公開 2026年10月9日
書類の送り先を間違えた。
期限に間に合わなかった。
そのあと上司から「始末書を出しておいて」と言われて、頭が真っ白になった。
これは処分なのか。
人事に記録が残るのか。
昇進に響くのか。
誰にも聞けないまま、夜になっても気に病んでいる人は少なくないと思います。
もう1人は、「処分を受けた」と言われたものの、納得がいかない人です。
争えるのか、誰に言えばいいのか、それも分からない。
どちらの場面にも、条文で答えられる部分があります。
先に答えを言うと、法律に出てくる「懲戒処分」は4種類だけで、始末書や口頭の注意は、その中に入っていません(国家公務員法82条、地方公務員法29条)。
しかも懲戒処分には、理由を書いた書面を渡す決まりと、不服を申し立てる道があります。
「処分と言われた」ときに確かめる目印が、条文の側にあるということです。
順に見ていきます。
※本サイトでいう「公務員」には、独立行政法人・国立大学法人・日本銀行・日本年金機構等の職員(いわゆる準公務員)も含みます。
副業・兼業規定が国家公務員法・地方公務員法に準拠、または類似している職種を主な対象としています。
⚠️ 先にお断りしておきます
この記事は、一般職の国家公務員(国家公務員法)と、地方公務員(地方公務員法)の条文を読んだものです。
自衛官は別の法律なので、そのままは当てはまりません。
また、「どんな行為ならどの処分か」を決める人事院や各自治体の指針、処分を受けたあとの昇給や退職手当への影響は、確かめきれていません。
実際に処分を言い渡されたときは、職場の人事担当に加えて、必要なら弁護士などの専門家に相談してください。
この記事の結論
📌 結論を先に
- 懲戒処分は、国も地方も戒告・減給・停職・免職の4種類(国公法82条1項、地公法29条1項)
- 理由は3つだけ。法令違反・職務上の義務違反や怠慢・ふさわしくない非行
- 処分をするのは任命権者(国公法84条1項)
- 懲戒をするときは、事由を書いた説明書を渡さなければならない(国公法89条1項、地公法49条1項)
- 説明書には、審査請求ができる旨と期間が書かれる(国公法89条3項、地公法49条4項)
- 「訓告」「厳重注意」は、国公法・地公法の本文に出てこない
- 懲戒とは別に、勤務実績や心身の事情で降任・免職・休職される分限がある(国公法78条・79条、地公法28条)
そもそも「懲戒」って、何のこと?
職場では「処分」という言葉が広く使われています。
始末書を書かされたら処分、上司に注意されても処分、と感じる人もいます。
ただ、法律の言葉としての「懲戒処分」は、かなり狭い意味です。
国家公務員法は、職員が次のどれかに当たるときに、懲戒処分ができると書いています(82条1項)。
- この法律や国家公務員倫理法、またはそれらに基づく命令に違反した場合
- 職務上の義務に違反し、または職務を怠った場合
- 国民全体の奉仕者にふさわしくない非行があった場合
地方公務員法も、ほぼ同じ形です(29条1項)。
条例や規則などに違反した場合、職務上の義務に違反し、または職務を怠った場合、全体の奉仕者にふさわしくない非行があった場合、の3つです。
そして、地方公務員法は、職員がこの法律で定める事由でなければ、懲戒処分を受けることがない、とも書いています(27条3項)。
つまり、法律にある理由と種類の外で、「懲戒処分」と呼べるものは作れない、という作りです。
| 国家公務員法 | 地方公務員法 | |
|---|---|---|
| 懲戒処分の種類 | 免職・停職・減給・戒告(82条1項) | 戒告・減給・停職・免職(29条1項) |
| 理由 | 法令違反/義務違反・怠慢/ふさわしくない非行 | ほぼ同じ3つ |
| 処分をする人 | 任命権者(84条1項) | 任命権者 |
| 手続と効果 | 停職は身分を保ち給与なし(83条)。詳細は規則 | 手続と効果は条例で定める(29条4項) |
最後の行のとおり、地方公務員は、停職の長さや減給のやり方などが、自治体ごとの条例で決まります。
自分の自治体の条例は、この記事では確かめていません。
始末書や口頭注意は「処分」に入る?
