講演を頼まれた。謝礼は受け取っていい?公務員の「講演・原稿の報酬」と許可を条文で確かめる

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公開 2026年10月7日

知り合いの団体から、秋の勉強会で話してもらえないかと頼まれた。
謝礼も出るという。
ありがたい話だし、断るのは惜しい。
でも、謝礼を受け取っていいのかが分からない。
上司に聞くのも、なんだか大ごとにしてしまいそうで気が重い。
そう思って、返事を保留している人は少なくないはずです。

もう1人は、Webメディアや出版社から、原稿や本の監修を頼まれた人です。
自分の名前で何かを出せるのはうれしい。
けれど、公務員が原稿料を受け取っていいのか、考えたことがなかった。
その引っかかりにも、条文で答えられます。

先に答えを言うと、報酬をもらって講演や執筆をするなら、国の職員は先に許可を取るのが基本です(国家公務員法104条)。
さらに、頼んできた相手が仕事上の利害関係者なら、許可とは別に、倫理監督官の承認も要ります(国家公務員倫理規程9条)。
順に確かめます。

※本サイトでいう「公務員」には、独立行政法人・国立大学法人・日本銀行・日本年金機構等の職員(いわゆる準公務員)も含みます。
副業・兼業規定が国家公務員法・地方公務員法に準拠、または類似している職種を主な対象としています。

⚠️ 先にお断りしておきます

この記事は、一般職の国家公務員の法律と政令を読んだものです。
地方公務員は、地方公務員法と自治体の規則で決まるので、そのままは当てはまりません。
公立学校の先生と自衛官は別の決まりがあり、今回は一次情報を取っていないので書きません。
また、「講演1回でいくらまでなら許可がいらないか」といった線は、条文には書かれていません。
その点は確かめきれていないので、最後は職場の人事・服務の担当に聞いてください。

この記事の結論

📌 結論を先に

  • 報酬を得て、他の事業や事務に従事するには、許可が要る(国家公務員法104条)
  • 条文に「講演」という言葉はない。ただ、倫理規程は講演・著述・監修を名指しして、許可を得てするものと分けて書いている
  • 許可を出すのは所轄庁の長。基準は特別の利害関係がなく、職務に支障がないこと
  • 頼んできたのが利害関係者なら、倫理監督官の承認があらかじめ要る(倫理規程9条)
  • 課長補佐級以上は、利害関係者などから受けた報酬が1件5000円超なら、四半期ごとに報告する(倫理法6条)
  • 補助金で作る本や、自分の組織が過半数を買う本の監修・編さんの報酬は、受け取れない(倫理規程6条)

講演や原稿の謝礼は、まず「兼業の許可」の話になる

国家公務員法は、報酬を得て他の事業や事務に従事するときの決まりを置いています。
営利企業以外の団体の役員や顧問、評議員を兼ねるときも、そのほかどんな事業や事務に従事するときも、許可が要る、という書き方です(国家公務員法104条)。

条文に「講演」や「原稿」という言葉はありません。
ここは、少し不親切だと思います。
読者が知りたいのは、勉強会で1時間話すことが「事業に従事」なのか、どこまでなら許可なしでいいのかです。
ところが条文は、「報酬を得て、いかなる事業にも事務にも」と、ざっくり広く書いているだけです。

手がかりは、倫理規程にあります。
倫理規程9条は、講演、討論、講習や研修での指導、著述、監修、編さん、ラジオやテレビの出演を並べ、これらを「講演等」と呼んでいます。
そして、国家公務員法104条の許可を得てするものは、この条文の対象から外す、と書いています(倫理規程9条1項)。

この書き方は、報酬を得て講演や著述をする場面が、104条の許可の対象になりうることを、法令の側が前提にしている形です。
私は、「報酬をもらって人前で話す・文章を書くなら、まず許可を疑う」というのが、条文から読める安全な出発点だと考えています。

場面まず見る条文ひとこと
報酬をもらって、勉強会で話す国家公務員法の兼業許可兼業の許可の話
報酬をもらって、原稿を書く国家公務員法の兼業許可同じく許可の話
頼んできたのが、仕事上の利害関係者倫理規程の講演等の決まり許可とは別に、承認が要る
補助金で作る本の監修を頼まれた倫理規程の監修の禁止報酬を受け取れない

ここまで読んで、「やっぱり面倒そうだ」と感じたかもしれません。
でも、確かめる相手は人事・服務の担当の1か所で足ります。
頼まれた段階で一度聞いておけば、あとで「実は許可が要った」と青くなることはありません。

許可は誰が出して、何を見られる?

