公務員の在職中の転職活動、どこまでOK?「利害関係企業」への求職規制を条文で確かめる

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公開 2026年9月14日

平日の夜、転職サイトで気になる会社を見つけた。
条件もいいし、いまの経験も活かせそうだ。
応募ボタンを押す直前で、ふと手が止まる。

この会社、うちの係が補助金を出している相手じゃなかったか。

公務員の転職活動は、民間の人と同じようにはいきません。
とくに国家公務員には、在職中に「どこへ」応募してよいかを縛るルールが法律にあります。
しかも、国家公務員・地方公務員・自衛官で中身がかなり違います。

この記事では、仕事に関わりのある会社へ転職しようとするときのルールを、職種ごとに分けて見ていきます。

※本サイトでいう「公務員」には、独立行政法人・国立大学法人・日本銀行・日本年金機構等の職員(いわゆる準公務員)も含みます。
副業・兼業規定が国家公務員法・地方公務員法に準拠、または類似している職種を主な対象としています。

⚠️ 先にお断りしておきます

自分の応募先が「仕事に関わりのある会社」に当たるかどうかは、担当している仕事の中身で決まります。
この記事は、法律と政令が決めている枠を紹介するものです。
迷う応募先があるときは、応募する前に人事担当に確かめてください。

この記事の結論

📌 結論を先に

  • 転職活動そのものは、公務員でも禁止されていない
  • 国家公務員は、自分の仕事に関わりのある会社への求職が原則できない(国家公務員法106条の3)
  • 関わりのある会社とは、許認可・補助金・検査・契約などで自分が担当している相手
  • 課長補佐級より下の職員など、この規制がかからない人もいる
  • 内定を承諾したら、国家公務員は速やかに届け出る(106条の23)
  • 地方公務員には、在職中の求職を縛る条文が法律に無い。ただし条例を確かめる
  • 自衛官にも国と同じ骨格の規制がある(自衛隊法65条の3)
  • 辞めたあと2年間は、元の職場への働きかけが禁じられる

転職活動そのものは、禁止されていない

まず安心してほしいのは、公務員が在職中に転職先を探すこと自体は禁止されていない、という点です。
転職サイトに登録する。
説明会に行く。
仕事と無関係の会社に応募する。
どれも法律で止められてはいません。

縛りがかかるのは、応募先が自分の仕事と利害関係のある会社のときです。
許認可を出している相手に「採用してください」と頼めば、仕事の判断がゆがんで見えてしまいます。
法律が止めたいのは、そこです。

国家公務員地方公務員自衛官
在職中の求職の規制ある法律には無いある
根拠国家公務員法106条の3(条例を確認)自衛隊法65条の3
内定後の届出任命権者へ法律には無い防衛大臣へ
辞めたあとの働きかけ規制ある(106条の4)ある(地公法38条の2)ある(65条の4)

ここからは、いちばん規制の厚い国家公務員から順に見ていきます。

「仕事に関わりのある会社」とはどこか

法律は、規制の対象を「利害関係企業等」と呼んでいます。
中身は政令が決めていて、職員が仕事として携わる事務ごとに7つに分かれます(職員の退職管理に関する政令4条)。

自分が担当している仕事規制の対象になる相手
許認可を出す許認可を受けて事業をしている会社、申請中の会社、申請しようとしていることが明らかな会社
補助金を出す補助金を受けて事業をしている会社、申請中の会社、申請しようとしていることが明らかな会社
法令にもとづく立入検査・監査検査を受けている会社、受けようとしていることが明らかな会社
不利益処分をする処分の相手になる会社
法令にもとづく行政指導いま指導を受けている会社
契約の事務契約中の会社、申込み中の会社(自分が携わった契約の総額が2千万円未満の相手は除く)
犯罪の捜査・公訴など捜査や公訴を受けている会社

大事なのは、基準が「自分が担当している仕事」になっていることです。
同じ省の別の局が補助金を出している会社でも、自分がその事務に携わっていなければ、この表には当てはまりません。