ここが、この記事でいちばん知りたかったところのはずです。
答えは、条文の側から見る限り、こうです。
国家公務員法も地方公務員法も、懲戒処分として書いているのは4種類だけです。
「訓告」「厳重注意」という言葉は、どちらの法律の本文にも出てきません。
私が e-Gov の本文で数えて確かめました。
始末書も、法律のどこにも書かれていません。
ただ、だからといって「何もなかったことになる」わけではありません。
訓告や厳重注意は、各役所の内部の運用として行われているものが多く、それが人事の記録にどう残るのか、昇給や昇任にどう響くのかは、この記事では確かめきれていません。
条文に出てこないということと、記録に残らないということは、別の話です。
気になりますよね。
この線は、ひとりで推し量ろうとすると、いちばん気が重くなる部分です。
確かめる方法は、次の見出しにあります。
「処分」と言われたら、説明書をもらえたかを見る
懲戒処分には、条文に書かれた目印があります。
国家公務員法は、職員に対して懲戒処分を行おうとするときは、処分をする人が、その処分の事由を書いた説明書を、処分の際に渡さなければならないと書いています(89条1項)。
地方公務員法も、懲戒その他の意に反する不利益な処分をする際は、任命権者が説明書を渡さなければならないとしています(49条1項)。
さらに、その説明書には、人事院(地方なら人事委員会・公平委員会)に審査請求ができること、そして審査請求ができる期間を書かなければなりません(国公法89条3項、地公法49条4項)。
- 事由が書かれた書面を渡された → 懲戒処分や、それに近い不利益な処分の可能性が高い
- 口頭で注意されただけ/始末書を出しただけ → 懲戒処分の手続は踏まれていない
ここは、あくまで「目印」です。
書面が無ければ何も起きていない、と断言できるわけではありません。
ただ、「処分を受けた」という言葉が曖昧なまま不安だけが膨らんでいるなら、自分に説明書が渡されたかどうかを、まず思い出してみてください。
もし、意に反して不利益な処分を受けたと思うのに、説明書をもらっていないときは、請求できる仕組みもあります。
国家公務員は、著しく不利益な処分を受けたと思うとき、説明書の交付を請求できます(89条2項)。
地方公務員は、意に反して不利益な処分を受けたと思うとき、任命権者に説明書の交付を請求でき、請求を受けた任命権者は、その日から15日以内に交付しなければなりません(49条2項・3項)。
🔗 あわせて読みたい
上司の言動そのものがつらくて、処分以前に相談先を知りたい方は、先にこちらを読んでおくと整理しやすくなります。
→「上司の言動がつらい。これってパワハラ?公務員が相談できる窓口と「不利に扱われない」決まりを条文で確かめる」
納得いかないとき、争える?