許可を出す権限は、条文のうえでは内閣総理大臣と所轄庁の長にあります(国家公務員法104条)。
ただ、職員の兼業の許可に関する政令は、この権限を所轄庁の長に委任できると書いていて(政令1条)、内閣官房令は、ほとんどの職員について、実際に所轄庁の長へ委任しています(内閣官房令5条)。
つまり、ふつうの職員なら、自分の省庁の長が許可を出す側です。
窓口は、人事課や服務の担当になります。

許可の基準は、内閣官房令に書かれています。
自分の官職と、兼業先の団体・事業・事務との間に、特別の利害関係がなく、またはその心配がなく、かつ、職務の遂行に支障がないと認めるときに限って、許可できます(内閣官房令1条)。

「限って」とあるので、基準に合わなければ許可は出ません。
逆に言えば、見られるのは2点です。

  • 兼業先と自分の官職の間に、特別な利害関係がないか(利害関係が生まれそうでないか)
  • 本来の職務に支障が出ないか

申請は、決まった様式の兼業許可申請書で行います(内閣官房令2条)。
許可の記録は、台帳に残されます。
許可年月日、氏名と官職、兼業先とその職名、予定期間が記載されます(内閣官房令4条)。
表に出ない処理ではなく、記録として残るものです。
だからこそ、正面から出したほうが話が早いと私は思っています。

もう1つ、時間の話があります。
許可が与えられたときは、許可の範囲内で、割り振られた正規の勤務時間の一部をさけます(政令2条)。
平日の昼に講演をするなら、許可だけでなく、勤務時間の扱いも整える必要があるということです。
その具体的な処理は職場ごとに決まっているので、申請のときにいっしょに聞いてください。

🔗 あわせて読みたい

講演のほかにも、副業全体で何が許可の対象になるのか整理したいなら、先に副業・兼業の線引きの全体像を見ておくと、位置づけがつかみやすくなります。
→「公務員の副業・兼業はどこまでOK?2026年4月の制度改正を一次情報で整理」

頼んできたのが「利害関係者」なら、もう1つ関門がある

ここからが、この記事のいちばん大事なところです。
講演を頼んできた相手が、自分の仕事の相手方だった場合です。

倫理規程は、職員が仕事で関わる事務ごとに、「利害関係者」を決めています(倫理規程2条)。
たとえば、許認可をする事務なら、その許認可を受けて事業をしている事業者や、申請している事業者。
補助金を交付する事務なら、補助金を受けている事業者。
立入検査や監査、不利益処分、行政指導の相手方。
国の契約を結んでいる事業者も入ります。

この利害関係者から依頼されて、報酬を受けて、講演等をしようとするときは、あらかじめ倫理監督官の承認を得なければなりません(倫理規程9条1項)。
「あらかじめ」なので、話してしまってから届けるのでは遅くなります。

ここで、許可と承認の違いを整理しておきます。

兼業の許可倫理監督官の承認
根拠国家公務員法の兼業許可国家公務員倫理規程の講演等
守る目的職務への支障・利害関係を防ぐ職務の公正さへの疑いを防ぐ
対象になる場面報酬を得て事業・事務に従事するとき利害関係者の依頼で、報酬を受けて講演等をするとき
相談先所轄庁の人事・服務の担当倫理監督官
104条の許可があるとき許可を得てするものは、承認の対象から外れる

表のいちばん下に注目してください。
倫理規程9条は、104条の許可を得てするものを、承認の対象から外しています。
つまり、許可を得ていれば、そのぶんは承認の手続は別に要らない形です。
どちらの手続で動くのかは、職場の運用で決まっているので、担当に「この依頼はどちらで進めますか」と聞いてください。

倫理監督官は、利害関係者から受ける報酬について、職務の種類や内容に応じて、職員の参考になる基準を定めることになっています(倫理規程9条2項)。
基準の中身は省庁ごとに違うはずで、今回は確かめきれていません。
自分の省庁のものは、倫理監督官に聞けば出してもらえます。

謝礼を受け取ったあと、報告が要る人もいる

承認や許可を取って受け取ったあとにも、もう1つ手続があります。
対象になるのは、本省課長補佐級以上の職員です。

「課長補佐級」は、肩書きではなく、給与の級で決まります。
たとえば行政職俸給表(一)なら、5級以上の職員です(倫理法2条2項)。
係長のつもりでも、級が5級以上なら、この報告の対象に入りえます。
自分の級がどこに当たるかは、給与明細か人事の担当で分かります。

報告の対象になる報酬は、倫理規程11条が決めています。
利害関係者に当たる事業者から受けた講演等の報酬。
もう1つは、利害関係者でなくても、自分の現在または過去の職務に関係する事項についての講演等の報酬です(倫理規程11条1項)。

