に話が伝わるのが一般的な流れ
  3. 市町村教育委員会の学校教育担当課に、許可申請の様式と基準を確認する
  4. 都道府県の人事委員会規則(または都道府県の規則)で定められた許可基準に照らして、申請内容が当てはまるか確認する
  5. 申請書を提出し、市町村教育委員会からの許可を待つ
  6. 許可の内容(期間・範囲)を書面で保管しておく

ここまで読んで、自分の立場が分かればもう半分終わったようなものです。
あとは、順番どおりに1つずつ聞いていくだけです。
焦って結論だけを急がず、まずは近くにいる人に声をかけてみてください。
1人で抱え込まず、誰かに話してみることで、案外あっさり道が開けることもあります。

確かめることリスト

自分の立場と、相談する順番を確認しておくと、話が早く進みます。

自分の学校は市町村立か、指定都市立か、都道府県立か

辞令の任命権者欄には、何と書かれているか

常勤か非常勤か(非常勤なら会計年度任用のフルタイムに当たらないか)

校長にはもう相談したか。相談していない場合、いつ話すか

市町村教育委員会のどの課が窓口か

許可申請に必要な様式は、どこで手に入るか

このページを印刷すると、この1枚だけが出ます。ブラウザの印刷からPDFとして保存することもできます。

❓ よくある質問

Q. 都道府県教委に聞いても意味がないのですか。

A. 任命権そのものは都道府県教委に残っているので、無意味ではありません。
ただし副業の許可という手続きの窓口としては、市町村教委に聞くのが近道です。

Q. 政令指定都市の学校に勤めています。
この記事の内容は当てはまりますか。

A. 当てはまりません。
指定都市の学校は県費負担教職員の枠に入らず、任命も給料の負担も指定都市自身が持っています。
窓口は自分が住む指定都市の教育委員会です。

Q. 都道府県立高校の教員です。
誰に許可をもらえばよいですか。

A. 都道府県立高校では読み替えが入らないので、任命権者である都道府県教委にそのまま申請します。

Q. 非常勤講師です。
許可はいりますか。

A. 多くの場合は原則不要です。
ただし会計年度任用職員のフルタイム勤務や定年前再任用短時間勤務職員に当たると、許可が必要な側に戻ります。
自分の任用がどちらかは、任用通知書で確かめてください。

Q. 私立学校の教員です。
この記事は関係ありますか。

A. 関係しません。
私立学校の教員には地公法そのものが適用されないため、副業の扱いは学校法人の就業規則によります。

Q. 校長や教頭も、同じ市町村教委に申請するのですか。

A. はい。
校長・副校長・教頭も県費負担教職員に含まれるため、教諭と同じく市町村教委が許可の窓口になります。
ただし校長自身が申請する場合、相談する相手が担当課に直接になる点だけ、教諭とは流れが変わります。

Q. この記事は、いつの時点の情報ですか。

A. 2026年9月7日に、e-Gov法令検索で地公法・地教行法・市町村立学校職員給与負担法の現行版を確認した内容です。

まとめ

  1. 市町村立小中学校の教職員(県費負担教職員)の副業許可は市町村教育委員会が出す
  2. 根拠は地方公務員法38条+地教行法47条1項の読み替え表。任命権者は都道府県教育委員会のまま動かない
  3. 背景には日常の服務監督を市町村教育委員会が持つという役割分担がある(地教行法43条1項)
  4. 許可の基準を作るのは都道府県の人事委員会。市町村教育委員会が変わるのは当てはめる側だけ
  5. 政令指定都市・都道府県立高校・私立学校はこの仕組みの外。窓口がそれぞれ違う

✏️ 筆者から一言

「任命権者に聞けばいい」という説明を、そのまま信じて都道府県教育委員会に電話をかけ、たらい回しにされた経験を持つ先生の話を聞いたことがあります。
条文を1つだけ読むと正しく見える説明が、別の条文と組み合わさった瞬間に外れる。
公務員の制度には、こういう場面がよくあります。
任命権者という言葉を鵜呑みにせず、その言葉が読み替えられていないかまで確かめる。
面倒に見えて、これが遠回りに見えていちばんの近道です。
同じような「あれ、思っていたのと違う」は、きっとほかの場面にもまだ隠れています。
1つ条文を確かめる癖がつくと、次に迷ったときも自分で調べにいけます。
むずかしい話に見えても、たどってみれば、案外すじが通っているものです。
少しずつでも、そのすじを一緒に追っていけたらと思っています。

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最終確認 2026年9月7日。
法令・制度の記述は、年に1度と制度改正のときに見直しています。

この記事を書いた人

公務員UPDATE 運営者。元公務員(警察官)。交番勤務・自動車警ら係・刑事・生活安全を経験し、現在は独立して事業を営んでいます。記事では、在職中の経験か退職後の経験かを必ず区別して書いています。

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