処分を受けたあとに気になるのは、「自分の言い分を聞いてもらえる場所があるのか」でしょう。
国家公務員の場合、説明書が必要な処分を受けた職員は、人事院に対してだけ、審査請求ができます(90条1項)。
裁判で処分の取り消しを求めたいときは、審査請求に対する人事院の裁決を経たあとでなければ、訴えを起こせません(92条の2)。
地方公務員は、人事委員会または公平委員会に対してだけ、審査請求ができます(49条の2第1項)。
審査請求を受けた委員会は、口頭審理を行い、処分を承認・修正・取消しのどれかにします(50条1項・3項)。
もう一つ、押さえておきたいことがあります。
国家公務員法は、審査請求ができる処分と、法律に特別の定めがある処分を除いて、職員に対する処分については審査請求ができない、と書いています(90条2項)。
地方公務員法にも、同じ趣旨の規定があります(49条の2第2項)。
つまり、説明書が必要な処分に当たらないものは、この審査請求の道がありません。
だからこそ、「処分と言われた」ときに、それが審査請求の対象になる処分かどうかを知っておくことが、大事になります。
審査請求の期間は、説明書に書かれます。
日数は、この記事では確かめきれていません。
説明書を受け取ったら、まず期間の欄を見て、手帳やカレンダーに書いてください。
ここまで読んで、「結局、動くのは大変そうだ」と感じたかもしれません。
その感覚は自然です。
ただ、争うかどうかは別として、権利があることを知っているかどうかで、気持ちの重さは違うはずです。
懲戒とは別に、「分限」という道がある
処分と並んで、よく混ざって語られるのが「分限」です。
懲戒が「悪い行いに対する処分」なら、分限は、本人の意に反して降任・免職・休職される場合の決まりです。
国家公務員法は、職員は、法律か人事院規則で定める事由による場合でなければ、その意に反して降任・休職・免職されることはない、と書いています(75条1項)。
その事由が、次のようなものです(78条・79条)。
| 扱い | どんな場合か |
|---|---|
| 降任・免職 | 人事評価や勤務の状況から見て勤務実績がよくない/心身の故障で職務に支障がある/その官職に必要な適格性を欠く/廃職や過員が生じた(78条) |
| 休職 | 心身の故障で長期の休養が必要/刑事事件で起訴された(79条) |
地方公務員法も、ほぼ同じ形で書いています(28条1項・2項)。
ここで見てほしいのは、並べ方です。
分限の理由に「ふさわしくない行い」はありません。
勤務実績・心身・適格性・組織の都合が並んでいます。
懲戒と分限は、理由の立て方が別の制度だということです。
たとえば、病気で長く休んだ人が休職になる場面は、分限の話です。
その間の給与がどうなるかは、別の記事で扱っています。
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病気で長く休むことになったとき、給料がどうなるかが気になる方は、こちらで確かめておくと安心です。
→「病気で長く休んだら、公務員の給料はどうなる?「病気休暇」と「休職」の給与を条文で確かめる」
なお、採用されて間もない「条件付採用」の期間中の職員などには、分限についての例外があります(国公法81条)。
半年の期間中の身分は、別の記事で詳しく見ています。
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採用されて最初の半年の身分が気になる方は、こちらもあわせてどうぞ。
→「採用されて最初の半年は、身分が違う?公務員の「条件付採用」を条文で確かめる」
停職になったら、給料と身分はどうなる?
4つの懲戒処分のうち、停職だけは、身分と給与の扱いが条文に書かれています。
国家公務員法は、停職者は職員としての身分を保有するが、職務に従事しない、そして停職の期間中は給与を受けることができない、と書いています(83条2項)。
停職の期間は、1年をこえない範囲内で、人事院規則で定めます(83条1項)。
つまり、停職になっても、職員の身分は残ります。
ただ、その間の給与は出ません。
地方公務員の停職の長さや効果は、条例に任されています(地公法29条4項)。
減給の割合や期間、戒告のあとの扱いは、いずれも規則や条例の側にあります。
条文だけでは、いくら下がるのか、昇給にどう響くのかは分かりません。
不安な方は、自分の職場の規則を人事担当に確認するのがいちばん確実です。
確かめきれていないこと
| 気になること | 状況 |
|---|---|
| どんな行為がどの処分になるか | 人事院・各自治体の指針による。確かめきれていない |
| 減給の割合、停職の細かい期間 | 国は人事院規則、地方は条例。確かめきれていない |