逆に、自分の係が検査に入っている会社は、たとえ有名な大企業でも対象になります。
応募先を選ぶときは、まず自分の担当業務の相手先を思い浮かべてみてください。

してはいけない4つのこと

利害関係のある会社に対して、在職中にしてはいけないことは4つです。
離職後にその会社や子会社で働くことが目的なら、どれも同じように禁じられます。

してはいけないこと転職活動でいうと
自分の情報を渡す履歴書や職務経歴書を送る、面接で経歴を話す
ポストの情報をくれと頼む募集の有無や条件を問い合わせる
そのポストに就かせてと求める採用してほしいと頼む
就くことを約束する内定を承諾する

つまり、応募から内定承諾まで、ほぼすべての場面が含まれます。
「応募だけならセーフ」ではありません。

子会社も対象に入っている点にも注意が必要です。
政令は、議決権の半分を超えて持たれている会社を子会社として扱っています(政令1条)。
親会社が利害関係企業なら、その子会社への応募も同じ扱いになります。

この規制がかからない人・場合

ここまで読んで「転職なんて無理だ」と思った人もいるかもしれません。
ただ、法律はこの規制がかからない場合をいくつも用意しています。

課長補佐級より下の職員

組織の意思決定を実質的に左右しない職員は、そもそもこの規制の外です。
政令は、その範囲を国家公務員倫理法の「本省課長補佐級以上の職員」に当たらない人と決めています(政令7条)。

行政職俸給表(一)でいえば、5級以上が課長補佐級以上です(国家公務員倫理法2条2項)。
4級以下なら、この求職の規制はかかりません。
ほかの俸給表にも、それぞれ線が引かれています。

承認を受けた場合

課長補佐級以上でも、再就職等監視委員会の承認を受ければ応募できます。
承認できるのは、次の4つのどれかに当たり、公務の公正さを損なうおそれがない場合です(政令8条1項)。

承認できる場合イメージ
相手との仕事に、自分の裁量の余地が少ない法令どおりに処理するだけの定型的な事務
会社が、自分の高い専門知識を必要として声をかけてきた研究職や技術職への招へい
会社を経営する親族から頼まれた家業を継ぐ
一般に募集していて、公正に選考される公募の求人に応募する

公募への応募も、自動的にセーフになるわけではありません。
承認を受けて、はじめて応募できるという順番です。
ただし、いま検査に入っている相手など特に関係が近い場合は、専門知識や親族の場合でも承認の対象から外れます。

官民人材交流センターの紹介

官民人材交流センターから紹介された会社とのやり取りも、規制の外に置かれています(106条の3第2項3号)。

内定を承諾したら、届け出る

国家公務員は、辞めたあとに会社などで働くことを約束したら、速やかに任命権者へ届け出ることになっています(106条の23)。

これは利害関係のある会社かどうかに関係ありません。
課長補佐級より下の職員も含めて、届け出の対象です。
約束の内容が変わったときや、約束がなくなったときも、あらためて届け出ます(政令26条)。

届出を受けた任命権者は、規制の趣旨をふまえて配置を考えることになっています。
内定先と関わる仕事からは外れる配置になりうる、ということです。
黙って担当を続けるより、本人にとっても安全です。

管理職職員の場合は、任命権者から内閣総理大臣へも通知されます。
行政職俸給表(一)なら7級以上が管理職職員です(政令27条)。
管理職職員だった人は、辞めたあと2年間、再就職先を届け出る決まりもあります(106条の24)。

破ったらどうなるか

求職の規制に違反しても、それだけで刑罰を科す条文は、罰則の章にありません。
ただし法律違反なので、懲戒処分の対象になります(82条1項1号)。
免職もありうる、ということです。

話が変わるのは、仕事で不正をして、その見返りに再就職を求めた場合です。
こちらは3年以下の拘禁刑が定められています(112条1号)。

行為どうなるか根拠
利害関係企業へ求職した懲戒処分の対象国家公務員法82条1項1号
不正な職務の見返りに再就職を求めた・約束した3年以下の拘禁刑国家公務員法112条1号
管理職職員だった人が再就職の届出をしない10万円以下の過料国家公務員法113条2号

地方公務員は?