報告の条件は、倫理法に書かれています。
報酬の額が1件につき5000円を超えるとき、1月から3月、4月から6月、といった四半期ごとに、翌四半期の初日から14日以内に、贈与等報告書を提出します(倫理法6条1項)。

確かめること条文のとおり
報告するのは誰か本省課長補佐級以上(行政職(一)なら5級以上など)
報告の対象になる報酬利害関係者から受けた講演等の報酬。または職務に関係する事項の講演等の報酬
金額の線1件につき5000円を超えるとき
いつまでに翌四半期の初日から14日以内(四半期は1〜3月、4〜6月、7〜9月、10〜12月)

たとえば、10月に利害関係者から講演の報酬を受けたなら、10〜12月の四半期の次の日、つまり1月1日から14日以内に提出する計算になります。
年末の忙しい時期に忘れそうになる、いちばんの落とし穴です。
受け取った日と金額は、その場でメモしておくと安心です。

ちなみに、この報告は、あとで閲覧の対象になります。
提出期限の翌日から60日を過ぎた日の翌日以後、閲覧できます。
「どうせ誰も見ない」と思わず、淡々と出しておくのが、いちばん気楽です。

本の監修・編さんには、別の禁止がある

出版社から、「この本の監修をお願いできませんか」と言われた場合です。
ここには、先ほどの許可・承認とは別の、はっきりした禁止があります。

職員は、次の2種類の書籍等について、監修や編さんの報酬を受けてはいけません(倫理規程6条1項)。

  • 補助金等や、国が直接支出する費用で作られる書籍等
  • 作成数の過半数を、自分が属する国の機関や行政執行法人が買い入れる書籍等

つまり、国のお金で作る本や、自分の役所が大量に買う本の監修で、報酬を受け取ることはできません。
国の予算で作られる解説書や手引きの監修を頼まれたときは、ここを疑います。

書籍等には、紙の本だけでなく、電子的な形で記録した文字や図、音、映像、プログラムを含む物も入ります。
条文は「書籍、雑誌等の印刷物又は電子的方式…により…記録した物」と広く書いています(倫理規程6条1項)。
電子書籍や動画教材も、同じ目で見たほうが安全です。

なお、この禁止は「監修又は編さん」の報酬についてです。
自分の原稿を寄せる執筆そのものは、この禁止の文言には出てきません。
ただ、執筆は「著述」に入り、利害関係者からの依頼なら承認の対象になります。

話す中身にも、守る線がある

許可や承認が下りても、話してよいことが広がるわけではありません。

国の職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはなりません。
この義務は、職を退いたあとも続きます(国家公務員法100条1項)。
また、官職の信用を傷つけ、官職全体の不名誉となる行為もしてはいけません(国家公務員法99条)。

講演で、「現場ではこうなっています」と話したくなるのは自然な気持ちです。
聴く人もそこを聞きたがります。
でも、仕事で知った未公表の情報や、個人が特定できる話は、線の外です。
公表されている資料だけで組み立てる。
迷ったら、スライドを先に上司か担当に見せる。
これは、法律に書いてある手続ではなく、私の勧める段取りです。

謝礼が出る・出ないにかかわらず、守秘の義務は同じです。
無報酬の勉強会で、つい口が滑った、というほうが実は多そうです。

許可の対象にならない人もいる

非常勤職員と臨時的職員には、104条は適用されません(職員の兼業の許可に関する政令3条)。
ただし、短時間勤務の官職を占める職員は、この例外に入りません。
短時間勤務の官職の職員は、許可の対象のままです。

会計年度任用職員のような地方の非常勤は、地方公務員法で別に決まります。
地方公務員法38条1項は、任命権者の許可を受けないと、報酬を得ていかなる事業や事務にも従事してはならないと書き、非常勤職員については、短時間勤務の職を占める職員などを除いて、この制限を外しています。
許可の基準は、人事委員会規則や自治体の規則で定められます(同条2項)。
詳しくは、会計年度任用職員の記事で確かめてください。

地方公務員の講演・原稿については、国の倫理規程がそのまま当てはまるわけではありません。
自治体の倫理条例や規則に、似た決まりがあるかどうかは、自治体ごとに違います。
この記事では確かめきれていないので、人事課に聞くのが確実です。