| 戒告を受けたあとの昇給・勤勉手当・昇任 | 条文に直接の定めは見つけていない。確かめきれていない |
| 懲戒免職になったときの退職手当 | 別の法律の話。確かめきれていない |
| 訓告・厳重注意の記録の残り方 | 法律の本文に出てこない。各役所の運用 |
| 自衛官・個別法のある職員 | 別の法律。確かめきれていない |
このあたりは、条文だけでは答えが出ません。
ただ、「条文で分かること」と「分からないこと」を分けておくだけで、人事担当に何を聞けばいいかが見えてきます。
次にやること
始末書を求められた人も、処分を言い渡された人も、動く順番は同じです。
- 自分が国家公務員か地方公務員か、自衛官かを確かめる
- 何を渡されたか思い出す。事由が書かれた書面があるか、口頭か、始末書の提出だけか
- 書面があれば、期間の欄を確認して、カレンダーに書く
- 「これは懲戒処分の扱いですか」と、人事担当にそのまま聞く
- 納得いかなければ、審査請求の窓口(人事院・人事委員会・公平委員会)を調べる
- ひとりで抱えきれないときは、弁護士などの専門家に相談する
「処分と言われた」ときの確認メモ
思い出せる範囲で十分です。空いた欄は、聞くことのリストになります。
いつ、誰から、どんな言葉で言われたか
渡された書面はあるか(事由が書かれているか)
審査請求の期間の欄に書かれていた日付
始末書や報告書など、自分が出したもの
人事担当に聞くこと(懲戒の扱いか、記録はどうなるか)
自分の職員の区分(国・地方・自衛官)
相談する人(人事担当・専門家)と日程
このページを印刷すると、この1枚だけが出ます。ブラウザの印刷からPDFとして保存することもできます。
❓ よくある質問
Q. 始末書を書いたら、懲戒処分になりますか。
A. 国家公務員法も地方公務員法も、懲戒処分として書いているのは4種類だけで、始末書は出てきません。
ただし、始末書が人事の記録にどう残るかは、確かめきれていません。
Q. 懲戒処分にはどんな種類がありますか。
A. 戒告・減給・停職・免職の4種類です。
Q. 「訓告」や「厳重注意」は、法律に書いてありますか。
A. 国家公務員法と地方公務員法の本文には出てきません。
各役所の内部の運用として行われるものなので、扱いは職場に確かめてください。
Q. 処分を受けたら、理由の書面はもらえますか。
A. 懲戒処分をするときは、処分の事由を書いた説明書を渡さなければならないとされています(国公法89条1項、地公法49条1項)。
もらっていないときは、交付を請求できます(国公法89条2項、地公法49条2項)。
Q. 処分に納得できないときは、どこに言えばいいですか。
A. 国家公務員は人事院に、地方公務員は人事委員会または公平委員会に、審査請求ができます。
期間は説明書に書かれるので、受け取ったら必ず確認してください。
Q. 停職になったら、給料は出ますか。
A. 国家公務員は、停職の期間中、給与を受けることができません。
職員の身分は残ります。
地方公務員の停職の効果は、条例で定められます。
Q. 懲戒と分限は、どう違いますか。
A. 懲戒は、法令違反・義務違反や怠慢・ふさわしくない非行を理由とする処分です。
分限は、勤務実績・心身の事情・適格性・組織の都合などを理由に、意に反して降任・免職・休職される場合の決まりです。
Q. この記事は、いつの時点の情報ですか。
A. 2026年10月9日に、e-Gov 法令検索で、国家公務員法と地方公務員法を確かめた内容です。
国家公務員法には2026年11月2日に施行される改正がありますが、この記事で引いた条文は現行と同じ文です。
まとめ
- 懲戒処分は戒告・減給・停職・免職の4種類だけ
- 懲戒の理由は法令違反・義務違反や怠慢・ふさわしくない非行の3つ
- 「訓告」「厳重注意」「始末書」は、法律の本文に出てこない
- 懲戒処分のときは、事由を書いた説明書が渡される。目印になる
- 不服があれば審査請求ができる。期間は説明書に書かれる
- 懲戒とは別に、意に反する降任・免職・休職を定めた分限がある
✏️ 筆者から一言
私は、迷ったらまず動いて、ずれたら直していくほうです。
ただ、「処分」という言葉は、聞いただけで足が止まります。
止まっているあいだに、何が起きたのかを勝手に大きく想像してしまうものです。
だから私は、渡された書面があるか、口頭だけだったかを確かめるのも、立派な行動だと思っています。
条文を読んで分かったのは、懲戒には理由も種類も書面もあって、実はかなり輪郭がはっきりした制度だということでした。
分からないままにしておくより、人事担当に一度聞いてしまったほうが、気持ちはずっと軽くなると思います。
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