市役所や県庁、消防、都道府県警察、公立学校で働く地方公務員には、在職中の求職を縛る条文が法律に置かれていません。

地方公務員法の退職管理の節を読むと、中心は辞めたあとの働きかけの規制です(38条の2)。
国家公務員法106条の3にあたる条文は、この節にありません。

ただし、それで話は終わりません。
地方公務員法は、自治体に対して、国の退職管理の趣旨をふまえて必要な措置をとるよう求めています(38条の6第1項)。
さらに、辞めたあとの再就職について、条例で元職員に届出をさせることもできます(同条2項)。

つまり、自治体によっては条例や規則で独自のルールを置いている可能性があるわけです。
法律に無いから何もしなくてよい、とは言い切れません。
例規集で「退職管理」と検索してみてください。

もう一つ、仕事で関わっている業者へ応募するなら、法律の規制とは別に、周りからどう見えるかは考えておきたいところです。
担当を外してもらうよう早めに相談するのが、いちばん揉めない進め方です。

自衛官は?

自衛官には、国家公務員とほぼ同じ骨格の規制が自衛隊法に置かれています(65条の3)。
利害関係企業への求職の禁止、規制がかからない場合、承認の仕組みまで、形は同じです。

自衛官ならではの違いが一つあります。
防衛省の就職の援助を受けて、利害関係企業とやり取りする場合は規制の外になっている点です(同条2項3号)。

この援助の対象は、定年が65歳に満たない自衛官や、任用期間を決めて採用された自衛官などです(65条の2第2項1号)。
若いうちに定年や任期満了を迎える人を、防衛大臣が送り出す仕組みになっています(65条の10)。

若年定年等隊員それ以外の隊員
対象の例定年が65歳未満の自衛官、任期制の自衛官など上記以外の隊員
規制の外になる紹介防衛大臣の就職の援助官民人材交流センターの紹介
求職の承認をする人防衛大臣内閣総理大臣
内定後の届出先防衛大臣防衛大臣

違反した場合は、自衛隊法違反として懲戒処分の対象になります(46条1項3号)。
自衛官の兼業の承認については、自衛官の副業・兼業は誰が認める?で条文を追っています。

辞めたあとも2年間続く「働きかけ」の規制

転職したあとにも、気をつけるルールがあります。
元の職場への働きかけの規制です。
こちらは国家公務員にも地方公務員にもあります。

中身はこうです。
辞めたあと2年間は、辞める前の5年間にいた部署の職員に対して、その5年間に自分が担当していた契約や処分について、「こうしてほしい」「こうしないでほしい」と頼んではいけません(国家公務員法106条の4、地方公務員法38条の2)。

国家公務員地方公務員
期間辞めてから2年間辞めてから2年間
相手辞める前5年間にいた部署の職員辞める前5年間にいた組織の職員
対象の事務その5年間の職務に属する契約・処分その5年間の職務に属する契約・処分
不正を求めない働きかけ10万円以下の過料10万円以下の過料
不正を求める働きかけ1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

入札への参加や、公表されている情報を求めることなどは、この規制の外です。
逆に、元の同僚に「今度の契約、うちに有利にしてくれないか」と頼むのは、はっきり禁じられています。

職員の側にも、こうした働きかけを受けたら届け出る決まりがあります。
転職先で元の職場を相手にする仕事に就くなら、この線を先に頭に入れておくと安心です。

転職活動を始める前の手順

ここまでをふまえて、応募の前にやっておきたいことを順番に並べます。

  1. 自分が国家公務員・地方公務員・自衛官のどれかを確かめる
  2. 国家公務員・自衛官なら、自分が課長補佐級以上に当たるかを確かめる
  3. いま担当している許認可・補助金・検査・契約などの相手先を書き出す
  4. 応募したい会社と子会社が、その書き出しに入っていないかを見る
  5. 入っていたら、応募の前に人事担当に相談する。承認が必要かを聞く
  6. 地方公務員なら、例規集で「退職管理」を検索し、独自のルールがないか見る
  7. 内定を承諾したら、届出が必要かどうかを人事担当に確かめる

辞めるかどうか自体をまだ迷っているなら、公務員を辞めたい・辞めるべき?の判断基準から読むのがおすすめです。

応募する前のチェックシート

応募先を決めたら、履歴書を送る前に埋めてみてください。埋まらない欄があれば、そこが人事担当に聞くポイントです。

自分の身分(国家公務員・地方公務員・自衛官)と俸給表の級

いま担当している許認可・補助金・検査・契約の主な相手先

応募したい会社と、その親会社・子会社

応募先が、担当業務の相手先に入っているか

入っている場合、承認が要るか・担当を外れられるか(人事担当に聞いた結果)