次にやること

頼まれたとき、あわてないように、順番に並べます。

  1. 自分が国の職員か、地方の職員か、先生か、自衛官かを確かめる
  2. 返事の前に、「報酬が出るか」「誰が頼んできたか」「いつ・どこで・何分か」を聞いてメモする
  3. 頼んできた相手が、自分の仕事の相手方(許認可・補助金・検査・契約など)に当たらないか確かめる
  4. 報酬が出るなら、人事・服務の担当に、許可の手続を聞く
  5. 利害関係者に当たりそうなら、倫理監督官に、承認の手続を聞く
  6. 本の監修なら、国のお金で作られる本か、自分の役所が大量に買う本かを確かめる
  7. 課長補佐級以上なら、受け取った日と金額を記録して、報告の期限を手帳に書く

講演・原稿の依頼メモ

分かるところだけで十分です。空いた欄は、担当に聞くことのリストになります。

頼んできた人・団体

依頼の中身(講演・原稿・監修・出演)と日時

報酬の有無と金額、実費だけか

相手が自分の仕事の相手方か(許認可・補助金・検査・契約など)

平日か休日か(平日なら勤務時間の扱い)

話す・書く内容に、仕事で知った情報が入っていないか

担当に聞きたいこと

このページを印刷すると、この1枚だけが出ます。ブラウザの印刷からPDFとして保存することもできます。

❓ よくある質問

Q. 講演の謝礼が数千円でも、許可は要りますか。

A. 条文には、金額の下限が書かれていません。
国家公務員法の兼業許可は「報酬を得て」と書くだけです。
数千円なら要らない、という線は、条文からは読み取れません。
人事・服務の担当に確かめてください。

Q. 無報酬の勉強会なら、何も手続はいりませんか。

A. 兼業の許可は「報酬を得て」従事する場合の決まりです。
無報酬なら、対象外になりうる形です。
ただし、勤務時間中に行くなら職務専念の問題があり、守秘の義務は報酬の有無に関係なく続きます。

Q. 原稿料はどうなりますか。

A. 「著述」は、倫理規程の「講演等」に入っています。
報酬を得て書くなら、兼業の許可の対象になりうる場面です。
頼んできたのが利害関係者なら、倫理監督官の承認も要ります。

Q. 交通費だけもらう場合は?

A. 実費だけを受け取る場合の扱いは、条文からは線が引けません。
確かめきれていないので、事前に担当に聞いてください。

Q. 課長補佐級以上の報告は、全員が対象ですか。

A. 報告の対象は、利害関係者などから受けた講演等の報酬で、1件5000円を超えるものです(倫理法6条1項、倫理規程11条1項)。
利害関係のない団体の、職務と関係のない講演の報酬は、対象に入りません。

Q. 本の監修を断るべき場合は?

A. 補助金や国が直接支出する費用で作られる本、または自分の属する機関が作成数の過半数を買い入れる本の監修・編さんは、報酬を受け取れません(倫理規程6条1項)。

Q. 地方公務員も、同じ手続ですか。

A. 国家公務員法104条にあたるのは、地方公務員法38条です。
ただ、許可の基準や倫理の決まりは自治体ごとに違います。

Q. この記事は、いつの時点の情報ですか。

A. 2026年10月7日に、e-Gov 法令検索で、国家公務員法・倫理規程・倫理法・兼業の許可に関する政令と内閣官房令を確かめた内容です。
国家公務員法に2026年11月2日施行の改正がありますが、この記事で引いた条文は現行と同じ文です。

まとめ

  1. 報酬をもらって講演・執筆をするなら、まず兼業の許可を疑う
  2. 許可の基準は、特別の利害関係がなく、職務に支障がないこと
  3. 頼んできたのが利害関係者なら、倫理監督官の承認があらかじめ要る
  4. 課長補佐級以上は、利害関係者などからの報酬が1件5000円超なら、四半期ごとに報告する
  5. 国のお金で作る本・自分の役所が過半数を買う本の監修・編さんの報酬は受け取れない
  6. 報酬の有無にかかわらず、守秘の義務は退職後も続く

✏️ 筆者から一言

私は、迷ったらまず動いて、ずれたら直していくほうです。
ただ、報酬の出る話だけは、返事をする前に一度だけ確かめてほしいと思っています。
確かめるといっても、人事の担当に「こういう依頼が来たのですが」と聞くだけです。
それも立派な行動です。
聞いてみて、許可が要ると分かったなら、そこから申請して動けばいい。
謝礼より、自分の名前で人前に立てる機会のほうが、あとあと効いてくるはずだからです。

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この記事を書いた人

公務員UPDATE 運営者。元公務員(警察官)。交番勤務・自動車警ら係・刑事・生活安全を経験し、現在は独立して事業を営んでいます。記事では、在職中の経験か退職後の経験かを必ず区別して書いています。

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