地方公務員の場合、自治体の退職管理の条例・規則の有無

内定を承諾したときの届出先と期限

このページを印刷すると、この1枚だけが出ます。ブラウザの印刷からPDFとして保存することもできます。

❓ よくある質問

Q. 公務員が在職中に転職サイトへ登録してもいいですか。

A. 登録そのものを禁じる条文はありません。
国家公務員や自衛官が気をつけるのは、自分の仕事と利害関係のある会社へ応募したり、連絡を取ったりする場面です。

Q. 補助金を出している会社の子会社に応募するのもだめですか。

A. 国家公務員の場合、子会社も規制の対象に入っています。
親会社が自分の担当業務の相手なら、子会社への応募も同じ扱いです。

Q. 自分は係員です。
規制はかかりますか。

A. 国家公務員なら、本省課長補佐級以上に当たらない職員は、求職の規制がかかりません。
行政職俸給表(一)なら4級以下です。
ただし内定を承諾したときの届出は、級にかかわらず必要です。

Q. 公募の求人なら応募してもいいですか。

A. 課長補佐級以上で、応募先が利害関係企業に当たる場合は、公募でも承認を受けてからになります。
公正な選考が行われる公募は、承認できる場合の一つとして政令に挙がっています。

Q. 市役所の職員です。
担当業者に転職しても法律違反になりませんか。

A. 地方公務員法には、在職中の求職を縛る条文はありません。
ただし自治体が条例などで独自のルールを置いている場合があります。
例規集で確かめたうえで、担当を外してもらうよう早めに相談するのが安全です。

Q. 違反したら逮捕されますか。

A. 国家公務員法の罰則に、求職の規制違反そのものへの刑罰はありません。
懲戒処分の対象にはなります。
仕事で不正をして、その見返りに再就職を求めた場合は、3年以下の拘禁刑の対象です。

Q. 任期制の自衛官です。
援護で紹介された会社が取引先でも大丈夫ですか。

A. 防衛大臣の就職の援助を受けて利害関係企業とやり取りする場合は、求職の規制の外になっています。
内定を承諾したときの防衛大臣への届出は必要です。

Q. 辞めたあと、元の職場に営業に行ってもいいですか。

A. 営業そのものは禁じられていません。
ただし辞めてから2年間は、辞める前5年間に担当していた契約や処分について、元の部署の職員に有利な扱いを頼むことが禁じられています。

Q. この記事は、いつの時点の情報ですか。

A. 2026年9月14日に、e-Gov法令検索で確認した内容です。
国家公務員法・自衛隊法・政令には未施行の改正がありましたが、この記事で引いた条文の中身は変わらないことを確かめています。

まとめ

  1. 転職活動そのものは、公務員でも禁止されていない
  2. 国家公務員は担当業務の相手先とその子会社への求職が原則できない
  3. 応募・問い合わせ・採用の依頼・内定承諾の4つが対象
  4. 課長補佐級より下の職員や、承認を受けた場合は規制の外
  5. 内定を承諾したら任命権者へ届け出る(級にかかわらず)
  6. 地方公務員には法律上の求職規制がない。条例は確かめる
  7. 自衛官は国と同じ骨格。就職の援助によるやり取りは規制の外
  8. 辞めたあと2年間は、元の職場への働きかけに注意

✏️ 筆者から一言

転職を考え始めたとき、最初に気になるのは「辞めたあと食べていけるか」だと思います。
けれど条文を読んでみると、法律が気にしているのは、辞める前の数か月のふるまいでした。
仕事で向き合っている相手に、自分の将来を頼まない。
書いてあるのは、突き詰めるとそれだけです。
ルールを知っていれば、後ろめたさを抱えずに堂々と次を探せます。
動く前に、自分の担当業務の相手先を一度だけ書き出してみてください。

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最終確認 2026年9月14日。
法令・制度の記述は、年に1度と制度改正のときに見直しています。

この記事を書いた人

公務員UPDATE 運営者。元公務員(警察官)。交番勤務・自動車警ら係・刑事・生活安全を経験し、現在は独立して事業を営んでいます。記事では、在職中の経験か退職後の経験かを必ず区別して書いています。

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